仕事を担当者任せにしている限りは会社は成長しない

 

皆さんの会社では、仕事を担当者に任せっぱなしにしていませんか。

その結果、人によってそのやり方がマチマチ。仕事のレベルや内容が違う。バラつきが大きいということを多くの会社で見かけます。

 「この仕事は誰々さんがやる仕事。その仕事の担当は誰々さん」というように、その人に完全に仕事がくっついている状況です。勿論、社員個々の役割分担、担当業務を明らかにして、仕事を進めていくのが会社という仕組みです。

しかしながら、そのシステムが硬直化して形ばかりのものになってしまうと、かえって業績に影響を及ぼすような問題点が出てきます。

 

中堅アパレル会社の㈱門倉で、営業の仕事をしている駒沢さんは、この道20年のベテラン営業マンです。彼の仕事で最も大切なことは、新宿のI百貨店(以下、I店)の数字を伸ばすことです。紳士モノの売上では全国でナンバーワンを誇るこの店での当社のシェアが物足りないからです。彼はこの店舗を担当して十数年経ち、購買部長、担当バイヤーとのコミュニケーションも良好で、特に大きな問題は何もありませんが、何故かしら業績を伸ばすことができません。

元々、I店はビジネスにとてもシビアな会社で、毎週開かれるミーティングでは前週の結果や今後の対策について納入業者に意見を求めるような仕組みになっていました。そのため他社デパートを担当する営業からすると、求められる仕事の内容のレベルが高く、厳しいとの声がありました。

このような事情もあり、門倉ではI店の担当を十年以上変えることなく、駒沢さんにしていました。

 そんな折、I店ではほぼ不可能といわれていた新規参入に成功した会社が現れたのです。この事実を機に、ようやく経営が当社のI店向けの営業体制に問題があると気付きました。

 無論、社長も営業部長もI店側の幹部社員と頻繁にコミュニケーションをとっていました。しかし、現場担当者の細かい仕事の内容まで突っ込んだ話をすることはありませんでした。そこで、営業部長が先方のキーマンと直々に話をした処、以下のような当社対する不満や要望が明らかになりました

 

1.提案を持ってくるタイミングが他社より遅い。提案内容にしても、ありふれ   ていて月並みなものが多い。

2.日本一の売り場にふさわしいレベルのインパクトのある提案(商品)をして

欲しい。販促対策を含め提案内容が物足りない。

3.実売ベースで見ても、色・柄とも、売れ筋商品の分析が不十分で、売れ筋は

  いつも欠品する。

 

 会社からすれば「駒沢さんに全幅の信頼を置いていた」と言います。

しかし、その実態は、全てを担当者任せにしていて、彼の仕事のやり方や内容にまで長年メスが入らなかったのです。その結果、当社は長年I店での数字を取りこぼしてきたのです。

 

この㈱門倉の事例のように、経営が呑気に構えて、担当業務の内容だけでなく仕事のやり方まで担当者任せにしている会社も多いと思います。

確かに「現場の細かなことまで口を出さない。本人に任せる。そうしないと伸びない」という考え方もあるでしょう。

しかし、担当者の話だけを鵜呑みにしていても良くないでしょう。少なくとも、大切な取引先については、年に最低4回くらいは上司なり経営が同行営業をし、お客様の動きなり、その本音の部分を確かめることが必要だと思います。営業担当だけの話では、お客様の真の情報や意が会社に伝わらないことがあるからです。

そもそも「営業は行きやすい処(会社)に行って、自分が売りやすいもの(製品)を売る」という傾向があります。誰しも、口喧しく、文句の多い取引先には足を運ぼうとはしません。評判の良し悪しもわからない、売るのに手間のかかる新製品よりも、安心して薦められる売りなれた定番製品を売りたがります。

本当は、もっとシッカリと準備をして話を進めれば成功した商談を、準備不足がもとで機を逸し失敗したケースがあると思います。お客様の言葉に隠れた意味や情報を理解することができずに、売りそこなったこともあるでしょう。でも、そのような悪しきことは一切話しません。営業は、仕事の現場が取引先であるが故に、その事実の是非を確かめられないという難点があります。その場にいたのは担当者本人だけだからです。

何より拙いことは、本当の事実を、経営や上司がわからないままになることです。例えば、お客様からの要望があっても、自分(担当者)や会社にとって都合の良くないことは報告しません。時には、苦し紛れに嘘をつくこともあるでしょう。目先の煩わしさや鬱陶しさを避けたがるからです。

 しかし、それが将来的な自身の成績や会社の業績に影響を及ぼすなど、ついぞ彼の頭に浮かびません。それくらい目先のこと、自分のやり易さしか考えていません。そこに、経営の大きな落とし穴があります。

 

一担当者の営業報告と侮ってはいけません。担当が聞き漏らしている営業情報、顧客情報が山ほどあると考えるべきです。社長自らが足を運ばなければ掴めない情報も多々あることを忘れてはいけません。

だからこそ、主だった取引先については、先方のビジネスの動きや方向性を経営自身がよく確かめるべきです。「百聞は一見に如かず」といいますが、担当に任せっぱなしにせず、もっと経営がシッカリと関わっていくべき仕事が中小企業には沢山あると思います。特に、営業の仕事には細心の注意を払うべきです。

売上管理、利益管理だけを徹底するだけでは、経営の舵取りが上手くいくとは限りません。「将来的な方向性がハッキリしない。当社の戦略が見えてこない」という中小企業の社長の声を、よく耳にします。それは、戦略策定のベースになる取引先の情報が圧倒的に足りないからだと思います。

 

( 平成27723日 )       Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

 ▶ 関連項目:営業部門の現状分析(その1)

      営業部門の現状分析(その2)

       当たり前のことに気付く難しさ