自分の仕事を大切にする

 

皆さんの職場には、営業一筋何十年といった現場の生き字引みたいな大ベテラン、その仕事に精通した頼りになる大先輩はいるでしょうか。

残念なことに、今では何処の会社でもそういう職人気質のスペシャリストの方は、もう余り見かけません。

かつては、営業畑、工場畑、経理畑といった言葉を良く耳にしました。ゼネラリストを育てる余裕のない中小企業では、入社以来、ズーっと同じ仕事をしている、一つの職歴が長い人が多いと思います。

その人の向き不向きも含めて、即戦力になるようにスペシャリストを育てる仕事の仕組みがありました。その人自身が自分の仕事と長く関わり合う、深く関わり合うようなシステムになっていたのです。

ところが、今は、そのような仕組みになっていても、何処の会社でもその仕事に関する実務経験は長いが、若手の見本となるスキルや見習うべきノウハウを持っているとは言えない人達が多くなりました。

「凄いですね」と若手を唸らせるような熟練の技を持ったベテランは少なくなりました。勤続年数が長いだけの、口先だけの実行力やスキル()の伴わないベテラン社員が彼方此方の会社で目に付きます。一言で言うなら「ベテランはいてもプロはいない」という感じです。 

 確かに、彼らは通常の業務に関わることは何でもよくわかっています。

何でもできるし、どんなことも卒なくこなします。では「仕事ができるか」というと、それは一通りのことはソコソコできるという意味でしかありません目先のことはできても、イレギュラーなことが起きると自分で判断して対処することができない人達です。上長からすると、使いやすいタイプではありますが、もし居なくなったら現場に大きな穴があくかというと、決してそういう存在ではありません。

 

終身雇用という言葉が、とっくの昔に死語になり、転職が当たり前の時代になって、会社勤めをする人の気持ちが変わってきました。

「嫌になったら、いつでも会社を移れば良い」という思いは、社員としての縛りをゆるくしました。しかし、その一方で、その分、仕事のへの意欲や責任感が薄らいだように思えてなりません。

確かに、今は“仕事は仕事。プライベートはプライベート”とハッキリと割り切る人が増えました。

しかしながら「会社の一員として仕事の責任」を果たすことが、その役割であることに変わりません。

ところが、ベテランと呼ばれる立場になっても「自分なりに頑張っていればそれで責任を果たしている」といったバイト感覚の延長線上で仕事をしている方を多く見かけます。

上司の眼から見ると、ベテランらしい「プロの仕事」ができない方です。ちょっとした注意や確認を欠かさない、細かな処にまで気配りを感じるといった仕事の仕方ではないからです。どこか緊張感を欠いた、気持が入っていないような感じがします。

彼らの仕事振りに責任感が無いとは言えませんが、上司の期待値との間に大きなズレがあります。「やった、やらない。できた、できない」といった責任の捉え方が、上司サイドと本人との間に温度差がある。でも、彼らはそれがわかないのです。

 

いくら勤続年数が長くても、仕事への取り組み方が“ちょっとちょっと”では、そのレベルが上がるはずもありません。彼らは、いつまでたっても、自分のスタイルを変えられない。何でも自分のペースでやろうとする。自分にできることしかやろうとしないタイプの人達です。

彼らのこのようなマイペースな動き方は “仕事の視野の広さ、仕事の奥行き、仕事のスピード感”といった本来、積み重ねるべき経験値をスルーさせてしまいました残念ことですが、彼らには年相応の仕事のキャリアがありません。ベテラン社員に期待される「プロの技、スキル」が身についていない社員です。

このような様子では、先輩社員として後進の面倒をみれるはずもありません。後輩の方も、人を良く見ていて、仕事ができない人の言うことは聞こうとしません。だから、現場の主軸、職場のキーマンとしての動きができません。いつも職場の隅っこにいます。その辺りが、今のベテラン陣の「やる気」や「仕事へのチャレンジ精神」のモノ足りなさにつながっていると思います。

 

転職会社のコピーに「キャリア・アップも夢じゃない」というのがあります。その意味を良く考えてみると逆に「キャリア・アップは難しい」ということです。実際、会社を移り変わりながらキャリア(給料)・アップできる人は極めて稀です。ほとんどの人が、収入は良くて横ばい。大多数の人が、多少減額という辺りが現実の世の中だと思います。

キャリア・アップできる人は、他社から認められるレベルの高いノウハウやスキルを持ったごく一分の人達であることは、今も昔も変わりありません。確かなスキルを持っている。プロの仕事ができる。それでなければ、キャリア・アップは難しいでしょう。「自由な仕事の仕方」をするには、誰もが認める実力が不可欠なのです。

 

 誰でもが転職できる環境。ちょっとクールな眼で見れば、それはリストラや早期退職の受け皿になる市場があることでもあります。

よく考えて見ると“自由な働き方が出来る”今のような時代こそ、自分の仕事を大切にすべきだと思います。どの会社でも通用するプロの仕事ができるように、自分のスキルを磨くべきです。

それは、また上司から信頼される仕事ができる人材。周囲から頼りにされる存在を目指すべきことに通じるのではないでしょうか。

 

 ( 平成27413日 )         ©公認会計士 井出事務所

 

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