何事もハッキリしない 抽象企業では伸び悩む

 

“会社の将来像が見えない”“社長の考え方がわからない”

 “営業を含め社内の各現場の仕事のやり方が10年前と

   何も変わっていない”

“上司の指示の内容がはっきりしない”

“営業戦略、業務改善。何でも良いから、早く決めて欲しい”

 

このような思いを上司や経営に持つ方は多いと思います。こういう会社を“抽象企業”と呼びます。

 要は、何事もハッキリしない会社です。会社がこのような状況では、当然の如く上長への信頼は生ませません。したがって、こういう会社のビジネスが伸びるわけもありません。しかし、これが迷走する中小企業の現実ではないでしょうか。よく「会社は社長の器以上にならない」と言いますが、まさにその通りだと思います。

 

 ところが、このような会社の社長さんの多くは、自分はちゃんと経営の仕事をしている。「どうして、もっと頭を使って仕事が出来ないのか」会社の業容が好転しないのは部下の能力に問題があるからと思っています。

 「何故、当たり前のことをいちいち言わなければ動けないのか。同じことを繰り返して言わなければいけなのか」そのフラストレーションは、部長や課長クラスの管理者の動き方に集まってきます。これが多くの中小企業の経営者に共通する大きな悩みのひとつだと思います。

 

伸び悩む会社の営業の新規開拓のやり方を見ていると、どこの会社も同じことばかりをしています。営業部長がやっていることは、部下にノルマ(目標)を与えることだけです。責任と書いて「任せて責める」と読む。昔ながらのワン・パターンの繰り返しでしかありません。

 「ターゲットとなる訪問先の選び方、絞り込み方」「初回訪問時のトークの内容。持っていく提案書等資料の作り方」など、一番肝心な仕事のやり方・方法論を部下任せにしてしまいます。

 どうすれば部下が目標を達成できるのか。その方法を部内で検討する訳でも、そのノウハウやスキルを下に教えるわけでもありません。それでいて「目標が達成できない」と下の働きにイライラを募らせています。

 現場の実行力が乏しい原因は、いつまでも仕事のやり方を担当者任せにしているからだと思います。

 

 会社として開発すべき営業手法・組織的なノウハウが、いつの間にか個人の能力や精神論に摩り替わってしまうのです。言葉を換えれば、会社としての営業ノウハウや営業スキルが固まっていない。継続訪問ができるノウハウ、成約率の高い提案営業ができるスキルが不明確です。これこそが、抽象企業の実態そのものです。

 

急成長しているベンチャー企業の経営手法を見ていると、新規開拓や商品企画等どんな仕事でも、社長自ら陣頭指揮を執って動いています。まさに獅子奮迅の動きと言っても良いでしょう。

 彼らのようなタイプの社長さんは、経営の仕事の中身が具体的にイメージできる人達です。それは、頭の中で「何のために、その仕事をするのか」ひとつひとつの仕事の意味や目的がハッキリしているからこそできることです。会社の各部署で「こういう内容・レベルの仕事が出来ないとビジネスは上手くいかない」といった明確なイメージを持っています。

 ですから、各現場でやるべき仕事の内容が、細かな部分までマニュアルとかチェックリストによって、ハッキリと決められています。具体的な仕事のやり方の手順、その際の注意事項が明確になっています。

 要するに、会社の仕組み、仕事の仕組みがシッカリしているから下が動けるのです。誰もが一定レベルの仕事ができるようになるのは、上がやるべきことを確実にやっているからです。

 

そこで、改めて考えていただきたいことは、経営()の「仕事の内容。その役割の意味」と言うことです。会社の業績が一定の数字を超えられない。低迷するというのは、根本的に社員や現場サイドの問題ではありません。「経営責任」という言葉があるように、経営成績の最終責任は、明らかに経営サイドにあると思います。

 

( 平成28120日 )             Ⓒ 公認会計士 井出 事務所 

 

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