正しいスキルを学ぶ

 

 先日、偶然に「奇跡のレッスン」というTV番組を見ました。その道のプロが、一週間かけて子供達を指導するのが、この番組のコンテンツです。

 私が見たのは、160センチの身長でありながら、長年NBA(アメリカのプロバスケットリーグ)活躍した、マグジー・ボグースさんの回でした。

  その番組で印象に残った彼の言葉が“正しいスキルを学んでいないから自信が持てない”という一言です。

  そうです。正しく、若手・中堅・ベテランと言った世代にかかわらず、伸び悩むビジネスマンに当てはまる言葉だと思ったからです。

 

会社に入り数年たち、ようやく仕事にも慣れ、任された仕事は、自分的には一通りは出来るようになったつもりでいる。しかし、まだまだ一人前といわれるレベルの仕事が出来る訳ではない。自分なりに考えて頑張っているが、まだまだ巧くいかないことが多い。

先輩や上司に相談しても「頑張りが足りない」とか「もっと意識を高めて」とか精神論的なアドバイスばかりで“どうすれば周囲から認められる成果を出せるのか”悩んでいる。そんな若手社員の方が数多くいます。

また、ベテランと呼ばれる人達でも、本音を言うと、今やっている仕事のことで「今さら、他人に聞けないこと」が沢山ある方も少なからずいらっしゃいます。

 実際、今の(仕事の)やり方に自信を持って仕事をしている人は意外と少ないのかもしれません。

 

あらゆる仕事に基本と言われる“巧く出来るコツ”“失敗しないコツ”があると思います。確かな仕事が出来る人は、そういった仕事の基本(正しいやり方)をシッカリとマスターしています。

 彼らに「どうして、いつも巧くできるのか。失敗しないのか」と訊いてみると、自分なりに“気をつけてやっていること”“注意していること”が、いくつか返ってきます。

つまり、彼らは、毎日、ただ漠然と考えなしに仕事をしているのではありません。自身の技の軸になることを確かなことしてハッキリと掴んでいるのです。無意識のうちにも、いつも何かに注意して仕事をしているのです。

 

経理の仕事で言うならば、できる担当者は、売上伝票の処理をしていても「この得意先の今月の売上はやけに多いとか、少ないとか」何となく気付くものです。明らかに、その数字がおかしいと思えば「この数字で間違いない?」と担当者にその事実を確かめるでしょう。経理のプロは、こういったセンサーが自然に働きます。

 彼らは、ひとつひとつの数字の意味を掴んで仕事をしています。だから、このような細かな処まで目が行き届きます。ただ考えなしに機械的に伝票を処理しているのではありません。ちゃんと頭を使って仕事をしているのです。

 

意外なことと思われるかも知れませんが、経理のように頭を使うような仕事でも一定のレベルに達すると、あまり頭を使うことなく手続き的に仕事が出来てしまいます。

 イレギュラーな数字に気付く。気付いたらその内容を確かめる。それは経理マンにとって、言われてみれば当たり前の“基本中の基本”です。

そのちょっとした注意が、請求ミスの防止になることもあれば、営業の押し込みのような辻褄合わせの発見になることもあります。

一見すると同じことをやっているようでも、仕事のできる人とそうでもない人では、その実、その内容・レベルに大きな違いがあるのです。

 “細かな注意”を忘れない。怠らない。何も、それは経理の仕事に限ったことではないでしょう。あらゆる仕事に通じることです。

 

どこの会社に行っても、即戦力で通用するような人は、この辺りの意識レベルが違います。前述の「正しいスキルを学ぶ」ということは、教えられた通りのやり方を形式的にマスターすることではないと思います。

  それプラス「誰もが、ちょっと注意すれば出来ること。当たり前のことを、必ず確かめる」といったレベルまで意識を高めないと身に付くものではありません。その緊張感が、自身の技やスキルになるからです。

 

仕事に自信が持てないのは、そういったちょっとした注意、わずかばかりの努力を惜しむからではないでしょうか。仕事が出来る・出来ない。その違いは、能力の問題というよりも、ちょっとした仕事に対する意識。

本人の取り組み方の方が大きなウエイトを占めているように思えてなりません。

 

( 平成29616日 )       Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

 

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