経営計画(書)を作る意味

 

 首都圏で約20店舗のヘアーサロンを営むH社は、毎年、全社員を捲き込んで翌年度の経営計画発表会を実施しています。当日は、この為に全店舗を休業にし、社員全員が参加します。また社員だけでなく、シャンプーやリンス等の仕入先や金融機関等の取引先も招待しています。

 その内容はというと、会社全体としての売上目標や利益目標、出店目標の発表だけでなく、当年度の業績功労者へ与えられる社長賞の表彰も行います。社長曰く、全社を挙げて、このような会を催す最大の狙いは「社員のモチベーション(やる気)アップ」にあると言います。

 ヘアーサロン業は、確かにヘアー・スタイルを売るビジネスですが、その一方でお客様とのコミュニュケーションやお店の雰囲気創りが御来店の大きなインセンティブになっています。

 店長をはじめ、お店のスタッフ全員が活き活きと仕事をしているからこそ、お客様も「このお店に行こう」という気持ちになります。

 そのような店創りをするには、そこで働いているメンバー(社員)全員が、毎日、自身の店と言う思いを持って仕事をすることが欠かせません。

 自分で考えて前向きに動くような仕事をすることが大切です。店長だけでなく、店のスタッフ全員が自分のお店、自分の仕事という“我が事感覚”で仕事ができなければなりません。反対に、上から言われたからと言う「やらされ感」や会社の仕事だからみたいな「サラリーマン感覚」で仕事をすることは禁物です。何故ならば、そのような気持ちが自然とお客様に伝わってしまうからです。

 

 そもそも毎年、経営計画発表会を開催するきっかけは、社長自身が「自分の将来と店の業績を重ね合わせるようにならないと人は成長しない」という考えを持っていたからです。彼の持論は、サービス業の本質は人材育成業であり、会社の発展・成長のキーは「仕事の出来る店長、優秀なスタイリスト、レセプションを何人育てられるか」そこに係っていると話してくれました。

 

 そこから、彼は、頑張れば頑張っただけ報われる会社と実感できること。将来性のある会社であることを実感できること。そのための場創り、仕組み創りが経営の仕事だと気付いたと言います。

そこで、年に一度、店長や店の幹部スタッフの考えを、次年度の目標や計画として社内全員に向けて発表する場を設けるようにしたのです。

 

 この会社のように経営計画発表会を。社の重要な年度イベントと位置付けている処もあります。その一方、多くの中小企業では経営計画(書)さえ作っていません。私は、逆に、小さな会社こそ、3年後、5年後の将来像を明らかにすべきだと思います。その点がハッキリしていないから、日々の仕事に流されてしまうのです。

 今よりも少し高いところに目線を置き、明確な目標を掲げ、全社を挙げてその達成に取組む。それこそが業績を伸ばす王道、鉄則だと思います。

経営計画(書)は、会社の将来性、将来像を明らかにする手段なのです。

 社員の目線から考えれば、将来性のある会社に勤めているから、頑張っていれば自分の未来も安泰だと思います。やる気のある人ほど、そう思うでしょう。本音を言えば、誰しも先行きがハッキリしない会社などに居たくないものです。もしかすると、小さな会社が採用や離職に苦しむ理由のひとつは、ここにあるかもしれません。

  社員の前向きな気持ちを引き出し、彼等の力を活かすためにも、会社の目標、それをどのように達成していくのか、その方法を明らかにすべきでしょう。 

    経営計画(書)は、正にその内容を社内に示す具体的なツールになのです。

 

  (令和2年1月5日)          Ⓒ 公認会計士 井出事務所