チャーハン検定に学ぶ経営力

  

   中華料理のチェーン店を営む()呉宝(仮名)では、調理師の社内資格に「チャーハン検定」の制度を設けています。ことの発端は、お店で数多く注文される料理の美味しさを高めようとする取り組みでした。

 * 無論、ビジネス的には主力商品の品質を高めることで、再来店率を上げ、来店者増・売上増を目指す目的に他なりません。

 実は、炒飯は、殊の外、高い調理技術が求められる料理です。強い火で一気に作る手際良さ・素早く何度も鍋を返すスピード・微妙な塩加減による味付けといった技が身についていないと美味しく仕上げられません。

 

実際、この社内検定をスタートしてみると、現役の調理師でも合格点を付けられる人は2割にも満たない状況でした。見習いクラスを含めると、その合格率は一割弱という惨々な結果に社長さんも驚きました。

 確かに、今までズーっとお店では炒飯という料理をお客様に出していました。しかし、その味は全社的に見ると全部が全部プロの作ったチャーハンでは無かったのです。厳しい言い方をすれば、この中華料理店の炒飯は、各店のコックさんの自己満足の味でしかなかったのです。お店によって主力商品の味がバラツクようでは、各店舗の数字が伸び悩んでも仕方がありません。

 そう考えると、これまで会社として、どれほど多くのお客様の期待を裏切ってきたのか。客足を遠のける状況を放置してきたのか。

この「チャーハン検定」の事例は、まさに「お客様を呼べる料理を提供できていない」という経営上の大きな問題点を知るきっかけになったのです。

 

そこで、この会社は、各店の調理師さんが「チャーハン検定」に合格できるよう、マン・ツー・マンで指導する「炒飯研修(実際は特訓)」を実施することにしました。将来的に調理担当者全員がプロのチャーハンを作れるように指導するシステムを作ったのです。

お客様からすると「当たり前のことじゃないか。そんなことさえ、やっていなかったのか」と言われそうなレベルのことです。しかしながら、よくよく考えてみると、この会社の事例はあらゆる会社に当てはまる現実ではないでしょうか。  

 

例えば、この話を「調理の仕事ではなく、もし営業の仕事だったら」と置き換えてみてください。「炒飯ではなく、それがお客様に出す提案書だったら」と仮定して欲しいのです。チャーハンの味は提案書の提案内容と同じことかもしれません。もしその内容が乏しかったら仕事を取れるでしょうか。

 そう考えてみると、果たして当社の営業はお客様が「成る程」と納得するような企画書を提出しているのでしょうか。各取引先担当の何割が、取引先に認められるレベルの仕事が出来ているでしょうか。

 この中華チェーン店のチャーハンの事例は、決して他社・他業種といった他岸の火事では無いと思います。皆さんの会社や部署の仕事のレベルや内容が、このお店の料理のように自己満足のレベルに止まっていないことを期待するばかりです。 

 

ビジネスにスピードが求められる時代、会社の戦力になる人材を確保しようとするなら、会社サイドもこれまでのOJT主体の指導法や人海戦術に頼った仕事のやり方を見直すべきではないでしょうか。

  どのような仕事にも、必ずと言っても良いほど、上手く出来るためのノウハウや技(スキル)があります。見よう見まねで、一人前の仕事ができるようになる人など稀な存在です。だからこそ人手を戦力にする仕組み作りに、経営はもっと目を向けるべきです。

社内の各業務について“仕事としてマスターしなければならないこと・できなければいけないこと”を明らかにし、それを社員に指導徹底することは、最早、会社側の力、経営力の有無のように思えてなりません。

 

( 平成2963日 )                   公認会計士 井出事務所

 

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