小さなお店の生き残り戦略

 

前回に引き続き、お肉屋さんを事例にして、小規模店舗の問題点とその打開策について検討してみたいと思います。「頭打ちの売上」「総花的な商売の問題点」こういった状況の中で「小さなお店が数字を伸ばすにはどうしたらよいのか」そこが今回の話のメインテーマです。

東京の下町に「K」というお肉屋さんがあります。ここの名物は「メンチカツ・サンド」です。あちこちのデパートの物産店に時々出店しているので、ご存知の方もいるかと思います。地場の小さなお肉屋さんは「K」のように「当店の名物」を創ることで来店者を増やすお客様の来店頻度を高めることがひとつの作戦(戦略)です。集客の目玉になる「こだわり商品」「一押し商品」を持つことが求められます

 

 以下は、このお店がデパ地下の催事に出店したときの「K」のPopです。一見、何気ないことを書いてあるように見えますが、よく見ると、その内容には街のお肉屋さんが乗り越えなければならない、いくつかの問題点が見え隠れしているように思います。

 

 国産牛、国産豚、国産玉葱にこだわった、

外はサクサク、中はジューシー、玉葱の甘さが美味しい。

お肉屋さんのこだわり、手作りメニュー。メンチカツ。

 

このPopのひとつのキーワード「手作り」という言葉です。自家製だからこそできる「こだわり」があります。自分で、一から手間暇をかけて作る。そこには、他店のメンチとは、一味違う「美味しさ」があるからです。

当店ならではのハッキリとしたこだわりの理由が、その言葉に出ています。

実際、多くのお店では、揚げ物惣菜の品数を増やすために、メンチでも業務用の出来合いの加工品を揚げたモノがほとんどです。他人が作った物に手を加えただけでは、オリジナリティーのある商品とは言えません。そこには、当店のこだわりなど微塵もありません。

このお店のメンチカツの美味しさの秘密は“国産牛、国産豚をミックスすることによって始めて出るジューシーさ”という独自の作り方。

“国産玉葱を使うことによる甘み”といった材料そのものの違いにあります。自家製だからこそできる美味しいメンチの作り方がある。美味しさへのこだわりがある。そこに、自信を持ってお勧めできる「こだわり商品」としての価値があります。そのポイントがシッカリしているからこそ、お客様に、わざわざ足を運んでいただけるお目当て商品になったのだと思います。  

集客の目玉になる名物商品を創る。そのためには「他店には無い美味しさがある。美味しさのレベルが違う」といった、お客様にとって意味のあることをお客様にシッカリと伝える工夫が大切です。

いくら、作り方や材料へこだわっても、お客様にその意味や内容が伝わらなければ、当店の名物にはなりません。「外はサクサク、中はジューシー」「玉葱の甘さが美味しい」という当店のメンチカツの価値をお客様に認めていただいてこそ「美味しさにこだわる」意味があります。

「美味しさのこだわり」を商売に繋げるには「商売へのこだわり」を忘れてはなりません。だからこそ、店頭にPopを用意して「何故、そこにこだわるのか」その内容をシッカリと発信する。こだわりの訳をお客様に知っていただくことが欠かせないのです。こちらから発信しなければ、その意味や価値はお客様に伝わらないからです。

「美味しさのこだわり」と「商売へのこだわり」この二つが揃っている。「K」のメンチカツは、このようにして、こだわり商品を名物商品にした成功事例だと思います。

 

( 平成28927日 )       Ⓒ 公認会計士 井出 事務所