経営計画書の「当社の概要」

 

 社外に発表する経営計画の場合、その冒頭の内容は通常「前年度の当社の概要」であることが多いものです。

ところが、毎年経営計画を作っていない会社にとって意外と記述することが難しいのが、この「当社の概要」という内容です。「当社の現状分析」「自社評価」と言い換えてよいかもしれません。売上や営業利益の増減といった数字の分析もさることながら、その背景にある会社の現状について、どのように書いて良いものか、経験のない方にとっては皆目、検討がつかないというのが本音かもしれません。「数字や結果の良しあし」だけでなく「どうして、こういう結果になったのか」結果に至る過程です。

 

改めて、一年を振り返ってみると、取引先からのクレームや社内で起きた小さなミス、トラブルなど記憶として残っていることは数多くあるかもしれません。しかしながら、改めて考えててみると、それらが、ビジネス的に「何が良くて、何処が拙かったのか。思う通りにいかなかったのか」と問われると、具体的に書き出すことは難しいものです。

「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、日々の仕事に流されていると、どうしても日々の仕事のやり方について考えることを忘れてしまいます。問題なく上手く行っていることもあれば、必ずしも、そうと言えないこともあるでしょう。「結果よければ全て良し」で済ませてはいけないこともあると思います。

皆それなりに頑張ったことはわかりますが、その努力の仕方について、反省すべきことはあっても、その具体的な事実、内容といわれると言葉にするのは難しいのではないでしょうか。

 

よく考えてみると、売上という会社の数字は毎日の仕事の最終結果に他なりません。そこで、経営計画を立てる際に注目すべきは「社内の日々の仕事のやり方・進め方について見直すべき点はないか」という視点です。

当社の現状分析、自社分析というと難しいことのように感じます。ある意味、それは会社を伸ばすための材料を見つけることに他なりません。「業績を上向きにするためには何をすれば良いのか」社内で取り組むべき改善点を整理して纏めることだと思います。営業を始めとして「もう少し何とかならないのか。もうちょっと注意してほしいこと」と思う現場の仕事のやり方や進め方を拾い出すことだと思います。見方を変えれば、経営の眼で見た現状の問題点。レベルアップが必要な仕事のやり方です。

 

以下は、「現状分析」についての記述の事例です。

 

・当社の営業は、御用聞き的な動き方が主流であり、ここから脱皮して

 いかなければならない。

・サンプル品の提供や工場見学会の開催など、見込み客とのコミュニ

 ケーション強化策を実施するような提案力に乏しい。

PJCTマネージャの(開発)工程管理能力に個人差がある。

 特に、単体テストや結合テストのような評価プロセスに対する意識の

 隔たりがある。これらの実施度合のバラツキが開発効率改善の壁に

 なっている。

 

このような現場の細かな問題点を洗い出して書き出してみる。そうすると、何となく当社の実情すなわち現場の実行力の有無なり過不足が見えてきます。大切なことは言葉にして表す。文書にすることです。何故ならば、そうすることで、社長個人の思いを会社全体の意識に変えて行くことができるからです。

「当社の現状分析」の意味をわかりやすく表すなら、この一年間を振り返って、自社の実力を確かめる。当社の経営力を点検した結果の報告書だと思えば良いでしょう。

 

ビジネスには時代の流れがあります。これまでのやり方で良いこともあれば、時代遅れの感が否めないこともあるでしょう。今までの流れで通用することもありますが、仕事のやり方を変えていかなければいけないこともあります。

現場の仕事のやり方には、今まで通りの一所懸命では通用しない。いつも通りの頑張りだけではどうにもならないことも沢山あります。やり方を変えなければ、うまくいかないこと。改めた方が望ましいことも多くあるでしょう。

その点に気付けば、会社として、新たに取り組むべきテーマが、必ず見つかります。そのテーマを目標とし、そこに「いつまでに達成する。成功させる」という達成期日を明らかにすれば、経営計画のベースになる骨組みが出来上がります。大切なことは、計画書の書き方の上手い下手というよりも、計画を作ることによって、一年に一度、会社の将来についてジックリと考える時間をつくることだと思います。

特に、金融機関に提出するような計画書の場合、内容が説得力のあるものでないと、今後のお付き合いの仕方にも影響が出てきます。自社の現状を経営がハッキリと自覚できているのか。彼らは経営的な視点の有無を見ています。

だからこそ、長所、短所を含めた当社の自己評価の内容を冷静な視点で明らかにすることが大切なのです。

  

(令和3429日)           © 公認会計士 井出事務所