スマホ時代の商売感覚(その4) 個人商店のアンテナ

ここ数回、ある食品小売業の関連団体でのスピーチの内容をお伝えしてきました。最後に、その後の懇親会の場で気付いたことを書きたいと思います。何人かの個人商店のオーナーさんとお話をさせていただきましたが、ほとんどの方が「商売は、お先、真っ暗。この先、商売を続けていても仕方が無い」としか思っていません。

 一言で言うと「あきらめ感」しかないのです。様子を見ながらタイミングを見計らってお店を閉めるしかないと思っている人が多いのです。

 無論、その背景には「オーナーを含め店員さんの高齢化」といった問題や「後継者がいない」という切羽詰った現実的な問題があります。このような個人商店に関わる問題は、ある意味、業種を問わず中小企業や小規模事業者に共通する個人経営の悩みでもあります。     

 しかしながら、その本音は「この先、何をどうして良いのか。今風の(商売)感覚がわからない」という点に尽きると思います。「どういった商品を扱えば良いのか。店頭で、どんなやり方・動きをすれば良いのか」近頃のお客様の求めるフィーリングについていけないとも言えるでしょう。その結果の最終選択が「廃業」という残念なパターンです。

 そもそも、いつの時代も商売には移り変わりがあります。その動きは避けられません。今も昔もビジネスに流行・廃りはつきものです。

 

その一方、個人経営や個人商店であっても繁盛店があることも事実です。そういったお店のオーナーさんは、皆さん、プロの商売人として、お客様のテイストやその好みの変化を敏感に感じ取ることができます。

 ただでさえ、今時のお客様は自身の買い物に強いこだわりを持っています。客商売という言葉がありますが、いつの時代も、お客様は目新しいもの・刺激のあるもの・感じの良いことに気を惹かれます。「良い感じ」と思えば、これまでの商品やサービスから直ぐに目移りをしてしまいます。そういう意味でお客様はいつも気まぐれです。

 繁盛店のオーナーさんは、お客様の感覚や目線を自身の商売に取り込める商売熱心な方ばかりです。彼らは、今風の商売のやり方の勉強を欠かしません。そういった、ビジネスの嗅覚を身につけています。

 

都内にある有名ハンバーグ店のオーナー経営者は、お店の商品開発のアイデアを集めるために、月の半分以上は日本全国各地の飲食店を食べ歩いているそうです。また、月に一度は必ずデパ地下に行き、そこに出店しているお店の新商品とディスプレイの仕方を見ているそうです。

彼の目指すことは、商品開発のヒントなり、店頭ディスプレイやPopのような店頭表示、あるいは実演販売のやり方等、商売の参考になる情報を絶えず拾い集めることです。商売熱心なオーナー経営者は他人の商売のやり方にも勉強熱心です。自分のお店にも取り入れられるような商売のネタをいつも注意して探しています。 

 流行っているお店を、まめに見て歩けば“お目当てにする商品がある・接客対応の仕方そのレベル・店頭ディスプレイや店頭表示のような商品情報の伝え方”等、商売のジャンルを超えて共通する成功事例があることに気付きます。

“人の振り見て、我が振り直せ” あるいは“百聞は一見に如かず”という格言がありますが、商売を続けていくための材料を知っておくこと。それらの情報を集めることは、プロの商売人なら当たり前のことです。商売熱心な経営者の多くは勉強熱心であり、研究熱心な人でもあります。

 

小さなお店は、生き残るために必要な知恵(ノウハウ・スキル)を身につけること。それを、磨くことを忘れてはいけません。「こうすれば商売が上手くいくよ。こういうやり方に変えた方が集客できる」とは誰も教えてはくれないからです。商売に必要な勉強は自分でしなければなりません。

 小さなお店が“流行のお店”から学ぶべきことは沢山あります。今風の商売感覚を磨くためにも、繁盛店や新しいお店の見学は、プロの商売人として欠かせない仕事 (勉強)のひとつと言えるでしょう。

小さいからこそ“いつも、アンテナを張っておくこと”を忘れてはいけません。アンテナの有無、その優劣こそが“商売感覚”とイコールです。

 

ところが、それが頭ではわかっていても、なかなかその通りに行かないのが個人商店の毎日です。朝早くから市場に行って仕入れがあり、お店に戻ると、今度は飲食店用の配達と、朝から晩までひと時も休む暇なく動かざるを得ません。そうやって日々の仕事に埋もれていると、今時の商売のやり方がわからなくなってしまいます。個人経営のお店が世の中の移り変わりに淘汰されるのは、気付かぬうちに「守りの商売」オンリーになっているからではないでしょうか。

 

( 平成29328日 )       © 公認会計士 井出 事務所

 

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