先を読んで手を打つ感覚

  

優れたリーダーの方を見ていると、いくつかの共通点があることに気付きます。そのひとつが「先を読んで手を打つ感覚」を持っていることです。先を見て、早めに動くビジネス習慣が身についているとも言えます。

  会社や職場のリーダーとして、当たり前のことのように思えますが、実際にそういう方は、そうそうお見かけすることはありません。また「先のこと」と言っても、それが明日のことなのか? 来週のことなのか? 来月のことなのか?3ケ月先のことなのか? 来年のことなのか? 3年先のことなのか? その人が置かれた立場によっても違うでしょう。

  

例えば、大きな会社の経営者にとって、3年先のことは遠い未来ではありません。経営計画で掲げた目標を達成するための身近な時間です。先回のコラムでは「経営の転ばぬ先の杖」と題し、自動車修理業のEV(電気自動車)化対応について書きました。

  EV化の進展は、自動車メーカーだけでなくその関連業界においても計り知れない影響があります。大手傘下の小さな協力会社にとっても、それは避けることの出来ない大きな経営課題です。

  (ガソリン)エンジンの部品を造っているある鋳造メーカーでは、今後の受注維持が見込めないため新製品として料理用のフライパンの製造販売を始めたとのニュースもありました。この会社の経営は、これまでの製品需要が無くなることを確実に読んでいます。だからこそ、何かしら戦略的な手を打たなければ生き残れないと考えたから、新製品を開発し、新事業へ進む道を選んだのです。

  

会社での役割はちょっと違いますが、仕事の出来る営業部長にも先を読んで手を打つ感覚が見受けられます。営業という仕事は、3ヶ月先、半年先を睨んだ長期戦です。そのことは、本コラムの「スケジュール表の活用事例」や「営業計画・販促カレンダー作成の重要性」等で重ねてお伝えしてきました。

  営業の仕事は、提案と言う種蒔きをコンスタントに続けていかなければ仕事は取れません。そして、提案という蒔いた種がシッカリと商談の流れの中で芽を出しているか。その芽が確実に育っているのか。上司は、部下の商談の進み具合から目を離してはいけません。

  特に、重要案件や重要顧客のアプローチについては、話が順調に進んでいるのか、手詰まりぎみになっていないか、各担当の商談の進行状況を見抜けなければなりません。

  先を読める上司は、下の報告内容から商談の実情を察することができます。もし、それが余り良い方向に進んでいないと思った時には、さりげなく下に話しかけて相談に乗り、問題解決のヒントを与えています。

  彼らは、仕事を担当者任せにせず、難しい状況を打開するような手を早目に打ちます。だから、部下の数字をまとめ、部署全体の目標を達成することが出来るのです。

  

営業に限らず、数字に強い現場リーダーは、いつも3ヶ月、半年先を見据えた動きをしています。当HPでは「管理者に求められる戦略思考と判断力」というコラムで、工事や建築関係、システム会社等の請負業の例として、通信工事会社の現場管理のノウハウについて紹介しました。

 

経営感覚のある管理者、意識の高い現場リーダーの視点と動き方は、上記の営業の話と本質的に同じです。

 

要するに、望ましい結果を得るためには「先を読んで動く」「後手に回らないよう前倒しに仕事を進める」という仕事の進め方が欠かせません。

それは、状況の変化、現在の実情をできるだけ早く察知して、その具体的な対応策を早め早めに打つことに他なりません。

 

将来のリスクを予測して確実な手を打つ。このような上司のビジネス感覚が「現場のスピーディーな対応力」や「(上司の)的確な判断力」になって表れてくるのではないでしょうか。

  

会社を伸ばす経営には「戦略発想」や「戦略思考」が求められますが、もう少し掘下げて考えてみると、そういう考え方や思考の根底にあるのは、上司の「先を読んで手を打つ感覚」であり「先を読む感性」にあるのではないでしょうか。こういったタイムリーに的確な行動をする感覚が身に付いているからこそ、自ずと「戦略発想」や「戦略思考」が浮かんでくるのだと思います。

  会社を成長させるためには、経営者自身がこのような先の動きを読む感性や物事を先送りにせず早めに手を打つ実行感覚を身につけることが欠かせません。

 

( 平成3055日 )        Ⓒ 公認会計士 井出事務所