考え抜くことが社長の仕事

  

 一口に“考える”といっても人によって、そのレベル・内容はマチマチです。それは経営者の考えについても当てはまることです。そこで、実際に、よく見かける“経営の考える状況”について書いてみました。

「何とかして少しでも業績を伸ばしたい。ちょっとでも良いから今よりも良い会社にしたい」そう願うのは全ての社長さんの想いだと思います。

そのために色々と考えて手を尽くしている。必死に頑張っている。

しかしながら、チャレンジしたことが現実には思い通りにならない。期待した成果が得られない。頑張りが何処か空回りしている。そう感じている方がほとんどではないでしょうか。

そこで、振り返っていただきたいことは、そのチャレンジが“どこまで考えてやったことか。考えたことを何処までやりきっているか”という視点です。

よく考えたつもりでも、場当たり的に思いついたことではないか。実際にやっていることが、やったつもりのレベルで終わっていないか。自身の考えや努力が自己満足になっていないか。そういう反省です。

何故かと言うと、チャレンジしたことが上手くいかないケースは、お客様や第三者の目線からすると「何のために」という狙いが相手に伝わっていないからです。先方からすると、今いちその意味が良くわからないのです。

頑張っていることはわかるが、その目的や狙いがハッキリと伝わっていません。だから、期待したような成果には繋がらないのです。残念ですが、そういった光景を数多く見かけます。

 

ある惣菜食品のメーカーの社長さんは「どうすれば売上が伸びるのか。朝から晩まで四六時中いつも考えている」と言います。では「その具体的な方策は、どのような内容でしょうか」とお尋ねすると「今の営業の仕事のやり方を変えること。そのためには営業部門の改革が欠かせない」とのお答えでした。

その背景には、従来のルートセールス型営業ではこの先の成長は期待できない。既に行き詰っている。だから、新規のできる提案型の営業に変えていかなければ生き残れない。そういった強い思いがありました。

そこで、もう一歩突っ込んで「もう少し、その営業改革の具体的な内容について教えてください」と訊くと「全員が堤案営業をできるようにすることです」と話してくれました。

 さらに「では、どのようにして営業のメンバー全員が提案営業を出来るようにするのですか」としつこく突っ込むと言葉に詰まってしまいました。

「いつも考えている。ジックリと良く考えた」と言っても、その考え()の中身が基本的で当たり前レベルの質問に詰まるようでは「詰めが甘い。考えが浅い」といわれても仕方がありません。

 無論、社内では、社長の発言にここまで根掘り葉掘り細かく突っ込む人はいないでしょう。だから、トップは、自分の考えが、このレベルでも社の内外に通用すると錯覚してしまうのです。

 

 しかしながら、現実はそう甘くありません。トップの考えがこのような状況では、この会社の営業改革、即ち提案営業の導入は上手く行くはずもありません。多くの中小企業で、提案営業が導入できないのは、その手本となる具体的な仕事のやり方が、現場でわからないからです。

 彼らからすると、今まで、やったことのない方法、これまでとは全く違う仕事のやり方です。だから、できるだけ事細かに、新しい仕事(営業)のやり方からその進め方まで指示してもらわないと実行できないのです。

そう考えると、この社長さんの今の考えは、本人は良く考えたつもりでも「詰めの甘い考え」にしか過ぎません。「提案営業」というキーワードだけが頭の中で空回りして、具体的な仕事のやり方のレベルにまで考えが踏み込んでいないからです。

そこに、気付けないから「それは、営業部長の仕事だろう」もしくは「現場の皆で考えてやってください」と下に振ってしまうのです。通常、その結果は「三年たっても何も変わっていない」のが多くの現実です。

 

もし、本気でこの社長さんが営業改革を成功させようと思うなら「どうすれば、提案営業が出来るようになるのか」ありとあらゆる方法を経営が考え抜くことが求められます。その目指すべき具体的な仕事の内容、そのやり方から現場への導入法の細かな点まで経営サイドで明らかにするべきです。「見学会開催等による見込み客の集客方法」「提案内容のアイデアの集め方やまとめ方」「提案に使う言葉の選び方」「「企画書の書き方の良し悪し」とか「プレゼンの仕方の巧拙」「伝える際の表現法」といった提案営業の手法のひとつひとつの作業レベルの内容や方法まで詰めておくべきです。

営業の仕事ではありませんが、この他にも提案営業の材料になる「商品開発」も定期的に実施しなければならないでしょう。

 

会社を成長させるために必要な方策を考え抜くこと。それが経営の仕事です。結果を出すトップは「ここまで考えておけば何とかなる。これくらい対策を練っておけば大丈夫」というレベルを知っています。 

 

( 平成28910日)        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:  今、一度経営の仕事について考える

トップのハッキリしない考えは伝わらない

「戦略のない会社」に、戦略のわかる幹部社員は育たない