小さな会社の業務改革(事例 ① 改革へのいきさつ)

 

平塚食品工業(仮名)は、チェーン展開する飲食店向けに取引先のオーダーによって、カレーやピザ・ソース、スープといった調味食品を製造する会社です。注文を受ける製品は、取引先によってその作り方や素材のレシピ(使用する分量)が決まっています。決められた製法通りに機械の時間や温度設定をし、後は指示書通りに調理機器に材料を投入していきます。作業そのものは比較的簡単な作業ですが、生産する製品によって細かな注意が必要な仕事です。例えば、同じ得意先の同じ製品を造る場合であっても、注文数量は月によって異なります。毎回同じ量を造る訳ではありません。そこで起きるのが投入する原材料の計量ミスと言う極めて基本的な不注意によるミスです。このような不良品は全く売り物にはならないので廃棄するより仕方ありません。一から造り直しということになります。

  

この他にも不良品になってしまう原因がいくつかあります。そのひとつが機械の洗浄不良です。

  この工場には一度に作ることの出来る量が異なる機械が8台あります。同じ機械で、一日のうちに全く味の異なる製品を何種類も作ることも珍しくありません。当日の生産計画は、基本的に味の薄いモノから順番に造るように組まれています。前に造った製品の方が、香りが強かったり、味が濃いと、後工程の製品の品質に影響を与えやすいからです。

  そこでポイントになるのが、生産終了後の機械洗浄です。作った後の洗浄の良し悪しが品質に大きな影響を及ぼすからです。造った製品の味の濃さ、油分量、香りの強さによって、その後の洗浄の仕方も異なります。また、作った機械の大きさ(容量)によっても洗浄に時間が違います。

    つまり、機械の洗浄の仕方の良否は、品質を左右する重要な生産技術・業務ノウハウのひとつなのです。実際、取引先からのクレームの半数近くは、洗浄不備が原因となる不良品でした。

  

さて、この先、何回かに渡って、平塚食品工業の工場を事例にして「業務改善や業務改革の進め方」について説明したいと思います。

改善とか改革というと難しいことのように聞こえますが、簡単に言うと、不良を無くし、もっと効率的に品質の高い製品を造れるよう「(工場全体として)仕事のやり方を変えましょう」ということです。「工場(職場)全体のレベルアップ・生産技術力の向上」と言い換えても良いでしょう。

  しつこくなりますが、もう少しだけ、この会社の当時のいきさつや状況を振り返っておきます。

  

不良を無くすべく、この会社も努力していました。ところが、なかなかその改善が上手く進みません。

  1度、工場との連絡会議はありましたが、その内容は受注状況とその生産体制に関わることが主でした。

   不良品の発生に関わる「事故報告書」そのものは、その都度会社に提出されていたのですが、何故、不良が発生したのか。その原因と対策について十分な検討がされていませんでした。報告書には、提出のたびに担当者の「不注意・不手際・連絡の行き違い」といった抽象的な文言が書かれているだけです。そういう理由により、毎回同じような計量ミスや洗浄不良を繰り返していました。

   また、その改善策の方も「尚、一層の指示内容の徹底」「毎朝の始礼時の注意、指示の徹底」というような精神論的な対処策が並ぶ内容ばかりです。

   これまでの流れの中で、最も拙い点は、今後の工場の生産体制や生産方法の改善に向けての明確な対応策、イージー・ミスの発生防止の対策が十分に検討されていないことです。 

 

 結局、この会社の場合、報告書レベルのやり取りだけではどうにもならない。もう現場には任せておけないという結論に達しました。今のままでは、いつまでたっても不良削減の具体的な改善策は出てこない。工場長自身が、不良品を無くすために「実際に、どう動いて良いのか。具体的にやるべきこと」を、良くわかっていないと経営が判断したからです。そこで、社長自身が工場長と現場リーダー数名を集め、自らの陣頭指揮のもと今後の対策を練ることにしました。それが「クレームゼロ運動」をスタートするきっかけでした。

 

( 平成31219日 )      @ 公認会計士 井出 事務所 

  

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