小さな会社の業務改革(事例⑤ 問題点の絞り込み)

 

業務改革の第一プロセスは「現状の問題点を洗い出してまとめる」現状分析でした。次なるプロセスは、それらの問題点の中から「どの問題を真先に改善すべきか」という「問題点の絞り込み」です。

 

「兎追うものは一兎も得ず」の喩えの通り、一気に全ての問題は解決できません。だからこそ、問題の影響の重要性やその深刻度を検討し、数ある問題点の「解決・改善の優先順位」を明らかにすることが重要です。

 

 

 

その際に注意すべきは、現場目線による判断の良し悪しです。そもそも、この平塚食品工業での「不良ゼロ運動」スタートのきっかけは、工場長をトップにした改善では何も進まないという経営判断があったからです。現場主導によるクレーム対策では、どうしても工場内の各部署で起きる問題点ばかりに目が向き、工場全体で見た時の最重要課題という発想に至らないからです。  

 

実際、毎日、仕事をしている現場としては、今の仕事のやり方に問題があることは良くわかっています。

 

しかし、それをどのように変えれば良いのか。その確固たる答え(正解)はあるようでありません。

 

その一方、現場としては、これまでやり慣れた仕事のやり方を大きく変えることを嫌います。新しいやり方を上から押し付けられることは好みません。不慣れなやり方をして失敗することを恐れます。

 

 そういうこともあってか、改善策というと、どうしても、今の延長線上のやり方に捉われてしまいます。「現状のやり方を良し」とする発想から抜け出せず、今のやり方への対処療法的な方法しか出てきません。

 

加えて、現場のことを良くわかっている。知っているが故に「端からできない。仕方がない」と決めつけてしまうこともあります。その道のプロであっても、気付けないこと(見落とし)があるものです。それ故、現場からは「これまでの仕事のやり方を根本的に見直す」ような解決策は、なかなか浮かんできません。そこで求められるのが、工場全体、会社全体で見た経営的な視点です。

 

現場的には仕方の無いことでも、経営的に見ると大問題ということがあります。つまり「問題点の絞り込み」のプロセスでは、問題点をどのように捉えるか。その捉え方の視点、認識の仕方によって、その重要性は異なってくるのです。

 

 もともと、この会社では「不良(ロス)が多く出て生産効率が悪い」という問題に直面していました。得意先に納品できない不良品は、その材料費と手間賃が無駄になるだけでなく、二度手間になるので、それまでに要した時間も無駄になります。だからこそ「不良を無くして生産効率を上げる」ことが急務だったのです。そのための「不良ゼロ運動」の立ち上げでした。

 

 

 

現状分析をしている会議の場で経営が不可解に思ったことは、担当者によって、生産直後の機械洗浄のスピードとその精度に大きなバラツキがあることでした。現場の人からすると「何で今更とも言える」当たり前の事実でした。これまでは、担当号機の業務に専念することが求められていたからです。

 

しかし、経営的な発想からは、現状の号機ごとの専任制こそが、チェックの甘さと生産効率を妨げている大きな要因に映りました。

 

特に、Aパターンと呼ばれる調理機器の清掃に問題があると考えました。この作業は、わざわざ機械のパーツを取り外して、スクリューの裏側等汚れの落ちにくい細かな部分まで丁寧に洗浄します。そのため手間と時間がかかります。機械の大きさによりますが、一人でやると、速い人でも1時間半くらいかかり、遅い人だと2時間を越えてしまうことも珍しくありません。担当者によって、かなりスピードの差が出る作業です。

 

 その際、手の空いている人が協力してやれば、もっと速く効率的にできます。また、洗浄レベルの良否のチェック機能も働きます。それを出来なくしているのが「専任制」という現状の仕事のやり方、業務体制だったのです。

 

また、Aパターンの洗浄は、基本的に当日に造る最終製品の生産直後に行うことになっています。そのため残業になることが珍しくはありません。担当者によっては残業を避けるため翌日の生産前に行う人もいます。しかしながら、一晩置くと汚れが落ちにくくなるので、かえって時間がかかることもあります。 加えて、毎日、始業時は皆忙しいので誰も洗浄のヘルプには入れません。こういった作業タイミングの不徹底も経営は大きな問題と思いました。

 

 

 

 この工場長のように個々の小さな問題点ばかりに目が向き、大所高所からの判断、つまり、工場全体の生産効率ひいては会社の経営効率の是非がわからないようでは会社の成長は望めません。

 

現場主導による業務改革が上手く進まないのは、このような点に問題があると考えるベきでしょう。

 

 しかし、見方を変えれば、これまで、その事実を認識することなく放置していた経営サイドに一番問題があるとも言えます。経営規模の大小を問わず、実際には、この会社のような経営と現場のコミュケーション・ギャップのケースは、よくあることだと思います。

 

 

 

 (平成31413日)                     © 公認会計士 井出 事務所

 

 

 

► 関連項目 :仕事を担当者任せにしている限り会社は成長しない

 

        :現場の実行力を高める仕組みが成長力の土台になる

 

現場責任者(管理者)からの脱皮