プロの経営感覚(店長編)

 

“やらなければいけない仕事とわかっていても、なかなか実行に移せない” 社長さんであれ、部長さんのような管理職であれ、現場のイチ担当者であれ、立場は違えど、誰しも思い当たることだと思います。

“当たり前のことが躊躇無くできる。今、やるべきことを先送り後回しにしない”誰にでも出来る簡単なことようですが、実際には出来る人のほうが少ないように思います。もし、それが、経営や現場のリーダーの仕事となると、会社の業績に大きな影響が出てきます。まさにタイム・イズ・マネーです。その典型的なひとつの事例が部下の指導・育成ではないでしょうか。

 

そこで思い浮かぶのが、少し前にお手伝いをさせていただいた、十数店のヘアー・サロンを営む会社のことです。ヘアー・サロンは、シャンプー・カット・スタイリングといった流れ作業を一糸乱れぬチームワークで行う仕事です。ですから見習いのスタッフさんレベルからスタイリストさんまで、店長さんが全員を巧く使いこなせないと、お店の仕事が手際よく進みません。

そのためには、メンバーひとりひとりを店の戦力として鍛えていかなければなりません。

この会社の業績の良いお店のイメージを簡単に言うと、お店のスタッフ全員がテキパキ・サッサと動けるお店です。店の店舗効率の良し悪し。即ち、お客様の回転率が数字の良し悪しを分けるキー・ファクターです。

お客様からすると「待たせないお店。感じのよいお店」こそ優良店舗なのです。そして、このような数字の取れる店舗の店長さんは、皆さん仕事にシビアな方ばかりでした。

数字目標を確実に達成できる店長は、開店前の始礼を通して細かな指示や注意事項をひとつひとつ徹底していきます。また閉店後の終礼では、今日あったミスや不手際など反省事項の内容を具体的にして、明日の仕事に確実に繋げていくといった姿勢があります。

要は、プロのスタリスト、アシスタント、スタッフとして身につけていなければならない「心構え」や「技」をその場を通して教育しているのです。

お店のメンバー(部下)への指導の仕方や伝え方がシッカリしています。

ヘアー・サロン業は、スタイリングやカットの技術だけが売り物ではありません。それに加えて、お客様へのお声掛け・話し相手になるといった気配りといった接客サービスも欠かせない売り(商品)です。お客様に、如何に、心地よい時間を過ごしていただけるか、くつろいでいただけるか。お店にいる間、全ての時間が次のリピートにつながるサービス(商品)です。つまり、このビジネスの本質は、気配りや心配りを提供するサービス業なのです。それ故、店舗スタッフ、メンバーの指導・教育は、お店の業績に直結する極めて重要な仕事です。

スタリストだけでなく、お店のメンバーひとりひとり全員の動き方が商品(売り)そのものになるからです。彼らの下へのスタンスは、第3者の眼からすると「厳しい」「うるさい」という表現が当てはまるかもしれません。

 

 その一方、数字の芳しくない店長さんは、ほぼ全員がその辺の部下への接し方に難のある方でした。お店のメンバーに、プロとしての仕事を徹することができません。スタッフの自主性・やる気の問題と称して、何でも本人のせいにしてしまいます。会社の決まりごとですから、当然彼らも始令や終礼をやっています。ところが、同じことをやっていながら、彼らは店長としての役割を全うできません。

部下を上手く指導できない店長に共通することは、下に辞められたくない、辞められたら困るという思いが先にたって「細かなことはグッと堪える。イチイチ口に出すことを思い留める」ことをします。口やかましい上司と、部下に嫌われてヘソを曲げられても困るからです。

残念なことに彼らは、そのような自身の曖昧な態度、ハッキリしない言葉が逆効果になっていることに気付けません。その結果、お店がどうしても緊張感が足りない空気になりがちです。業績の良くない店舗は、全員の動き方が何となくモタモタしています。何処か動きがチグハグでバラバラなのです。お客様もその雰囲気を敏感に感じとるので「あそこの店は感じ悪い。待たせる」と思って行かなくなるのです。

 また、面白いことに、こうした店長の店舗の方が、かえってスタッフの定着率が低いものでした。

 

この会社の社長さん曰く、結果を出せる店長さんとそうでない人の差は「店長としての自覚」の違いにあると言います。本人の能力の優劣というよりも、むしろ意識レベルの差の方が大きいと語っていました。

店長といえば、謂わばそのお店の経営者です。ただの店番、現場のリーダーではあっては勤まりません。社長と同様の経営感覚を持って仕事が出来る人でなければ、売上目標の達成は難しいのです。

出来る店長は、自分の役割、自身の仕事に対する軸をシッカリと持っています。お店の数字のためには、個人的には言いたくないことも、店長の仕事としてハッキリとした言葉にできる人達です。そういった部下指導の出来る、実行力のある、まさにプロの仕事ができる店長さんだったのです。

 

 (平成29130日)        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:  プロの経営感覚

          凡事徹底

          リーダーの気概

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