前途〇〇

 

当事務所は、中小企業の経営戦略に関連するセミナーのお手伝いをさせていただいています。その際、一番最初に参加者の方にお尋ねすることがあります。白板に「前 途 ○ ○」という字を書いて「これは四文字熟語です。直感的に、この○○の中に、漢字を二文字入れてください」という質問です。

 

経営に携わっている方は、大抵“多難”と入れます。要は、前途多難が頭に浮かびます。一方、三十代前後の若い方に聞くと“不安”と答えます。つまり、前途不安が頭にあるのです。

最初に“多難”というワードが閃いた方も、心の奥底に「この先どうなるか、わからない。予測もつかない。何をして良いのか見えてこない」と言った想いが強くあると思います。多難と言っても、実際は先の見えない不安感であって、対処すべき具体的なリスクや課題が明らかな訳でもありません。それが、漠然とした難題、難問だからこそ、ネガティブな言葉が自然に浮かんでしまうのだと思います。ある意味、この「前 途 ○ ○」と言う簡単な質問だけで、その方の会社の将来像が見えてきてしまいます。(無論、だから「戦略策定」を学ぶセミナーに参加しているのでしょうが。)

以前に、中小企業で「SWOT分析」を行うと「弱みとリスクしか出てこない」ということを書かせていただきました。毎日一所懸命に仕事をしているが、今日一日で一杯一杯。先のことなど、余り考えたこともない。目先の仕事にしか気が回らない。日々の忙しさに飲み込まれていると、こういう想いしか出てこないのかもしれません。

 

 自社の将来に、そういった心もとなさを感じるのはどうしてでしょうか。そもそも、ビジネスは業種の如何、規模の大小を問わず、競争原理で成り立っている仕組みです。その事実は今も昔も何も変わっていません。優勝劣敗、弱肉強食という自然界の法則が働いています。お客様から見て良い仕事が出来る会社やお店だけが生き残り、そうでないところは自然に消えていきます。

 特に、ネット社会の加速化によって、お客様の選択の眼がより厳しくなり、業界内での勝ち組と負け組の線引きを際立たせているように思います。もはや、人並みソコソコの仕事が出来ればよいといった横並び的な発想の経営ではビジネスは通用しません。「自然淘汰」という言葉はビジネスの世界にも通用する共通原理です。  

 

こういった不安感の根底には、当社には「看板商品になるものが見当たらない」ということがあると思います。無論、この言葉の意味は看板商品と言うモノのことではありません。メーカーであるなら、独自の専門性、得意分野の品質管理力や技術力、新製品開発力、新技術の開発力に秀でていることがあげられます。

また、ヘアーサロンのような店舗型サービス業であっても、予約が取れないスター・スタイリストがいる、他店と比べて接客レベルが高い。といったビジネス的な強み、競争力があるものです。

 

あらゆる業界、地域でシッカリと根を張ったビジネスを展開している会社は「商売の根っこ」に当たる当社のセールスポイント、あるいは持ち味、個性(オリジナリティー)が明確です。

言葉を変えると、それは「自社のこだわり」が、その一点に絞り込めている証も言えるでしょう。言い換えると、それは、当社はこれで勝負するという戦略(セールスポイント・売り・強み・専門性)がハッキリしているからです。それがある故に、あらゆる地域の業界で、そこの取引先やお客様にとって存在感のある会社、その会社が無くなると困るようなかけがえのない会社になっています。

逆に、業種に関わらず伸び悩む会社の共通点は、お客様や取引先にアピールすべきセールスポイントがハッキリしていないことです。「何でもやります。何でも出来ます」的なアプローチでは、お客様の心に響きません。それは、経営基盤となる当社の売り自体がハッキリしていないからです。だから、自社のビジネス・ノウハウに自信が持てません。将来への不安の根底にあるのは、このような現実ではないでしょうか。

 

(令和3120日)          公認会計士 井出事務所

 

 

関連項目:弱みと脅威しか出てこない