経営計画と人材育成 ②

 

 

前回は、サロン・ビジネス業の成長、経営計画や各店舗の営業(売上)計画の成功のベースになるH社における売れっ子スタイリストの育成プランとそのためのトレーニング・プログラムについてお伝えしました。

 

加えて、この会社のもうひとつの重要な教育プログラムがお店の数字や業績、スタッフの育成・マネジメントといったことのできる「次世代店長の育成」です。

 

H社の経営計画には新規の出店計画が含まれています。その際には、必ず新店長が生まれることになります。通常は、既存店からの配属替えで新店長が任命されます。その店からすると、今の店長が抜けることになります。しかし、現在の店長が居なくなったからといって、そのお店の数字が落ちてしまっては困ります。

 

つまり、会社の経営的には、次世代店長あるいは店長候補生の育成こそ、最も重要な人材育成なのです。

  

ヘアーサロン業の店舗運営は、シャンプー・カット・スタイリングといった一連の流れ作業の仕事です。

  ですから、スタッフのコミュニケーションが良く、お互いのサポート体制が整っていないと、その流れが滞ってしまい、お客様をお待たせすることになります。特に、お店が満席の時ほど、そういう状況になりがちです。スタイリスト、スタッフ全員のチーム力の有無が、仕事の良否やスピード感に表れてきます。

 

  とりわけ、お客様のピーク時に、チームの一体感のレベル差が大きく出てしまいます。

 

のことは、の日、の時だけの問題ではありません。アンケート結果を調べてみると、お客様をお待たせしない体制、その際のスタッフの動き方がお客様のリピート(再来店)に反映されているのが良くわかります。「テキパキ感・サッサ感」と「モタモタ感・ボーッと感」と言った方がわかりやすいかもしれません。

  

 そのような時に、冷静に周りを見回し、アイ・コンタクトでスタッフに指示が出来る店長がいるだけで、お店全体の仕事の流れや雰囲気は全く違ってきます。スタッフが緊張感を持ってテキパキと動いているからです。言い換えると、お客様をお待たせしないサロン運営が出来る人です。

 

満席時にスタッフに的確な指示を出し、スムースにお店を回せる店長。「満席時の店舗マネジメント」ができる店長。それこそが、会社が求める理想の店長像のひとつです。 

   店長格として周囲の状況に自然にセンサー(注意力)が働くようになるにはベテラン・スタイリストでも、少なくとも3年間位の修行期間が必要になります。

 

そこでH社では、エリア・マネジャーと店長が指導役になって、次世代店長を目指すキャリア・アップのトレーニング・プログラムを実施しています。基本的な育成方法は、売れっ子スタイリストと同じ手法です。

 

3ヶ月をワン・クールにして目標(テーマ)を設定します。それに対し、店長候補生自身が、毎週ABCDE5段階で自己評価し、その結果とその理由について報告書を上司に提出することも同じです。その達成状況について店長とは毎週、エリア・マネジャーとは毎月、意見交換しながら、アドバイスを受けていきます。そのテーマがクリアーできるようになるまで実施します。そのようなトレーニングを繰り返し積むことで、ピーク時に自身がやらなければならないこと。店長としての役割意識を高めていきます。

 

店長養成の初歩的な基本的な目標(テーマ)の一例を挙げると「どのお客様の施術が遅れているのか、仕事が止まっているのか。周囲を含め、お店全体のお客様の施術の状況、進み具合をリアルタイムで掴んでいるか」というテーマがあります。お客様がピーク時の状況対応力を高めるには、まず周囲への目配りが欠かせないからです。

 

いくらスタイリストとしてスキルが高くて、指名率が良くても、周りのスタッフを上手く使う等、店長の仕事をサポートできるようにならなければ、お店全体がスムースに動きません。大切なのは目の前の自分のお客様だけではありません。隣のお客様のことは他人事、お店の混み具合はよそ事では、とても一人前のスタイリストとは言えないでしょう。

  

美容業を営むH社に関わらず、店舗ビジネスの成長のベースには、このようなお店のリーダーのトレーニング・プログラムや研修体制の整備が欠かせません。会社として社員の育成にシッカリと関わることが大切です。自身が目指すべき将来像、ハッキリとしたキャリア(道筋)を描ける社員は一握りの人達です。

 

だからこそ、将来、会社のキーマンとなるべき社員のスキル・アップ、キャリア・アップを支援する組みが必要なのです。現場リーダー(店長)の育成を現場任せにしている限りは、会社の発展・成長は覚束無いことと思います。

 

 

 

 (令和2218日)          Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

 

 関連項目:  プロの店長感覚