小さな会社の業務改革(事例③「会社が目指す正しいスキル」)

 

この会社の「不良ゼロ運動」に限らず、業務改革のような話合いをする際に忘れてはならない注意点があります。それは、不良を無くすために、どのように仕事のやり方を変えればよいのか。今のやり方だとミスをしやすいこと。問題があること。そういった「仕事のやり方そのもの」に軸を置いて議論をすることです。 

ちょっと難しい言い方をすると、会社としての技術力の有無、生産技術の観点からの技術の有無・その優劣について話合いをすべきです。「現状の仕事のやり方・進め方、その方法、その良し悪し」そこが、一番肝心な話合いのポイントです。 

 

業務改革のスタートは、まず当社あるいは自部署の現状分析を行うことです。その場で念頭に置くべきことは「今の担当者の仕事のやり方」ではありません。最終的には「会社が求める正しい仕事のやり方」です。

 

「個人のスキル・個人の勘に頼ったノウハウ」ではなく「会社が目指すべき正しい仕事のスキル・ノウハウ」を明らかにすべきです。何故ならば、こういう「仕事のやり方・方法」という視点で議論を進めないと、なかなか解決策の糸口が見つからないからです。 

 

この平塚食品工業の事例に限らず、現状分析の場で、よく耳にする言葉が「作業担当者の意識が低い。レベルが低い。能力的に差がある」という発言です。

一見、尤もらしい意見に聞こえます。しかし、その意味は不良の原因を現場の担当者のせいにしているだけでしかありません。要は、これまで担当者個々の経験値に頼った(生産)技術の寄せ集めで仕事をしてきたのです。会社自体の生産技術があった訳ではなく、個人の技・スキルに頼った工場だったのです。

 

そういうこともあってか、不良発生の原因はと問うと「誰それが。誰々は(仕事が出来る出来ない)」という担当の問題にすり替わってしまいます。その背景にあるのは、現メンバーの「担当業務を変えられない。現担当者でなければ仕事ができない」という思い込みです。

 

「誰それが」という考えから頭が離れないと、会社(工場全体)として、どのように「仕事のやり方」を変えれば不良が無くなるのか。その具体的な解決策、技術的な方法論の方向に議論が進んでいきません。

 

あくまでも、今後「どのように仕事のやり方を変えていくのか」その具体的な方法(技術やスキル)を明らかにする。そのことを常に念頭に置いて改革の議論を進めるべきです。

  会社が目指す「あるべき仕事のやり方」「正しいスキル(仕事のやり方・進め方)という視点(切り口)を見失ってはいけません。

  

では、どのようにして「正しいスキル」を明らかにすれば良いのでしょうか。そのひとつの方法を紹介しましょう。現状分析をする際に重要なポイントになるのが、各現場担当者へのヒアリングです。ヒアリングといっても、ただ漠然と話を聞く訳ではありません。事前に質問書を出し、その回答書をベースに担当者の話を聴きます。 その際の質問内容が、以下の二点です。

  

1.自身として、どんなことに注意して仕事をしていますか? 

  できるだけ細かく書き出してください。 

 

2.(工場全体として)どうすれば、もっと効率的に仕事が出来ると

  思いますか? 思いつくことで構いませんから、できるだけ細かく

  書き出してください。

  

担当者のレベル如何を問わず、皆さんそれぞれの思いで、色々なことを書いてきてくれます。その中には、前向きで業務改善のヒントになることが数多くあります。また、基本的で当たり前のことが出来ていないという事実もあります。現工場長の眼が届いていないことも多くあります。このような生産現場の生情報や事実関係をひとつひとつ整理し、まとめることで、解決の糸口を掴んでいきます。

  

そこで、ポイントになるのが「仕事上の注意点」です。実は、それこそが(生産)技術のエッセンスです。

 仕事の出来る人。熟練度の高い人。腕のある人ほど、細かな処まで神経を使って仕事をしています。

 彼らは「こういう所(作業)はちょっと注意してやらないと巧くいかない」といった仕事のコツ勘所をシッカリとマスターしています。その人の「こだわり」といっても良いかもしれません。

  「こういう点に気をつけている。こういう所は特に慎重にやっている」「大事な仕事は、かかる前に手順の確認を欠かさずにやっている」等々、そういう「こだわり」があるから彼らは良い仕事が出来るのです。高い技術を身につけた人は、細心の注意を忘れません。

 

 一方、仕事の甘い人は、あまりそういう意識が働きません。ただ、漠然と日々の仕事をこなしています。本来、注意してやるべきことを無意識のうちにスルーしてしまいます。

  段取りが悪い。凡ミスをする。確認をしない。不注意による間違いを繰り返す。こう言うことは、皆、正しいスキルが身についていないからです。要は、仕事としてやるべきこと。その手順やこまかな注意点がキチンと頭に入っていないのです。それこそが不良発生の原因です。

  

 これらのことは何も工場の生産現場に限って言えることではないと思います。建設業やIT業界のような業種の如何を問わず、また、営業や購買、物流といった職種に関わらず、総務や経理のような管理業務にも当てはまります。高いビジネス・スキルを身につけている人は「自身がやるべきこと。仕事のこだわり。細かな注意点」がシッカリと頭に入っています。そして、それを確実に実行出来ます。だから、レベルの高い仕事ができるのです。

 

「仕事上の注意点」それこそが「ビジネス・スキル」や「ノウハウ」にエッセンスに他なりません。ある意味、それこそが「会社が目指すべき仕事やり方」だと思います。現状分析のポイントは現状の仕事のやり方・進め方、その方法、その良し悪し」を明らかにすることです。

  

(平成31310日)          © 公認会計士 井出 事務所

 

 

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