中小企業に求められる営業体制

 

 粒揃いの営業マンがいる中小企業などありません。このような状況の下、どのようにして営業目標を達成し業績を伸ばすのか。

 営業部門の現状分析(その1) (その2)」で、お話したアパレル業界の ㈱門倉を事例にして営業戦略の立て方、営業体制のあり方について検討してみたいと思います。

 

 この会社では、戦略云々の前に、まず営業体制を刷新しました。営業に限らず自社の主戦力を投入しないと、次なる一歩、大きな一歩を踏み出すことは難しいと考えたからです。

 具体的には、営業の他、商品企画、売り場の店頭販売員を含めた戦略チームを社内で作りました。「お客様に選ばれる商品。売れる商品。勝てる商品」の特徴を明らかにするため商品の目利きができる人材を揃えたのです。

 そのメンバーで構成する戦略会議を設け、そこで商品戦略や営業戦略を立てて、実行しました。商品企画から提案営業まで営業活動の核となる全ての業務を彼らが担当するようにしたのです。

 

 これまでこの会社は、商品企画が創った製品を営業が売るという単純な仕組みで動いていました。営業は、商品造りに口を出すべきではないという会社の慣わしみたいなものもありました。

  営業はというと、取引先即ち担当店舗の事情をよく理解しているとの理由で、その担当が長年変わらず固定していました。かと言って、担当店舗の事情を本当にわかっているかと言うと、本人の勘違いの部分も多く、大きな数字の取れる処で負けているケースが少なからず見受けられました。

その一方、他店の状況や売れ筋に疎く、社全体でのバランス感覚を持っている者が余りいないという事情もありました。

 実際、取引先やその担当店舗によって売れ筋商品が大きく異なります。東京、関西という大きな地域差もあれば、新宿と池袋のセンスの違いのような都内での地域差もあります。

各担当がこの辺の細かな営業事情がしっかりと頭に入れて仕事をしていないと、いくら見栄えのする良い商品であっても、大きな取りこぼしを出してしまいます。同じ商品でも、ある店舗では店頭に並べたとたん直ぐ欠品になり追加補充が利かない一方、別の店では、いつまでたっても店頭在庫のまま返品されることも珍しくありませんでした。

 その原因として、取引規模の大小や担当の営業能力の優劣のバランスを考慮することなく担当取引先を決めていた、これまでの営業体制に大きな問題があると考えました。

 

 また商品企画も、このような取引先個々の売り場のテイストを十分に研究した商品創りができていない状況でした。売れ筋商品の奥行き(数量)についてもデータに基づく分析が実施されておらず、これまでの勘に頼った発注が為されていました。戦略チームのメンバーに商品企画や店頭販売員を入れたのもこの辺りの事情を考慮したからでした。

 

 戦略チームを結成した狙いのひとつは、商品企画からアプローチの方法、商談推進のスケジュール管理から提案内容まで、これまでの当社の知恵を総動員するような新たな営業の仕組みを創るべきだと考えたからです。

 業績を伸ばすには、常に、先手の取れる動きができるようにしなければなりません。営業戦略のポイントを絞り込み、そこに自社の全エネルギーを注ぐ。そのために、戦略を実行する営業体制を充実することに努めたのです。

 

 営業戦略のポイントは「どこを攻めるか」重点顧客の絞込みです。売上実績に大きなインパクトを持つ取引先の実績を確実に積み上げることが目標達成の鉄則だからです。ですから、その実績が大きなインパクトを持つ重点顧客に関しては、戦略チームのメンバーが、実際担当営業になって動くことにしました。

 そして、戦略会議で彼らの訪問活動のスケジュール管理や商談の進行状況をチェックし、その都度、戦略チームの全メンバーがバックアップ、フォローするような営業体制にしました。

 

 また、従来は商品企画に任せっぱなしだった商品創りも、各取引先店舗のテイストに合う商品企画ができるように戦略会議の場で、売れ筋商品のデザイン・色・柄・配色等の傾向と対策を練るようにしました。

 

  限られた力の中で営業目標を達成しようとするならば「何処を攻めるか」戦略そのものの問題と「どのようにして実行するのか」戦略を実行する戦力の問題を切り離してはいけません。戦略と戦力は、常に表裏一体の関係にあるからです。

 中小企業では、社の総力を上げて取り組むような営業体制創りが、戦略の一環として不可欠です。戦略会議のメンバー皆で知恵を出し合って、待ち受けている難局を一つ一つ乗り越えていくべきでしょう。 

 

 ( 平成25年 6月 25日 )        ©公認会計士 井出事務所

  

  関連項目 ► 営業戦略のつの意味

                 重点顧客管理の重要性