経営の土台となる「守りの経営」の重要性

 

「事業再生のポイント」「赤字会社の条件」と、どちらかというと反面教師的な視点で、経営のあり方について、ここ数回検討してみました。結局のところ、会社業績の低迷や悪化の原因は二つあると思います。

そのひとつは、社長さんの舵の取り方、つまり経営に問題がある。もうひとつは、会社の採算性や今の仕事のやり方の良し悪しをチェックする社内の管理体制に問題がある。この二つが揃うと確実に赤字経営になります。

破綻した会社に、いつも指摘されることは「放漫経営」「杜撰な管理」という言葉です。

 

経営には「攻める役割」と「守る役割」があると思います。前者は、主として商品開発とか新分野への進出といった前向きにビジネスを進める経営戦略に関わることです。一方、後者は「予算管理、月次決算」といった採算性を管理する仕組み。あるいは「製品の品質管理や生産管理、購買管理や在庫管理」のような現場の業務管理の仕組みなど、経営を下支えする社内の管理体制の整備に関することと言えます。

ともすると経営という言葉からは、積極的な店舗展開、新製品開発、他事業や海外への進出というビジネスを広げる「攻めの経営」のイメージしか浮かびません。

しかし、勢いだけの「攻めの経営」だけでは、ビジネスは早晩行き詰ります。次第に、お金の管理や仕事の詰めの甘さが露呈してくるからです。

とりわけ、中小企業が、3年後、5年後と、健全で確実な会社の成長を目指すには、経営の守りの部分、即ち「社内の管理体制の充実」が欠かせません。

 

ヨーカ堂の前会長であった鈴木氏は、かつて全国店長会議の場で「不良在庫は、誰かが夜中に店に忍び込んで置いていった物か」という問いかけをしたそうです。つまり「売れない商品を仕入れた者の責任、仕入れた商品を売りそこなった者の責任は明確なのか」と言いたかったのです。

言い換えると「今の仕入業務、店頭販売業務の仕事のやり方に問題があるのではないか。そこを変えない限り、いつまでたっても不良在庫は無くならない」ということです。しかしながら、誰一人として現状の仕事のやり方に疑問を持たず、改善案を考えようとしない店長さん達に不満の意を表したのです。

不良在庫は廃棄すれば、その商品の仕入代金を捨てたことと同じです。会社のお金を無駄にしたことが、わからないようでは店長を務める資格は無い。そのことを、暗に下に伝えたのです。

このような無責任な仕事のやり方を見過ごしていると、知らず知らずのうちに会社が「丼(どんぶり)勘定」の経営になってしまいます。

実際は「丼勘定」ではなく、頑張っても頑張っても、あまり儲け(利益)が残らない「笊(ざる)勘定」の経営です。それ故「高コスト体質」「ぬるま湯体質」「無責任体質」といった言葉が当てはまるような会社では業績の向上は難しいと思います。

 

よく中小企業の経営者は、景気が悪いから経営不振に陥る。あるいは赤字になると言います。景気によって、会社の業績が多少の影響を受けることは仕方の無いことです。しかしながら、いつまでたっても景気に左右されるような経営体質では長い眼で見た会社の成長など望めません。

その浮き沈みに耐えられるような強い仕組みを持った会社にならなければ、会社の存続さえ危ぶまれる時代です。景気の動きに業績が左右されるのは締める処はシッカリ締める”「経営の守り」の部分の意識が弱いからではないでしょうか。実際、景気が悪くとも、少しでも業績を伸ばせる会社、しっかりと儲け(利益)を出せる会社は少なからずあります。

 

規模は小さくとも、このような確実に利益を出せる会社にするには、まず日々の売上管理であったり、仕入管理、在庫管理などお金の管理を徹底して、財務的基盤を固めることが欠かせません。 

また現場の実行力を高めるために、経営を下支えする現場の業務管理体制を整えることも重要です。

これらのポイントをよく理解し、どこまで細かく、かつシビアな経営に徹することができるか。そこが会社の発展成長の鍵になります。

自社のSWOT分析をしたときに「強味」が見つからないのは、この守りの経営が出来ていないからです。当たり前のことですが、小さい会社ほど、守り部分のウエイトが高いものです。そのことを忘れてはいけません。

 

( 平成28628日 )       Ⓒ 公認会計士 井出 事務所