経営の「転ばぬ先の杖」

 

先日、何気なく朝のニュース番組を見ていたら、自動車整備会社のトピックスがありました。その内容はと言うと、最近は、ただでさえ人手不足で困っているのに、ハイブリッドカーやEV車(電気自動車)の仕事が増えてきて、それに対応できる人がほとんどいない。(ガソリン自動車と構造が根本的に異なるので)

  現状、わからないことはスマホで調べて対処しているが、それで出来ることと出来ないことがある。メーカー直系の整備工場(会社)は研修制度も整っているので、このような問題はないが、全国の自動車整備会社の8割を占める小さな会社では、誰もが皆、直ぐにできる仕事ということではない。「うちでは出来ません」と仕事を断ることになるので、この先を見据えて対応していかないと経営が成り立たなくなるということでした。

 こういった業界にも時代の流れがヒシヒシと押し寄せているとつくづく思った次第です。

 

 さらに番組のレポートは続きました。現場の人達は、その変化を実感として受け止めている一方、経営の方は、未だに呑気なもので「まだまだガソリン車の数の方が圧倒的に多い。今のやり方のままでも暫くは何とかなる」と多寡をくくっているみたいです。また「同じ自動車なのだから基本的な整備の仕方も同じだろう」と決めつけて、現場の意見に取り合わない社長さんもいるようです。

 そういう事情もあってか、メーカーが主催するEV車を整備するための研修会に現場スタッフを参加させる訳でもなく、現場に「チャンと勉強して対応してください」と指示するだけで済むと思っている社長さんが多いとの話でした。

 

ガソリン車はエンジンで動き、EV車はモーターで動きます。つまり、ガソリン車とEV車では、そもそもの構造が違います。その番組でも紹介していたのですが、ガソリン車では「仕事中に感電に気を付ける」ということはないと思います。ところが、EV車の整備の場合は、その点が一番重要な注意事項だそうです。

 EV車の整備体制を整える。それは、まさに経営が陣頭指揮を取って動くべき問題です。EV化対応は、最早、将来の予測ではなく、自動車整備会社にとって、早急に対処すべき経営課題だと思います。

 

 「一歩、先を見て動く」ことは、経営者に求められる大切な能力のひとつです。ところが、現実には時代の流れを読んで先手を打つ」ことなど、そうそう容易くできることではありません。

    とりわけ自動車整備業のように、小さな会社が多い業界では、どうしても人海戦術による経営、現場頼みの経営になりがちです。そういう所は、目先の仕事を取ることで精一杯、目先の仕事を回すことで一杯一杯の成り行き経営の処がほとんどだと思います。

  大きな時代のうねりが目の前に来ているにもかかわらず、その対応を現場や担当者に押しつけるようでは、会社の先行きは明るいものにはなりません。

 

「備えあれば憂いなし」「転ばぬ先の杖の例えの通り、来るべき状況に向けて予め対応策を練っておく。

   当たり前のことですが、それが難しいのも、中小の経営にありがちなことです。「遅きに失する」という言葉がありますが、どのようなビジネスであっても後手に回っていては上手くいくはずもありません。いつの時代も、時代の流れを読んで動ける経営者とそこに気付けない社長さんがいます。

 規模の大小、業種の如何を問わず「手遅れになる前に、現実に即した手を確実に打つ。その的確な判断をする」それこそが、トップに求められる経営感覚だと思います。

 

( 平成30418日 )      Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

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