改革の場を管理者教育の場でもある

 

 前回まで数回にわたって、実例をもとに「小さな会社の業務改悪」の進め方にについて説明してきました。言葉足らずや説明不足の点も多々あったと思いますが、出来るだけ細かく、その手順や各プロセス・段階での注意事項をまとめたつもりです。

 

 そもそも、どの会社でも業務改革を実施する目的は、現場(工場)の効率の悪い仕事やり方を改め、それにより会社の採算性を向上させることに他なりません。成功すれば、その成果として、経営的には業績の改善が見込まれます。

 現場的には、ミスやトラブル、不良の減少、作業時間の短縮(スピードアップ)、仕事の内容のレベルアップ、現場担当者のスキルアップといったプラスの変化が期待されます。

 

 しかしながら、よくよく考えてみると、そこから得られる最も大切なことは「現場の管理者の成長」ではないでしょうか。現場をシッカリと支える管理者・仕事の出来る現場リーダーの存在。それこそが、脆弱な経営体質から脱皮し、会社の組織力を強化するベースになることだからです。

 

彼らが改革の手法や改善のスキルをマスターすることによって、経営が、いちいち現場に 首を突っ込まなくとも、強い現場を作れるようにする。

現場主導でレベルの高い実行力を身につけられるようになる。そういう人材を養成することが、組織力を高め、会社を成長させる基盤になります。

 

今の時代、管理者に求められるのは、基本的なことを周知徹底し、仕事の実行力を高められる指導力だけではありません。「現場を回す力。まとめる力」も大切なことですが、それだけでは経営は物足りなく思うでしょう。彼らが望むことは、上の意向を汲み、これまでの仕事のやり方に捉われずに、柔軟な発想で、現場の改善提案ができる力。そして、それを実行出来る力です。 

  

そうすると、すぐさま「そんなことは言われなくとも百も承知。そのやり方、育て方がわからない」から苦労しているとの声が聞こえてきそうです。では、そう思っている経営者の方が、どれだけ現場リーダーに「こういう仕事が出来るようになって欲しい」という期待値を伝えているか。「こういう(他社の)やり方を見習って欲しい」といったヒントを与えているか。「こうすれば、良い。良くなる」みたいな具体的な仕事のやり方について意見交換をしているか、というと大きなクエスチョン・マークがついてしまいます。

 

 多くの経営者は「現場の問題点を見つけ、それ解決することを考えるのが管理者の仕事だ」と思っています。

  しかしながら、多くの会社の管理者は、どこかで、職場全体のレベルアップを図るための改善手法を習ったことがあるでしょうか。誰かから、リーダーの役割とか、あるべき部下の指導法を教えてもらったでしょうか。ほとんど会社の現場リーダーは、全員「No」と答えるでしょう。

 

小さな会社では未だに、徒弟制度に等しいOJT、即ち、見よう見まねで仕事を覚えることが社員教育の基本だと思い込んでいます。それは部下を指導する立場の上司の方にも全く同じ事が言えます。

  ほとんどの人は、現場リーダーとしての役割がわからないまま、ただリーダーのポジションに就いています。それ故「部下の指導法」や「職場運営、業務管理の方法」といった具体的なスキルを身につけることなく、手探りで上司の仕事をしている方が多いと思います。

 

実際、管理者になる前に研修でその内容を習うのは研修制度の整った大きな会社の一部の人たちだけです。それでは、管理の方が経営の期待する役割を果たすことは無理だと思います。

よく考えてみてください。人は、誰しもわからないことはやろうとしないし、実際にやってもできないのです。だから、今の現実があり、現場で多くの問題を招いているのです。

  

 

このような上司力の問題を改善するためは、業務改革の場を管理者教育の場として位置づけ、会社の軸となる管理者を育成する姿勢が望まれます。「組織の動かし方」や「職場のレベル(実行力)アップ」といった管理者としての役割を学び、スキルを身につけるチャンスを創っていくべきです。

 

 小さな会社ほど、経営と現場リーダーが一緒になって、目の前の問題点を解決していく体制創りが必要です。

 

 ( 令和元年720日 )      Ⓒ 公認会計士 井出事務所