小さなこだわりを積み重なる

 

 毎年、翌年の手帳を購入したときに私が必ずやることがあります。まず既に決まっている重要日程を書き込むことです。私の場合、ほとんどが研修の日程です。それに加えて、その当日のメモ欄に一言「ケース・スタディー、要改善」とか「テキスト修正」とか注意事項を書くようにしています。研修会社を通して受注した仕事は研修レポートを提出しなければならないので、今年度の研修内容の反省事項や今後の注意事項については、その時点で整理してまとめてあります。その細かな具体的な内容については、それを見れば良いので問題はありません。ただ、手帳に一言メモを残しておくと、他の研修やセミナーでも役立つことがあるので、毎年欠かさずにやっていることです。

よく中小企業は人材に乏しいと言います。しかし、その差は「能力の差」ではなく、このようなちょっとした「僅かな実行力」の差のように思います。伸びる人材、結果を出せる部署、成長できる会社は、確実に実行する力があります。そこが伸びる会社と伸び悩む会社の違いです。

 

「言われてみれば当たり前のちょっとした注意事項が技になる」「小さな改善も三つ積み重ねれば改革になる」とは、常々、コンサルの現場で言っていることです。しかし、どんな仕事であっても実際にやるとなると難しいことです。まさに「言うは易し、行うは難し」それが現実です。

当たり前のこと。ちょっとした注意。それがいつまでたっても出来るようにならないから進歩がない。相も変わらず、ワンパターンの仕事のやり方、マイペースの進め方しかできないのです。

ちょっと厳しい言い方をすれば「成り行き任せ。やりっぱなし」と言われても仕方の無いことです。このことは、部下の指導、管理者・幹部社員の育成、自部署の業務改善など、ビジネスのあらゆることに当てはまります。

 

 手帳の話に戻ると「日々の仕事の中で気付いたことを書き留める」といった何気ないことですが、そのメモの一言が、将来仕事の役に立つかもしれません。確かな仕事の出来る人は、このような当たり前のことを大切にしています。「小さな注意。反省すべきこと。改めるべきこと」を忘れない。だから、彼らはメモすることを欠かさないのです。

 大袈裟な言い方をするとちょっとした気付き、即ち レベルアップのテーマをシッカリと頭に入れることがビジネスの基本ノウハウだと思います。このような習慣を持っていれば、自ずと仕事のやり方が変わってくるからです。これも、まさに「継続は力なり」の喩えに当てはまることだと思います。

 

 無論、メモをするだけでは進歩はありません。その一言、その内容に、こだわることが必要です。事あるごとに書き留めたことを読み返す。そうやって、頭に刻み付けることが先々の実行力の差になります。

何度も何度も、確かめる。繰り返し繰り返し、頭に入れる。小さなこだわりもこだわり続ければ、いつかはプロの技になります。それを何回繰り返せるのか。何回確かめるのか。そのこだわりが営業ノウハウ、マネジメント・ノウハウといったビジネス・ノウハウの差になります。

 長い眼で見ると、そういった意識(こだわり)の差が仕事の質やレベルになることを彼らは良く知っています。仕事の実行力の源は、日々の仕事への意識の強さ・高さに他なりません。

 

それは、幹部社員や現場責任者の仕事振りについても全く同じことが言えます。それが手帳に残したメモの一言なのか。毎月の会議の議事録や各月の業務報告書の内容なのか。その違いだけです。進歩するための努力そのものの動き方は何も変わりません。

会議等の資料や文書をジックリと読み返して、そこからシッカリと反省点や注意事項を洗い出し、次につながるような仕事のやり方をしているのか。それとも、やりっぱなしのままになっているのか。

 そこが、会社なり部署といった組織の学習能力の有無であり、成長力の差になってくるのだと思います。

もう今年も年末が近づいてきましたが、この一年を振り返った時に、忙しかった思い出だけでは寂しいと思います。

 

( 平成271130日 )       Ⓒ 公認会計士 井出 事務所