コミュニケーション断絶の時代 (その2 転職が当り前の世代がベテランになった)  

 

 色々な会社のお手伝いをさせていただいて、最近、特に思うことは「責任を負うべき世代の人達」にそれ相応の人材が少ないことです。無論、部長や課長のように役職的に責任を持つ人もいればそうでない人もいます。

ちょっと前なら、ベテラン社員というと管理者ではなくとも、その仕事のことを訊くと何でも答えてくれる頼れる人がいました。若手から「流石ですね」とリスペクトされるようなキャリアのあるベテランが、何処の会社にも一人はいたものです。彼らは上司でなくとも先輩社員として職場の中核の役割をそれとなく果たしていました。

職場のリーダーたる管理者にしても、彼らをサポートすべきベテランにしても「どこか物足りない。心もとない。イマイチ感」があります。仕事のやり方を時代にあった方法に変えていくとか、新しいやり方を開発するといった職場のキーマン」や「現場のプロ」が育っていないのです。

営業で言うと、既存顧客のルートセールスは安心して任せられるが、新規開拓や新規事業の最前線に立つ営業が出来るかと言うと、急に腰が引けてしまうタイプのベテランばかりです。

 多くの会社で、職場の軸になる人材、将来を背負うべき人が見当たりません。層の薄さが目立ちます。だから、現場の実行力に厚みが足りません。

職場の動きに力強さや活気がないような気がします。

残念なことに、その先駆けになった世代が「今の会社に縛られない」という仕事観が広がり始め「いつでも会社を移れる。自由に転職できる」という思いを持って育った、現在の40代半ばの世代です。

 所謂、90年代初頭に入社したバブル時代の大量採用組以降の新卒者たちです。

 

「自由な働き方」「自分らしい仕事の仕方」という転職が当たり前の環境で入社した世代」は、今いる会社に定年までいる気などほとんどありません。この先長いお付き合いをするかどうかもわからないという、お気楽な層の社員です。彼らは、これまでの終身雇用を前提として入社した世代と違い「自身の仕事への責任感」や「会社への帰属意識」が少なからず薄い人達です。

時代の流れと共に、彼らは、自身の仕事とシッカリと関わりあうことを避けるようになっていきました。

 ダラダラと遅くまで会社に残っていることに意味はない。手続き的に自分の仕事を速く終えて、サッサと帰ることしか頭に無いような人が段々と増えていきました。「要領よく仕事をする」と言うと、良く聞こえますが、所謂「職場の一員としての自覚が足りない」タイプの人達です。

彼らのどこかアルバイト感覚に近い仕事観が、知らず知らずのうちに、当たり前のことが徹底できない職場、緊張感の足りない現場の仕事振りにつながっていたように思います。

 

そういった彼らも、いつの間にか、ベテランと呼ばれる年齢になってきました。それなりの経験を持った立場であるならば、管理者でなくとも、自分の仕事だけをやっていれば良いというものではありません。

職場の核になるメンバーとして、それ相応の役割が期待されると思います。

遅れている仕事のサポートなり、若いメンバーの指導など、上司の目の届かない処をさり気なくバックアップすることや会議の場での重い空気を取り払い、雰囲気を盛り上げることもベテランの組織人としての役割の一部です。

ところが、それは、上司の仕事であって自分とは関わりないと、勝手に決めつけているベテラン社員が多いのが実情ではないでしょうか。

 彼らは、いつまでたっても自分のことしか頭にありません。だから、そこまで頭が回らないのです。彼らはただ社歴が長いだけであって、周りのことに目が向きません。職場の動き、仕事の流れに関心を持とうとしない先輩社員です。そのようなベテランでは、会社も上司も困ったものです。

 要するに、彼らは組織人としてのキャリアをしっかりと積んだ人達ではないのです。

 「自分ではチャンと仕事している。シッカリやっている」と思っていても、周囲から見ると、半人前のレベルの仕事しかできない中賢メンバー。

上司からすれば、入社して10年近くたっても、まだまだ未熟、いつまでたってもピリッとしない部下。言われたことしかやろうとしない、言われたことしかできない社員ばかりでは、会社は動いていきません。

それでは、職場にまとまりが無いと感じても仕方ありません。

管理者一人の力だけでは、実行力のある現場、一体感のある職場を創ることは難しいでしょう。仕事の主軸になるベテランの協力が欠かせません。

彼らの周囲への気配り、仕事への細かな目配りのような日々のバックアップが必要なのです。

 

今日、多くの会社で見かける混迷する職場のコミュニケーションの状況は、そういった転職が当たり前の世代の「仕事に対する価値観」に起因することが多いように思います。社員である以上、職場のメンバー、その一員としての役割、責任があります。それも仕事のひとつであるという視点を忘れています。ベテランといわれる社員であるならば、この様な自覚を持って欲しいものです。

 

( 平成27323日 )         ©公認会計士 井出事務所

 

 

 ► 関連項目: 社員の職務意識

         職場のマナーと職場のコミュニケーション

挨拶も仕事のうち

       部下に有言実行を期待するだけでは何も変わらない

         不言実行を期待する限り当たり前のことはできるように

                 ならない