中小企業の「経営課題」と戦略

 

衰退産業、且つ中小零細の一つの代表例が印刷業です。商品市場の個別化・細分化によるチラシ等の小ロット化によるマス広告の減小、。それに加えて、家庭用プリンターの普及やネット・メディアの影響力の拡大といった大きな時代の流れに飲み込まれているビジネスと言えます。

メディアとしての紙広告のインパクトが薄れてきており、それがモロ各社の事業規模の縮小につながっています。

 

 このような企業環境の中、中堅印刷のK社は、従来の印刷屋さんの発想では全く通用しないと考えました。そこで、クライアントの広報物や郵送物の企画デザインから郵送までの仕事を一括して請け負うサービスを実施することを決意しました。

そのサービス・レベルの領域まで踏み込むことで新規開拓を目指したのです。

実態的には印刷業というよりも、DMの発送代行業に近い広告代理店のようなビジネスです。勿論、今までの仕事に加え、全く異なる発送代行の仕事もするので従業員の大反発もありました。

また、お客様の顧客リストを預かるので情報セキュリティーの問題等、これまでの印刷屋さんからは思いも寄らない課題も沢山ありました。

 

過去これまでにも印刷業界は、活版印刷から写植印刷、DTP化といった技術革新の流れがあり、それに乗り遅れた会社、対処できなかった会社が消えていくという歴史がありました。それ故、前向きに考えれば、厳しい現実に直面した際に、従来の既成概念を打ち破るという風習が業界内に根付いているかも知れません。

K社が自社のビジネスの突破口を見つけられたのは(印刷)業界の発想を超えた方策に気付いたからです。そして、社内の抵抗の壁を乗り越えられたからこそ、同業他社との差別化が上手く行ったとも言えます。

 

 売上が伸びない。取り引き先が減っているにもかかわらず新規開拓をやろうとしない会社。経営が行き詰まっていても商売のやり方、仕事のやり方を変えようとしない中小企業は多くあります。

でも、それでは商売は縮んで行くばかりです。「やりたくても今の仕事で手一杯。忙しくてできない」「散々、やってみたけど上手く行かなかった」という声が彼方此方から聞こえてきそうです。それが、彼らの本音かもしれません。

 しかし、良く考えていただきたいことはその言い分に何かしらの意味があるか」と言うことです。「商売に言い訳は無用」です。顧客の変化という現実は変えられません。お客様は都合の良いサービスを提案してくれる会社を選びます。時代遅れの仕事のやり方、サービスの悪さを辛抱してまで受け入れてはくれません。お客様には選ぶ権利があります。その自由は無視できません。その事実を素直に受け入れて、数字が取れるように商売のやり方や内容を方向転換する。それが真っ当な経営の考え方だと思います。

当然、それらの内容には、当社からすると無理難題と思えることが数多くあります。それにチャレンジして成功させる。それこそが「経営課題」であり経営者の役割だからです。

ビジネスの世界では「わからないこと、できないこと、やったことのないこと、新しいこと」はできなくとも仕方がないという言い訳は通用しません。それは万国共通、時代を超えての真理です。

変化は、リスクではありません。目の前のリアルな事実です。そのままの現実でしかありません。見方を変えれば、新たなチャンスがやってきたと思えば良いだけです。

時代の流れ、お客様の期待や要望の変化に合わせて商売のやり方、仕事の内容を変えていく。それこそがトップが取り組むべき「経営課題」です。言葉を変えれば「経営戦略」といっても良いでしょう。

 

とは言うものの、具体的に「どのように商売のやり方」を変えていくのか。それが簡単に見つかれば苦労はしません。「こうすれば売上が伸びる。こういうやり方に変えたら成功する」などと誰も教えてはくれません。

それを探し出すのが、正に社長の仕事、経営の役割です。

上記のK社の場合も「おたくは、こんなサービスはやっていないの」という取引先からのちょっとした質問がきっかけになり、新たな戦略に踏み切りました。これからの時代、お客様の注文を待つ受注業ではなく、こちらからビジネスの提案をして仕事をとってくるようなやり方に、頭を切り換えていかなければ、経営戦略は浮かんでこないと思います。

その際のキーワードになるのは「ワンストップ・(代行)サービス」「アウト・ソーシング」「新たな仕事のやり方の提案」のような提案型サービス業のビジネスモデルだと思います。

 例えば、室内工事・内装工事会社のようなところは、リフォーム会社になってこそ、お客様から直接仕事を受注できるようになります。そうしないと、いつまでたっても協力会社のままです。

ある倉庫会社は、K社と同じく大学の通信教育の教材や美術館のカレンダーのような記念品の配送業務の代行も行っています。アパレル業の取引先に向けては、商品の在庫管理だけでなく廉価品の(ブランド)タグ付けやパッキングの代行業務を請け負っています。

これらの会社の事例をみても、従来の仕事に加え「新たなサービス、より便利な仕事のやり方を提案する」方向でビジネスを進めていかないと新規を取るのは難しいのではないでしょうか。

 

( 平成2718日 )          ©公認会計士 井出事務所