自部署の課題の描き方(営業部)

 

「自部署の課題を明らかにする。目指すべき具体的な仕事の内容、そのやり方・進め方をハッキリと示す」それこそが、現場リーダーである管理者の役割です。しかしながら、一口に「自部署の課題を明確にする」といっても、そう簡単なことではありません。

何故かというと、現場のメンバーには、これまでの仕事のやり方、営業スタイルが沁みついています。彼らは何の疑問も持たず仕事をしているからです。特に、仕事のやり方が現場任せ・担当者任せになっているような会社では難しい問題です。また、社歴のあるベテラン社員の多い会社ほど、ハードルの高い難題でしょう。

 

紳士向けのアパレル業を営むD社を経営する坂本さんは上期の数字の落ち込みに危機感を覚え、営業部長とキーマンを集め「今の時代に合った、強い営業、優れた営業とはどのような営業手法なのか。また、どのようにして強い営業部隊を創れば良いのか」話し合いの場を持ちました。しかしながら、これまでの仕事のやり方に慣れ親しんだ営業現場のメンバーに、その答えを訊いてもハッキリとした話や具体的な解決策はなかなか出てきません。そこで、自ら足を運んで情報を集めなければいけないと思い、主だった取引先の話を聴くために営業に同行することにしました。社長がわざわざ出向いた効果もあってか、そこでは担当バイヤーの上司の声を聴くことができました。

 

顧客の大方の意見は「今は商品のブランド力、知名度というよりも、商品そのもののセンスやクォリティー(質)が問われる傾向にシフトしている。また、バイヤーとしては、これまでの取引関係云々よりも、提案力の優劣といったセールスマンのレベルに関心がある」とのことでした。

その中でも、付き合いの長い取引先の幹部社員が漏らしてくれた本音が心に残りました。仕入るサイドとしては、まず確実に売れる商品を提案して欲しい。実際、それは難しいとしても、少なくとも「こんな新商品が出てきました。ライバル店では、こんな商品を取り扱っています。他社で始めた新しい展示の仕方、販促のやり方。当社の売れ筋商品のランキングはこんな感じです」といった参考情報を持ってきて欲しい。

そういう情報通の営業でないと耳を貸す気にはなれないとのことでした。

 

改めて、古いタイプの営業では、最早全く通用しない。注文伺い型の営業スタイルでは、もう数字は取れないとの現実に直面した思いがしました。また、このような顧客の声、現場の生情報が、毎月の営業会議の場で挙がってこないことにため息を漏らしました。

その一方、今の営業には、まず取引先の役に立つビジネス情報・商品情報を発信することが求められている。当社もこのような情報サービスを前提にした営業スタイル、ビジネス情報をツールにした営業手法に変えて行かなければいけないと痛感しました。

 

そして、今更ながら気付いたことは、現状の営業体質から抜け出すには「上が動かなければ下は変われないこと」もうひとつは「取引先の視点で現状の仕事(営業)のやり方を見直すこと」ということでした。 

つまり「自部署の課題を明らかにする」ということは、現場よりも一つ高い目線であるべき姿の仕事のやり方を考えることに他なりません。

営業に限らず「自部署の課題を明確にする」には、発想の材料となる情報が必要です。その時に、忘れてならないことは、D社の坂本さんのようにトップ自らが、客観的な視点でビジネスの方向性を確かめること。

「課題のイメージ」のたたき台となる具体的な成功事例、現場レベルの生情報を、できるだけ多く集めることが欠かせません。

自部署の課題を描くポイントは「第三者的な見方、客観的な視点、具体的な情報」ではないでしょうか。

 

( 令和3215日 )         ©公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:考え抜くことが社長の仕事

       :上司の言葉が職場を変える(提案営業の問題点)