SWOT分析について( その2 機会と脅威の事例 )

 

経営環境の現状、この先のビジネスの見通しをチャンス(機会)と考えるのか、ピンチ、リスク(脅威)と思うのか。床屋さん(理容業)を例にして考えてみましょう。当事務所では十年程前に、女性向けのヘアサロン会社をお手伝いさせていただいたことがありますが、その時点でその会社の男性客比率は3割くらいありました。

 その会社では、当時はまだ比較的珍しかった待ち時間を利用したネイル・サービスやエステを始めとするスパ・サービスの導入など、今では当たり前になったサービスを先取りして成長していきました。

 この会社の社長(創業者)は、その頃から美容業も今で言うワンストップ・サービス型の商売にしていかないと、ヘアサロンの差別化は難しいと考えていたようです。「お待たせする」というクレームが多く発生する待ち時間を逆に利用して、ネイルやエステ、マッサージのような新サービスに手を広げていきました。

 

 その一方、理容業の方はというと、旧態依然とした床屋さんのままのお店が多いように思います。彼らの多くが、客足が落ちた。ヘアサロンや格安のチェーン店に客を取られていると嘆いています。

ほとんどのお店が、このままだと「お先真っ暗」と思っています。

  しかしながら夜は遅くても夜8時で閉店するような現状の営業時間のシステムでは、普通に仕事をしている人は平日には行けません。 そこで、どうして営業時間を変えられないのかと、私共がよく行く床屋さんで聞いてみると、業界団体のルールで仕方がないとの答えが返ってきます。このような業界のルールや慣わし、しきたりみたいなことは、自分で自分の首を絞めるようなものです。

お洒落に敏感な客層にとって、ヘアースタイルはとても大切な自己アピールの手段です。彼らは髪が伸びて鬱陶しいから散髪に行くのではありません。自分を表現するために店に足を運ぶのです。ですから彼らはスタイリッシュなカット、スタイリングの提案ができないお店には行きません。最早、従来のままの散髪レベルのカット技術や調髪技術では通用しないのです。

 

お客様の髪型へのスタイル観や生活時間帯が変っているにもかかわらず、斬新な(ヘアー)スタイルを提案するとか、マッサージやリラクシゼーションのような新たしいサービスを導入する。お客様のために利用しやすい時間帯に営業時間を変更すると言うような流れは、床屋さんの業界からは全く感じられません。

このことからもわかるように、従来の仕事のやり方や古い考え方にしがみついていると、商売としての対処の仕方を誤ってしまいます。いつまでたっても散髪屋さんでしかないからお客様は床屋さんには行かなくなるのです。お客様あっての商売、ビジネスです。「このままでも頑張ってやっていれば何とかなる。今のやり方のままでも通用する」と考えは禁物です。

時代の流れ、お客様の視点に合わせて早く頭を切り替えないと、ジリ貧、先細りになるだけです。商売そのものが成り立たなくなってしまいます。同じような事例が、他の業種、業界のビジネスにも沢山あるのではないでしょうか。

 

ここ5年間で変ったことは、スマホの普及とグーグルの検索機能の進化です。本当に「何でも選べる時代」「知りたいことを簡単に探せる世の中」になりました。その影響もあってか、これまでとは異なる生活習慣を持つ人や新しいサービスを求めている人がドンドン増えています。

刻一刻と世の中は動いています。お客様の求める商品や欲しているサービスは五年前とは違うのです。

ビジネスにとって重要なことは「今、お客様が求める要望」です。「顧客のリアルな欲求」という具体的なニーズです。その事実は一つしかないと思います。

今朝、テレビを見ていて驚きましたが「ペットの介護ビジネス」が伸びているようです。念のため、もう一度、繰り返しますが、人ではなく、高齢化した犬や猫の「ペットの介護」です。このように、益々世の中は多様化しています。今では考えられなかったようなことがビジネスになる時代なのです。

 

 今、直面している現実をどう捉えるか。その人(経営者)の受け止め方次第で、考え方が違ってきます。現在の状況を、ネガティブに捉えれば、これまでにないピンチやリスクのような「脅威」と思う人もいます。反対に、前向きに発想できれば、十年に一度の好機、絶好のチャンス、「機会」と思う人もいるでしょう。

 同じこと、ひとつの事実であっても、その見方によって、受け止め方が180度異なります。

「備えあれば憂いなし」と言う言葉がありますが、その意味を反対に捉えると「備えが無いと憂いあり」になります。今の状況に対し「何をどう変えていけば良いのか。どうすれば上手くいくのか」それがわからないから「脅威」に感じるのです。「どうにもならならい」と思うのは現状に対応できないからです。お客様の要望に対処できないから「このままでは拙い。将来に向けて良い方向に進んでいない」と思うのでしょう。

逆に、今の現実を想定して、かねてから準備してきた人は、現状をチャンスと思うはずです。こうすれば上手くいくという解決策がわかっていれば、ピンチこそチャンスになるのです。

 

 戦略発想のベースになるのは時の流れにあわせて、頭を切り替える」ことです。そして「先を読んで先手を打つ」ことだと思います。ある日本料理店のご主人は「定期的に食べ歩きをしていないと料理人は時代遅れになる」と語っていました。正にその言葉こそ(経営)戦略に合致するものではないでしょうか。

「時代に合った商売」に変えていく。こういうことをやってみれば可能性が広がるかもしれないという「新しい商売のやり方(ビジネスモデル)」を見つけること。それが、経営の仕事だと思います。

 

( 平成269月4日 )       ©公認会計士 井出事務所

 

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