小規模店舗の現状とその問題点

 

「お肉屋さん」は、二十年前と比べる店舗数が半減しているともいわれる業界です。また月商平均が全国平均では500万円に満たないお店が多数を占めます。そのような、お肉屋さんの集まりの食肉関連団体で、先日「店舗営業の成長戦略(商売上手の商売繁盛術)」というお話をさせていただく機会がありました。

当事務所は、食肉業専門のコンサルのお手伝いをしているわけではありません。そこで、一顧客の目線で、色々と感じたことをお話させていただきました。取扱商品にかかわらず、いわゆる街の小売業、お店全般に共通することでもありますので、その内容を紹介させていただきます。

 

1.「当店の強み」「一押し商品」がハッキリしてない 

 どのような業種でも、繁盛店に共通することは「お客様のお目当て」があることです。わざわざ、お客様が足を運ぶような「目玉商品」や自信を持ってお勧めできる「こだわり商品」があります。そういう当店の「一押し商品」がハッキリしていること。そこが「繁盛店の強み」そのものに他なりません。

 

美味しい牛肉を扱っているお店。質の良い豚肉が揃っているお店。メンチやコロッケのような揚げ物が良く出るお肉屋さん。焼き豚が有名な処。焼肉弁当のようなお弁当が主力商品になっているお店等々、稼いでいる肉屋さんは、各々、独自の強みを持っているものです。

 

 このような集客の鍵になる「こだわり商品・一押し商品」があることは、商売ではとても大切なことです。これらを商売の軸にして数字を稼げるからです。大げさに言えば、これらの商品自体がそのお店のブランドになっているのです。

 

一方、業績が低迷しているお店は、この真逆で「何でもかんでも、あれもこれも」という総花的な商売をしています。牛肉・豚肉・鳥肉はもとより、コロッケや焼き豚のような惣菜、さらにお弁当まで、ありとあらゆるモノを扱っています。揚げ物でも、コロッケ、トンカツ、メンチ、唐揚げ、アジフライ等々、兎に角何でもやろうとします。コロッケだけでも、牛肉コロッケ、野菜コロッケ、コーンコロッケのように「これでもか」と言わんばかりに品数を増やそうとします。

 

残念なことに、こういうタイプの売り方をするお店は「品数を増やす。品揃え」を充実することが、お客様への利便性を高める最高のサービスだと勘違いしています。でも、現実は何でも良いから少しでも目先の売上が欲しいのです。厳しい言い方をすれば「何を軸にして商売をすれば良いのか」わからないのだと思います。

 

それに加え、こういうタイプのお店に共通することは「安くしないと売れない」といった思い込みがあります。そのせいか「より安く」という安売り商法にしか目が向きません。その象徴は「特売黒毛和牛切り落とし100g 400」といった店頭に掲げられた値札です。大抵の場合、黄色の紙に赤字で書かれています。こういった張り紙が、闇雲に沢山あるので、お客様からすると、何がほんとうに安いのか。肝心なお勧め商品がどれかわかりません。 よく見ると、その隣には「会津直送馬肉あります!」というもポスターも張ってあります。本当に「何でもかんでも、あれもこれも」で、お客様からすれば「何を買ってよいのか」迷うだけです。

 

皆さんの近くにあるお肉屋を見てみると、ほとんどのお店がこのような商売のやり方をしているのではないでしょうか。お客様からすると、それは何でも置いてあるけど、特徴の無い・ありふれたお店でしかありません。

 

 

2.総花的な商売の問題点

このような全方位外交的な総花商売には、いくつか問題点があります。 まず少人数で商売をやっている割に取り扱うアイテムが多いので手間がかかります。だから、朝から晩まで一日中休む暇なく忙しい。その割には、あまりお店全体の数字は大きく伸びません。個々に出る数量は、日々ある程度あっても、その数に限りがあり、主力商品といえるモノは少ないからです。つまり、多品種少量販売の商法になっているのです。

 

次に、このようなやり方をしていると、今度は「商品の絞込み」ができなくなってしまいます。例えば、1120円のコーンコロッケが一日平均20個出るとすれば、月25日営業で月6万円の売上になります。

 

一度数字が読めるようになると、今度は、それが無くなると困るので、そのアイテムにしがみつくようになります。そうなると、品数を増やすことばかりしか頭が働きません。

 結局、一生懸命にやればやるほど、労多くして益少なしの商売になっている。このあたりが、この商法の限界だと思います。いつになっても、商売の軸になる「主力商品」を育てる。力を入れる「こだわり商品」をお勧めするという発想が出てこないからです。

しかし、よく考えてみると、それは最大のライバルである近くのスーパーと同じの商売やり方です。大きな店舗であってこそ出来る商法であって、規模の小さい店では無理のあるやり方です。

 

そこに店主やスタッフの高齢化が重なり商売に疲れてくる。そうやって、薄利多売の体力勝負に巻き込まれた結果、数多くのお店が消えていったというのが街の商店街の実情だと思います。 

 

 

 

多くの商店が、最終的に、こういう総花的な商売のやり方になってしまうのは、当店が自信を持ってお勧めできる「一押し商品」をお客様に打ち出せない。視点を変えれば、当店の「こだわり・特徴・強み」を絞り込めないからではないでしょうか。「それが、わからないのか」それとも「絞り込むリスクを恐れるのか」その点は、第三者からは分かり兼ねます。しかしながら、冒頭に書いた通り、繁盛店は逆にそこがハッキリしています。

 

いつの時代も、ビジネスは競争原理の仕組みで動いています。だからこそ、他店には負けない得意分野なり、強みとなる「こだわり商品」を持たなければ、その業界で生き残ることはできないと思います。

 

 

 

(平成28918日)         © 公認会計士 井出 事務所