経営数値と業務効率の関連性

  

 今の時代、誠に便利になったのもので、Googleで「Jasdaq IT 企業 営業利益率」と入力すると、IT企業で上場会社の営業利益率ランキングの一覧表(173月更新)が出てきます。ちなみに、トップは(株)カカクコムの47.3%で、その平均値は7%だそうです。

  こういったサイトは、財務研修を実施している当事務所にとっては、とても有難い情報源です。財務研修というと、決算書の見方レベルの内容に終始する処が多いように思います。しかしながら、それでは実際の仕事にはあまり役に立ちません。業界トップの会社はどれ位の数字を上げているのか。

果たして、当社の数字は、どれ位のレベルなのか。その数字に一喜一憂しても意味はありません。そこから自社の問題点や課題を探り出していかなければ、だだの経営数値のお勉強にしかならないからです。

  自社の利益率が業界平均値を上回っていたら、それで安心していて良いのでしょうか。ライバル会社より、良い数字ならそれで問題は無いと言えるでしょうか。実際、上場されている各社の数値を比べてみると、とても同じビジネスをやっているとは思えないほど企業格差があります。

 

そこで、どうして、このような差が出てくるのか。経営数値を、ひとつのきっかけにして、その原因を徹底的に分析すること。突き詰めて考えることが求められます。ある意味、その点が本当の研修の狙いです。

  当社の今の現実をシッカリと受け止める。その上で、今後の対処策を考え実行してこそ意味があります。

  

元々、システム(ソフトウェア)開発のビジネスでは「先進技術(顧客ニーズ)への対応力不足⇒ 開発工程の滞留(バグ発生による手戻り)⇒ 開発時間の長時間化(残業代増) 開発コストの増加⇒ PJCT利益率の低下」という業界共通の問題点を抱えています。細かなことを言うならば、開発プロセスには「PJCT進捗管理や不具合(バグ)管理の徹底・仕様変更への対応力」等々、対処すべき技術的な問題が数多くあります。

 さらに、これらの内容を突き詰めていくと「設計段階での用件定義・仕様確定時の詰めの甘さ」といったシステム設計時の問題であるとも言われます。これらの諸問題は、正にその会社の技術力の差に他なりません。

設計力を含めた開発技術の組織力」の違いと言っても良いでしょう。それが、その会社の開発効率の差、イコール収益力の差になって表われてきます。それを象徴するのが、決算書の営業利益率や売上総利益率(全社的な各PJCTの利益率)です。

  それ故、同じ上場会社であっても、これらクリアーしている会社とそうでない処で、勝ち組と負け組に分かれています。一言で言うと、開発スピードの速い会社、業務効率の高い処、組織力の強い企業が勝ち組になっています。

  

そもそも、システム業界のビジネスは、人的な総合力、組織力が問われるビジネスです。ですから、SE(システム・エンジニア)やPG(プログラマー)の技術力の優劣、そして優秀な人材の多寡が競争力の差になって表れてきます。基本的に「人海戦術」で戦うサービス業なのです。

 勝ち組の経営は、その点を十分に理解して、個の力に頼らない組織的な開発体制の整備に努めています。

 

 得意分野(技術)の絞込み。システムのパッケージ化。過去の設計・開発・検証ナレッジ情報の共有化のような開発工程を短縮化するシステムの導入。技術研修制度の充実。技術者の開発能力と給与制度のリンク 等々、様々な手を打っています。「勝ち組企業」は、経営効率を全社的に高める戦略を仕掛けて、自社の勝ちパターンを確立しているのです。

  その一方、負け組の経営は「収益力の低下の原因やその対応策」を頭ではわかっていても、実際にその効果的な対策を十分に打つことが出来ません。その実態は、未だに「担当者任せ・成り行き任せの開発現場」といった、個の力に頼った経営をしています。そのひとつの理由が、これらの問題を経営が現場の問題と思っているからです。それは「できるプロマネ(開発PJCTの全体をコントロールするPJCTマネージャー)が少ない。プロマネの力量のバラツキが大きい」などと、まるで他人事のような経営の発言によく表われています。現場は当面の仕事、担当PJCTの納期に追われています。

つまり、現場主導ではどうにもならない問題なのです。

  

IT企業に限らず「現場レベルの対応力で解決できること」と「経営主導でなければ動かないこと」の区別がつかない経営では困ったものです。

会社として、経営として、わかりきったことができるか、できないか。

経営成績の差は、まさにこのような経営力や組織力の違いが最も大きな要因だと思います。

  経営数値を読む勉強は、その優劣を理解するだけに捕らわれず、できることなら、その背後にある事実関係のレベルにまで掘り下げて欲しいものです。

  

 ( 平成30718日 )        Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

 

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