戦略構築の基礎になる「自社の強み」の創り方

 

 

「当社は“ここ”が違います」数年前、ちょっとお付き合いのあったリフォーム会社のM社からいただいたご案内のタイトルです。

都心部に10の営業所を構え、売上25億強、従業員数100名弱の伸び盛りの会社です。リノベや耐震工事など、都市部でのリフォーム需要は旺盛ですが、その一方でリフォーム業者の施工能力の優劣差が大きく、クレームが多発している業界でもあります。

 完成したリフォーム内容が当初のイメージと異なる。破損や汚れ防止といった養生、後片付けなど工事中の施主への気配りがない。挨拶や身だしなみ、立ち振る舞い等、施工業者のマナーが悪い。等々、請負受注業にありがちなトラブルやクレームは何でも全部揃っているという感じです。

 お客様からすれば、このような不満は、業者として当たり前の“基本中の基”がなっていないとしか思えません。しかし、リフォーム業者サイドから言えば、何も今に始まったことではなく昔からよくある問題で、特別大きな問題とは考えていない人が多くいます。だから、度々クレームが起きるし、また無くならないのです。しかし、このような事実を見過ごしている限り、ビジネスとしての成功や成長はありえません。

 

 M社の“ここが違う”という売りは「マイスター制度」と呼ばれる協力会社(下請業者や職人さん)の登録公開の仕組みです。工事関係業界では仕事を下請けに丸投げにしてしまうケースが多く、ほとんどの場合、それがトラブルやクレームの原因になっています。

 ところが、M社では、予め技能研修やマナー研修を受け、それにパスしないと仕事ができない仕組みになっています。パスすると、M社の協力業者としてHPに登録され、その実績が公開されます。

加えて、M社の場合、物件の引渡し後、お客様アンケートを実施し、施工実績の良し悪しを客観的に評価するシステムがあります。これにより、年2回、協力業者へのボーナスを支払う制度になっています。

要は、M社の仕事をするには、施工現場を担当する協力業者が、お客様の目線を意識して仕事をする仕組みになっているのです。これでは、協力業者はM社の仕事をする際は一切手を抜けなくなります。

 いわば「マイスター制度」の内容は、基本的なリフォーム仕事の品質管理、管理体制の基礎になるものです。また、工事中の騒音や埃をできるだけ出さないよう、お客様(施主)への気配りを重視しています。

M社の目指しているビジネスは、優れた内装工事と言う視点ではなく、トータルの「リフォーム・サービス」だからです。いずれのポイントも、もお客様の視点からすれば、当たり前のことばかりです。

しかしながら、工事関係に関わらず、どの業界であっても、昔からの「慣わし」や「しきたり」「しがらみ」があり、現実に実行することは難しいことです。

 

これまで、私どものコラムでは「清掃業の鉄道整備㈱」「MKタクシーの研修制度」「ホテル業界のインスペクター」「メーカーの品質管理」等の事例を紹介してきました。M社の「マイスター制度」も基本的には同じ考え方の基に成り立っている「業務管理の仕組み」です。「何もそこまでやらなくても・・」という声が聞こえてきそうですが、残念なことに、実際はそこまでやっても「ミスやトラブル、クレーム」は無くなるものではありません

 

今は“人並み優れて当たり前の時代”です。“人並み、ソコソコで通用する時代”ではありません。だからこそ「当社は“ここ”が違います」というお客様にアピールできることをハッキリと打ち出していかなければなりません。自社のセールスポイントを創ること。まさに、それこそが「経営戦略」に他なりません。

 

規模は小さくとも、伸びる会社に共通することは、現場の実行力が高いことです。一人ひとりが確かな仕事が出来る。レベルの高い仕事が出来る会社になる。それは現場レベルの仕事の内容、出来映えをチェックし、改善指導する仕組みがあるから出来ることです。即ち、現場の実行力を高めるような仕事の管理体制の充実こそ、戦略構築のたたき台になるものです。

逆に、自社の「強み」や「売り」が見えてこないのは、日々の仕事のやり方や社内の業務管理の仕組みに何かしら改善すべき問題があるからだと思います。会社の戦力の強化無くして、成長戦略の道筋は見えてきません。

 

( 平成2878日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:現場の実行力を高める仕組みが成長力の土台になる

      仕事を担当者任せにしている限り会社は成長しない