スマホ時代の商売感覚(その1) 昨今のお客様気質

 

 先日、ある食品小売業の関連団体で「スマホ時代の商売感覚」というタイトルでスピーチをさせていただきました。その内容を、これから数回にわたって皆様にお伝えしたいと思います。

私共のコラムでも、何回も書いていることですが、ここ5年で最も大きなビジネスの変化は、スピード感のレベル・アップ度です。その原因は、言うまでも無く、スマホの普及率とグーグルの検索機能の向上にあります。正に“今は、何でも知りたいこと()が、リアルタイムに、かつ無料で、わかる時代”なのです。

それが「ビジネスにどう関わるのか」というと、買う人が価格を含め、あらゆる商品情報を比較してから購入するような発想を持つようになりました。つまり、お客様は、今まで以上に「賢いお客様・情報通の消費者」になっているのです。

今回の講演は、そこの意識を高めないと“これまで通りの商売感覚でビジネスをしていては通用しなくなる”ということをお伝えしたかったのです。孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。無論、お客様は敵ではありません。しかし、ビジネスの相手として、お客様の買い物に対する考え方や購入パターンをシッカリと頭に入れておくことは商売繁盛のためには欠かせないことだと思います。

それが、情報のスピードアップという時代の流れによってドンドンと変わっているからです。

見方を変えれば、自社の商品をお買い上げいただくには“今時のお客様の気質や買い物に対する発想”を十分に考えて、それをビジネスに取り入れていかないと、上手くいかない時代になってきているのです。

 

まず、最初にお話させていただいたことは「スマホ時代の賢い消費者」の三つの特徴についてです。それは、今の日本人に共通することでもあります。彼らは関心を持ったことは、何でも知りたがる「知りたがり屋さん」です。情報感度の高い人とも言えるでしょう。誰もがスマホを手に持っている時代です。だから、取り敢えず何でも調べようとします。「確かめたくなる」と言っても良いでしょう。では、どうして、何でも調べようとするのか、確かめようとするのでしょうか。それは「知らないと損をする」ことを好まないからです。衝動買いをして失敗をした。そのような経験をお持ちの方はたくさんいると思います。よく商品の内容を確かめもしないで買って後悔した。他にもっと良い他社製品があったことを知らずに買ってシマッタ思いをした。そういうことは、極力避けたい。今の消費者は、買い物に際し、そういう隠れた心理が働きます。

 

二つ目の傾向は、さらに賢いお客様の特徴を探ってみると「自分で納得できないこと。曖昧なこと。ハッキリしないこと。筋の通らないこと」は受け入れようとしないことです。裏を返せば、彼らは、購入に際して「納得できる説明。ハッキリとした回答。筋の通った話。わかりやすい話」を望んでいます。

 食品の販売現場で言うと「安心・安全・健康」は、商品販売のひとつの謳い文句です。ですから、お客様は、当たり前のこととして「その食品の製法、作り方は言うに及ばず、製造時の衛生環境、食材の産地」等々の色々な質問を発してきます。それは、安心・安全・健康を気にする消費者として、極自然な素朴な質問ばかりです。

 決して、お客様は販売担当者を困らせようとしたり、意地悪をしようとしている訳ではありません。疑り深いわけでもないのです。製造年月日とか原料名のように、法律で表示が義務付けられているとか、そういう問題ではないのです。 お客様の気持ちを掴むためには、このような訊かれて当たり前の問いかけに即答できなければなりません。

 

三つ目の特徴は、昨今のお客様は、その一方で情報が多すぎて「何を選べば良いのか」わからない人。「どのようにして選べば良いのか」困ってしまう人でもあります。そういうせいもあってか、彼らは選ぶときの決め手になることがわかりやすい。選んだ理由がハッキリしている商品を選ぼうとします。

売れる商品。勝てる商品。言い換えると、それは“お客様から選ばれる商品”でもあります。そのためには、商品の特徴がハッキリしていることが大切です。上記の食品ビジネスで言うと、その食品そのものの特色(オリジナリティーといっても良いでしょう)や製法・食材の独自性のような他社製品との違いが明らかであることが欠かせません。難しい言葉で言うと、差別化できた商品。商品コンセプトの確かな品物です。

そうでなければ、お客様は、きっとその商品に関心を持ってはいただけないでしょうし、売り場で手に取っていただくことさえ難しいかもしれません。まして、お買い上げいただくことなど到底難しいのです。

逆に言うと「パッとしない商品。替わり映えのしない製品。ありふれた商品」では、今の時代、最早ライバルに太刀打ちできないのがビジネスの最前線の現実です。

 

食品会社のホーム・ページを見ると、頻繁に「~へのこだわり・こだわりの~」といったキャッチ・コピーを見かけます。それは、お客様が「こだわり」という言葉に敏感に反応することを知っているからです。

 実は「こだわり」という言葉には、お客様の気持ちを惹きつける力があります。人は、その言葉に何処か「手間隙を惜しまない。妥協しない。~一筋何十年」といった意味を暗に感じとります。その言葉の響きに、間違いの無い商品だと思わせる雰囲気があります。その言葉につられて、お客様は、ツイツイその内容をより深く知ろうとします。「こだわり」は、その言葉自体に「価値ある商品」であることを示すようなパワーのある言葉なのです。

 

要するに、こういったスマホ時代のお客様の気質を十分に心得て、販売や営業というビジネスをしていかなければ商売が成り立たない時代になっていますそのキーワードになるのは「お客様が求める情報」です。

このような情報発信が出来ないようなお店・売り場では、商売の先行きが危ぶまれます。ビジネスに関わるひとつひとつの物事、全てがハッキリしていないと通用しない。誤魔化しが利かない。それが、今のビジネスの現実だと思います。お買い上げいただけない原因は、販売サイドの方に問題があると言わざるをえません。ところが、多くのお店、会社では、この現実を、未だに受け入れていなように思えてなりません。

 

( 平成29222日 )      Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

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