組織力の差は、こう言う数字になって表われる

 以下の表は、いずれも上場している大手通信工事会社、C社、M社の今年3月期の(連結)損益計算書(以下、PLとする)です。一口に通信工事と言っても、既に光回線工事や携帯の基地局設置の時代は終わっています

この先は、これまでの延長線上にある高速大容量通信対策だけでなく、太陽光発電や防災関連システム等、新たな事業分野へ進出を模索しているのが、各社の今の実情です。

                                     単位:億円

 

C 社

M 社

売  上

3,800

 

3,129

  

 

 

 

 

 

売上総利益

534

14.1%

397

12.7%

販 管 費

230

 

230

 

営業利益

303

8.0%

167

5.3%

 

  

 両社のPLを比較してみると、経営成績の差、言い換えると、経営効率の良否の違いがよくわかります。

 まず、最初に目につくのが、本業の儲けを示す「営業利益」の差です。売上ベースで見ると、C社(3800億)はM社(3129億)に対し1.2倍の事業規模です。

  しかしながら、営業利益ベースでは、C社(303億)はM社(167億)と比べて1.8倍もの数字を出しています。俗っぽい言い方をすれば、C社の方が、より筋肉体質の経営をしていると言えるでしょう。

 

 もう少し、その差の内容を探ってみると、売上総利益率が、C社は14.1%、M社は12.7%と、大きな違いがあります。売上総利益率と言うとわかりにくいかもしれません。要は、工事現場が稼ぎ出した儲け(利益)の利幅です。

その現場の受注額から、そこの現場でかかった資材費や人件費等のコスト(工事原価)の合計額を差し引いた利幅をパーセンテージで表したものです。

  

工事や建設のような請負業は、コンペで仕事の受注が決まるので、その発注内容に見合った金額に大きな差は出にくいものです。従って、利益(儲け)を出すためには「如何に予定通りに工事を終え、その原価(コスト)を当初の見積額通りに抑える」といった工事の施工管理、工程管理が重要です。

 

無論、当初の予定通りにスムースに仕事が運べば苦労はしません。ところが、当日になってみないとわからない天候の問題や協力会社の手配がつかなかった等々、突発的な予期せぬ障害が様々起きるのが工事現場の実情です。そう言ったことが生じても、確実に利益を出せる会社は、状況の変化に応じて人と仕事を巧く回して、当初の予定通りに工事を終えることができます。

 

まさに、儲かる工事会社のポイントは「現場の施工管理能力」にあります。その内容をよく掘り下げてみると、工事の施工管理の現場でちょくちょく発生する問題、つまりリスクへの対応能力とも言えるでしょう。このことは、ビジネスの観点から捉えると「現場のコスト管理力」に直結します。

  

利益を出せる会社の現場は「工事計画を立てて、工程表を作成すること」は無論のこと。各工程ごとに「こう言う点に注意して仕事をする」といった工事内容のチェックポイントがハッキリしている。また、現場監督が、毎朝の朝礼で、その内容を担当者に周知徹底することを怠らない。

  加えて、ポイントとなる工程では「当日の仕事が確実出来るように、前日までに資材の調達先への確認、協力会社に人手の手配を確かめる」と言った細かなことまで、現場監督の仕事の決まり事になっています。

    施工管理会議の場では「各現場の進捗状況を確認し、会社として重要な現場を洗い出し、必要な人手や工事日程の調整を前倒しに行う」といった、前向きで効率的な議論をし、具体的な調整と手配をする。

  これら、ひとつひとつのことは、工事業界では、皆「基本中の基本」わかりきった当たり前のことです。しかし、実際に実行できている会社は少ないのが実情ではないでしょうか。

  

と言うのも「会社の仕組み」はあるけれども巧く動いていない。(会議は多いけれど、前向きな意見が出ない。何も決まらない。こういう会議の状況が典型的な事例です。)「仕事としてやるべきこと」は会社の決まり事としてハッキリしているけれども、それが確実に実行されていない。こういう実情は業種を問わず、よく見かける現実です。このような状況を放置したままでは、いつまでたっても業績を伸ばせる会社にはなりません。

 

ところが、工事の進捗管理や不測の事態への対応を、現場監督個人に丸投げにしている会社は数多くあります。それが結果的に進捗遅れやコストアップになって「儲かる仕事も儲からない」という悪循環になっているのです。現場監督と言っても、一工事担当者の一人です。自身の力でできることと出来ないことがあります。

  これらの問題の根っこは、皆「管理体制の整備状況、充実度」といった「会社の組織力」がベースにあります。そういう組織上の問題点を、早々に洗い出して、全社的なバックアップを行い、経営効率を高める。それこそが経営の仕事です。このC社とM社の「営業利益(本業の儲け)の差」「収益力(儲ける力)の差」は「会社の組織力」の違いにあると思います。

 

(平成30年8月16日)        Ⓒ 公認会計士 井出事務所