自身の考えをまとめる力を磨く

 

“様々な人の意見を集約する。色々な情報を検討し分析してまとめる”あらゆる組織や集団のリーダーと呼ばれる方に求められる欠かさざるべき資質のひとつだと思います。

 そこで、今回は、ここ数年企業研修の講師として感じていることをお伝えしたいと思います。それは“自分の考えや意見をまとめる力が足りない”と言うことです。特に、40歳前後のリーダー・クラスの方に、この傾向を強く感じます。

 研修では、必ず「グループ・ワーク」と呼ばれるパートを設けます。3人から5人の受講生でひとつのグ―ルプを作り、そのグループ内での意見交換を通して「問題の解決策を探る」など研修テーマに答えるパートです。そこには、個人的な意見だけでなく「グループとして、ひとつの考えや意見をまとめる」という狙いがあります。ある意味、企業研修では、ここが一番重要なポイントです。まさに職場なり部署をまとめるためのトレーニングになるからです。

 

「グループ・ワーク」では「個人ワーク」と「グループ討議」と呼ばれる一連の作業をしていただきます。

  前者は、与えられた課題に対して、まず「自身の考えを整理して自分の意見を纏める」というパートです。その際、考えをまとめるために、その内容は、個人用のシート(書式)に書いていただきます。

 後者のグループ討議は、個人ワークでまとめた自身の意見をグループ内の他のメンバーに説明すると共に、そこでの意見交換を通してグループとしての(統一)見解を導き出していただくパートです。

 最終的に、白板や大きな紙を使って、他グループに向けて発表し、グループ対グループの意見交換を行い行い、当初の研修テーマに対する最終的な結論、回答を導きます。

 

 このグループ・ワークの話し合いのひとつのポイントは、参加者一人一人の日常的な仕事の取り組み方が伺えることです。メンバーの話の内容を良く聞いていると、そこから「日頃、頭を使って仕事をしているか」それとも「目先の仕事に追われてアップアップしているのか」彼らの仕事振りが何となく見えてきます。彼らの発する言葉や動きの中に、そのことが見え隠れしています。大きく分けると「自から意見を発して行くタイプ」と「他人の意見に乗っていくタイプ」に分けられます。

 

 自から言葉を発していく人は、だいたい自分の意見や考えがハッキリしている方です。研修テーマに対するキーワードを的確に拾い出して、自分の考えを整理して、まとめられる人です。

 このタイプの方は、自信を持って「何故、自分はそう思うのか。このように考えるのか」その考えのひとつひとつ根拠を示しながら、筋の通った話をするものです。発言内容に説得力があります。

 こういう語り口は、聞き手からすると「成程、そういうことか。そういう事情、そういう理由があるのか」という納得性があります。自ずと相手を引き込む力を持っているのです。説得力のある話し方は、ひいては周囲を巻き込んでいく影響力にもなります。

 

一方、なかなか自分の考えをまとめ切れずに言葉を発しようとしない人もいます。考えをまとめるのが苦手な人は、テーマに関わる色々な情報が目移りして、回答の軸になる肝心なキーワードを見つけられません。

 例え、優れた着眼点を見つけたとしても、それがアイデアの指摘や羅列のレベルで留まってしまいます。

  思いつきの言葉では、そこに込められている意味が軽いものになってしまいます。浅い考えの言葉では、そこから発想が膨らんでいきません。

その言葉の意味の掘り下げが足らないので、頭が次の考えに繋がっていかないのです。いつまでたっても頭の中がこのような状況のままでは、自身の考えをまとめることは難しいでしょう。

  皆さんは、このグループワークでのワン・シーンをどのように思うでしょうか。私は、ここに各部署の最前線に立つ現場リーダーの現実が見えてくるような気がします。

 

 昨今、現場の実行力が足りない。上司である管理者の実力がモノ足りないと言う話を良く耳にします。その原因を、探っていくと、この研修シーンに集約されているように思えてなりません。

 リーダーとしての実行力が足りないのは、行動力というよりも、むしろそれ以前の「どのようにして、現状を良い方向に進めていくのか」自身の考えがハッキリしていないからではないでしょうか。

 

それは、常日頃から、上司として「どのように動けば良いのか。何をどうすれば良いのか」頭の中で「考えを整理してまとめる」と言う思考回路が働いていないからだと思います。

 いくら、仕事に高い問題意識を持っていても、その気持ちが「解決策」や「実行プラン」のような具体的な考えとして、まとまっていなければ実際の行動にはつながりません。アヤフヤな考えと言うと失礼になるかもしれませんが、自分自身の中でもハッキリしていない考え(やり方・方法)で、結果を出すことは難しいと思います。

 

突き詰めてみると、上司(リーダー)の力の原点になるのは、自分の考えをシッカリと固めることだと思います。自部署の現実、今の実情をシッカリと受け止め、今後の方策を練る。 自身の軸となる芯の通た考えを持つことが大切です。

 

“自分の考えをまとめる”には、計画書や報告書の作成などを通して、自分なりの結論を導き出すトレーニングを積むことが欠かせません。自身の考えがまとまっているかどうかを確かめるには、その内容を文書化してみると直ぐにわかるからです。前向きな発想で仕事に取り組む姿勢があれば、自ずと考える習慣は身につくものです。

 

( 平成29812日 )       Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

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