正しいスキルを学ぶ(営業編)

 

1.不明確な営業スキルとそのノウハウ

 仕事の内容が経理や総務のような事務仕事、あるいは工場内の物造りに関わるような仕事であれば「毎日こういう手順で、こういう点に注意して仕事をすれば、間違いなく出来る」と言った基本スキルがハッキリしています。また、社内の仕事であれば、同じ処で仕事をしているので、他の社員もいます。何か巧くいかないことがあれば、「もっとこうした方が良いよ」という注意や指導をして貰うこともできるでしょう。

 ところが、営業は、取引先に出向いて行う仕事です。加えて、人間が相手の仕事なので、先方の担当者のタイプも人それぞれ千差万別です。ですから “どのようなアプローチをすれば結果に繋がるのか。 何が正しいスキルなのか”良くわかりません。そのため、営業の場合「正しいスキル」「成功のノウハウ」といっても、その上手い仕事のやり方、結果につながる方法の実態が見えないのが難点です。

  ベテランの先輩や上司が同行営業をしない限り、その仕事のやり方の良し悪しがよくわかりません。

 

2.営業スキル・ノウハウ継承の現実

  上司は「兎に角、何でも良いから当社の製品やサービスを提案してこい」と言います。しかし、担当者の本音を言えば“どうやって商談を進めるのか。どのようにして先方を捲き込んでこちらの話に乗せるのか”“相手のハッキリしない態度や生返事に、どう対処して話を繋いでいくのか”そのやり方がよくわかりません。誰も、そのやり方や具体的な方法を教えてくれないからです。

 また、上司も先輩も「分からないことがあったら何でも聞いて」と口では言いますが、実際に聞きに行くと「そんなことは自分で考えて」と無下に突き放されることも少なくありません。

 親切な人でも「自分だったらこうする」といったアドバイスをくれるだけで、そのやり方が確実に成功する方法と思えないこともあります。

つまり、営業の正しいスキルとは、どのようなやり方なのか。実は、ハッキリしているようでハッキリしていないのが営業の仕事です。

 

3.訪問活動と営業スキルの実際

 一例を挙げると、営業マン向けのビジネス本のチェック・リストに「訪問目的によって、どのように話を進めるか、話の展開を考えているか」という項目があります。

 業種の如何、規模の大小を問わず、色々な会社で、現役の営業マンに、この問いかけをしてみると、ほとんど全員が、いちいち、そんなことを考えていたら仕事にならない。そこをフィーリングで巧くやるのが営業の仕事だと答えます。しかしながら、そう答えた彼らの仕事の実態は、成り行き任せ・出た所勝負の泥縄営業でしかありません。要は、その都度その都度の訪問目的がハッキリしていないのです。

 だから、先方との話のやり取りが毎回商談ではなく雑談の繰り返しになってしまいます。その結果、最終的に「そこを何とかお願いできないでしょうか」といったお願い営業になってしまうのです。それでは、数字が取れないのも致し方ありません。残念なことですが、こういった営業のやり方には技(スキル)もノウハウもありません。

 ルートセールスのように、定期的に決まった取引先の処に出向いて、毎同じような注文をとってくるような御用聞き営業なら、そのようなスタイルのやり方でも構わないかもしれません。取引先との人間関係(実際は、会社対会社のビジネスの信頼関係)が、既に成り立っているからです。

 だから問題が無いのです。見方を変えれば、その担当営業は誰でも良いとも言えます。

 

その一方、新規開拓の仕事がメインの営業に聞くと「成る程、確かにそういうこともある」と頷きます。彼らは、初回を含め商談の初期段階の重要性を十分に知っています。特に、初回訪問には気を遣います。そこがクリアー出来ないと、次回のアポが取れないからです。

 彼らのようなタイプの営業は、必ずと言って良いほどトークの持ちネタ(情報)を何パターンか持っています。経営ネタ・(訪問先の)業界話ネタ・商品情報(技術情報・開発情報)等、先方が感心を示すような話題をいくつか用意して足を運びます。例え、初対面の人であっても、会話がスムースに流れるように予め準備なり、予習をして訪問します。プロの営業は、投げかける話題によって相手を引込む方法を身につけています。自身の勝ちパターンのトーク・スキルがシッカリと頭に入っているのです。

  

4.成功する営業スキルとノウハウのポイント

 さて、前述の「正しい営業スキル」と「営業のチェックリスト」の話に戻りましょう。営業トークは決して世間話や雑談・お喋りではありません。

ビジネスとして「相手に伝えるべきことを伝え、トークの流れを創る」あるいは「向こうが関心を持っていることを聞き出し、その内容を返す」といった狙いを持った話のやり取りであるべきです。

会社が相手の営業は、初回訪問で即受注、成約はありえません。それ故「継続訪問ができる」「今日は提案のきっかけを掴み、次回に提案を行う」あるいは「先方の(最終決定に関わる)キーマンとなる上司の方と名刺交換させていただく」といった一回一回の訪問の狙い商談全体の軸になるシナリオが明らかであるべきです。

 

その一方、その都度の訪問で、時間内での話の流れを描くという話(商談)の流れのストーリーを描くことも大切です。それが、上記の「訪問目的によって、どのように話を進めるか、話の展開を考えているか」と言うチェック・リストの問いかけに他なりません。そこには、2つの意味があります

 ひとつは「今回の訪問目的がハッキリしているか」ということ。もう一つは「その目的を達成するための作戦。会話のストーリーを予め練る」という二つの意味(狙い)です。

 人によっては、そんな難しいことは余り考えず、単刀直入に一番肝心な話をいきなり切り出す人もいるでしょう。しかし、相手との言葉のやり取りの中で、タイミングを見計らって、伝えるべき用件をスムースに切り出すのが営業のテクニックだと思います。

 

営業は状況によって頭を使い分けないといけない仕事です。相手のことをよく考えて話を進めていかなければなりません。ワンパターンのやり方では通用しない仕事と言えるでしょう。だからこそ、会話の起点となる話題の選び方とその後の話の持って行き方には十分に気を使わなければなりません。

そこをミスすると、話の流れが予期せぬ方向に行ってしまうからです。

  営業と言う仕事は、相手が人である故、絶対に成功すると言えるワンパターンのスキルはないかもしれません。しかし、これまでの状況をよく考えて動けば、成功する確率の高いアプローチ法が見つかると思います。

いずれにしても、結果を出せるのは、自身の描いた話の流れを着実に進められるスキルを身につけている人だと思います。

 

( 平成29920日 )        Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

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