スマホ時代の商売感覚(その2)ひと昔前と変わらないお店側の気質

 

大手スーパーだけでなく、コンビニや100円スーパーの進出。はたまたネット通販の台頭により、街の小売業は正に危機に瀕しています。かつては賑わった商店街もシャッター通り化してしまった処も数多くあります。

そのような厳しい小売業の経営環境の中、先日、ある食品の関連団体で「スマホ時代の商売感覚」というタイトルでスピーチをさせていただきました。 前回は「昨今のお客様気質」と題し、お客様の視点からビジネスの変化について書きました。今回は、お店のサイド、店舗経営の視点から見た現状の小売業。特に個人商店の問題点について述べたいと思います。

 

その場に集まられたのは、東京の世田谷区・渋谷区・目黒区・太田区で食品小売業を営むオーナー経営者の方たちです。都内の都心部で商売をしていると、なかなか気づかないことですが、23区内は人口数や人口密度が他の地域と圧倒的に違います。人そのものは数多くいるのですから「商売のやりよう」によってはビジネスの可能性は多々あります。まして、上記のエリアは、山の手といわれる古くから一軒家の住宅が集まっているような場所です。富裕層の方が多い街とも言えます。

 

 始めにお話させていただいたのは、昨年、私が都心部にある有名商店街を視察した時のことです。というのも、ある食肉団体の皆様にお話をさせていただいく機会があったからです。そのために都内の精肉店を数多く見ておく必要があったのです。その時に印象に残っていることは、板橋区の大山(東武・東上線)にあるハッピーロードという商店街を訪ねた後のことです。

 事務所に帰る際に池袋にあるデパ地下に立ち寄りました。そこにデリカ・テッセンで名高いお店があったからです。そこに行ってみると、行列をしている所があったので、直ぐにそこだと分かりました。ところが、その列はそのお店のものではなく、向かい側にあった有名なすき焼き店の売り場だったのです。平日のお昼前にもかかわらず、20人弱の人たちが並んでいました。その多くはご年配の人でした。

 その時に思ったことは、この列に並んでいる人達は「皆さん、この池袋近所にお住まいの方なのか」ということです。米沢牛といったブランド牛肉・A5といった高品質のすき焼き用のお肉(但し、お値段も良い)が、地元では手に入らないから、わざわざ電車に乗ってまで買いに来ているのだと感じました。

  ついさっき訪ねたハッピーロードのお肉屋さんは、メンチカツのようなお惣菜中心の品揃えで商売をしており、肝心なお肉の方というと、100500円以上のちょと値の張る商品は店頭に並んでいませんでした。

 

 どのような商売でも「繁盛店」に共通することは“~(商品)なら、~というお店”という指名買いをする品物があることです。わざわざ足を運ぶ名物商品があるから、その店に行く。それをお目当てにしてくる常連さんが多い。その商品のファン、そのお店のファンがいるのです。あらゆる業種の店舗営業に共通することは固定客で商売が成り立っていることです。常連さんの数が圧倒的に多い。そこが、繁盛店と数字が頭打ちの店との違いです。

 

“お目当ての品物。欲しい商品があれば自ずとお客様は集まってくる”そこに商店ビジネスの原点があるように思います。お店という場所は、お客様が自分の欲しい商品を求めて集まってくる処です。お目当てにする品物がそこにあるからお客様は足を運ぶのです。そこから逆説的に考えると“お客様の足が遠のくのは、欲しい商品が置いてない”からではないでしょうか。

そこで思い出して欲しいのは、池袋のデパ地下のすき焼き屋さんが出しているお肉屋さんの行列の事実です。先ほど立ち寄った大山のハッピーロードのお店には並んでいない商品。その近くのスーパーでは扱っていないような良いお肉(牛肉)が、そこの主力商品だったのです。

 

商売上手というと、未だに、何処か「お金儲け最優先で損得高い」といったイメージがあります。そこには少なからず「妬み」の気持ちもあるかもしれません。しかし、商売を営んでいるならば、繁盛店のやり方に関心を持つことも大切だと思います。多くのお客様が集まる店に共通する「名物商品創り」「その地域内での一番商品の絞り込み」「お客様が望む商品を提案する(新しい商材を扱う)」といった商売のやり方に、もう少し眼を向けるべきです。

  店舗営業は地域密着型の半径400mの地場産業です。その地域の客層にあった商売のやり方をしなければビジネスが成り立ちません。

「共稼ぎ世帯の増加」「生活時間帯の変化」「若年者層・高齢者を含め、一人暮らしの増加」のように、時代の流れと共にお客様自体の生活の仕方が変わっています。それに伴い買い物への考え方もこれまでとは違ってきています。

にもかかわらず、従来通りの品揃え・店頭表示・接客態度・10時~8時の営業時間のような一昔前のやり方をしていては商売が成り立つ訳がありません。

 小売業だけでなく衰退する街のお店に共通することは、生き残り策として“これまで通りの商売のやり方から抜け出す”という発想を持てないことです。“今のやり方に一工夫を加える。今時の商売感覚を身につける”といったことを忘れているのかも知れません。

 

( 平成2935日 )        © 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:SWOT分析 ( その2) 機会と脅威の事例 

 小規模店舗の現状とその問題点

                             小さなお店の生き残り戦略