小さな会社の業務改革(事例②「不良ゼロ運動」の進め方)

 平塚食品工業(仮名)は、チェーン展開する飲食店向けに取引先のオーダーによって、カレーやピザ・ソース、スープといった調味食品を製造する会社です。この会社で最近大きな問題になっているのが、不良品とクレーム製品への対応です。不良品は製造中に見つかった製品で廃棄せざるを得ません。そこまでにかかった手間賃や材料費が全て無駄になるだけでなく、時には残業をしてでも納期に間に合わせなければなりません。

  最悪のケースでは、納期を守るために外注せざるをえないこともあります。そこで、会社が始めたのが工場の「不良ゼロ運動」でした。

  

では、どのようにして「不良ゼロ運動」を進めていったのか。その作業全体の流れについて説明したいと思います。自部署の業務改革。職場の問題解決。未知なる新業務へのチャレンジ。何事もそうですが「何とかなりそうだ」という解決や成功の見通しさえ立てば、物事は前向きな方向・良い方向に進んでいきます。そういう意味で、スタートの前に、今後取り組んでいくべき改革(不良ゼロ運動)の進め方、その手順を明らかにしておくことが欠かせません。

 

最初にこういう改革の全体像が見えていないと、段々と作業をやっていくうちに手探り状態になって、その進め方や方向性がわからなくなってしまいます。そこが、こういった業務改革が失敗する大きな要因のひとつです。だから、次第に改革の意欲が尻すぼみになって、いつの間にか改革の動きがウヤムヤになって消えてしまうのです。だからこそ、改革の道筋について明らかにしておく必要があります。

  以下「不良ゼロ活動の進め方(改革の業務フロー)をフローチャートの図にして示します。

   要は、不良を無くすために「これまでの仕事のやり方を根本的に見直し、仕事のやり方を良い方向に改める」それだけのことなのです。しかしながら、実際に実行しようとすると、必ずや、いくつかの難題・壁に突き当たります。それが、この5つのテーマなのかも知れません。以下、簡単に個々のテーマごとの狙いを説明しておきましょう。 

  

1.問題の共有化(現状分析)

    

    最初に行うのが「どのような原因で不良品を出してしまうのか」その事実関係を洗い出してまとめる「問題の共有化」という作業です。わかりやすく言えば、参加メンバー全員で「今、現在の仕事のやり方・進め方の良し悪し」について書き出して、現状を客観的に見つめ直す「場」です。職場の「現状分析」と言い換えても良いでしょう。

  しかし、経営の立場からは、不良の損失だけの問題ではありませんでした。ここ数年の受注の流れを見ると、注文品の品種が増える一方で、そのロット(一回)当たりの生産量が減ってきていたからです。

  多品種・少ロット・短納期の時代、ビジネスにスピード感が求められる時代になっているのです。

  ところが、現場(工場長)の頭の中は、未だに「納期までに製品を造ること」しかありません。会社の将来、昨今の受注傾向から、より効率的な生産体制を整えることなど、彼には思いも寄らないことでした。経営と現場のギャップ。実は、そこがこの会社の一番大きな問題でした。

  それ故、この段階で「今のままでは拙いという問題意識」「何としてでも問題を解決しなければ会社の将来性に響くという危機感」といった全員の足並みを揃えておくことがとても大切だったのです。

  

2.不良ゼロに向けての改善テーマの明確化(絞込み) 

  

不良が出てしまうような悪しき状況、解決すべき現実を「何でもかんでも、あれもこれも」と、数多く羅列しても意味がありません。それでは、ネガティブな発想が広がるだけです。

  誰しも複数のことを一度に同時進行できるモノではありません。だからこそ、不良につながる数ある問題点を取りまとめ、それらの重要性(深刻度?)を見極め、解決すべき問題の優先順位を明らかにすべきです。

  不良を出さないために「何から手を付けるべきか」目標となるテーマ(問題点)を絞り込み、優先順位を決めることでもあります。問題点とは解決すべき改善点であることを忘れてはいけません。

  この辺りから、参加メンバーの現状への思い、現場の状況の理解の仕方、その深さによって各自の意見が分かれてきます。それ故、議論の方向性が定まらず、まとまらないことが良くあります。十分な話合いの上、経営的な視点から、会社として取組むべき改善テーマを明らかにすることが欠かせません。

 

 

3.不良ゼロに向けての解決策の明確化

  

不良ゼロに向けて、経営が全面的にバックアップし、抜本的な方策をメンバー全員で検討すべきです。

  多くの場合、改革テーマだけを決めて、その解決策を十分に検討しないで現場リーダー任せにしてしまいます。実は、そこが業務改善や改革が失敗する大きな理由のひとつです。

  厳しい言い方をすると、これまで担当者任せになっているバラバラの仕事のやり方を、現場リーダーの対処療法的な対策で変えることは難しいと思います。人は、自分でできること以外はやろうとしないからです。

  経営が求める「作業の標準化」「立ち会い確認(ダブルチェック)」といった大きな変化は、ほとんど頭に浮かびません。だからこそ、経営主導で解決策を考えるべきなのです。 

 

 

4.不良ゼロ改革計画書(工程表)の作成

  

「不良ゼロ運動」のような改革を着実に進めるには、予め「誰が:いつまでに:何を(改革テーマ):どのような方法で」といった、いわゆる5w1Hを明らかにすべきです。スケジュール表という文書を作成することで「何としてでも成功させる。もう後戻りできない」というメンバーの改革成功への目的意識を高めていきます。「不良ゼロ運動」を進める計画は、三ヶ月をひとつの目途にして目標を立て実行していきます。

 見方を変えれば、その計画は一定の期日を明確にした工程管理のスケジュール表でもあります。

  

5.改革の工程管理

  

三ヶ月計画は、毎月「不良ゼロ運動」会議の場で「その時点までに、どれ位の成果が出たのか。新たなる問題は無いか」改革の進み具合、進捗状況をチェックしていきます。三ヶ月計画ではありますが、毎月、実績の内容報告をしていただきます。順調に進んでいることもあれば、逆に苦戦していることもあるでしょう。

  その際、結果の良否は経営が判断すべきです。改革が進まないテーマについては、その時点で新たな対処策を探っていきます。「不良ゼロ運動」の実行プロセスは、正に一ヶ月ごとにPDCAサイクルを回していくことに他なりません。 

   

社長の肝いりで始まった平塚食品の「不良ゼロ運動」ですが、経営には、なかなか不良が減らない工場の現実に、このままでは、必ず行き詰るという危機感がありました。多品種・少ロット・短納期化の時代の流れの中で、会社が生き残っていくには、品質管理をベースとした工場の生産体制の改革は急務であると考えていたからです。また、この先、これまでに造った経験の無い新製品を受注していかないとビジネス的な先細りは避けられないとも思っていました。まさに、経営の本気度が試されるプロジェクトだったのです。

 

( 平成31227)         © 公認会計士 井出事務所

 

► 関連項目 :小さな会社の業務改革(事例①改革のいきさつ)

 

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