営業マンに求められる「経営感覚」

 

大手スーパーのカリスマ経営者の退陣、液晶メーカーの身売り話など、相変わらず、ビジネスの話題には事欠きません。では、それらのビジネス情報を営業マンが、どれくらい営業トークに活かせているかというと、どうしても?マークがついてしまいます。

 営業の仕事には雑談能力の優劣がモノを言います。数字の取れる営業は、訪問先の担当者がどのような情報に関心が高いか、そこを見抜き、すかさず、その話を営業トークに入れています。

 営業は誰しも、ある程度のキャリアを積むと、この人には、この手の話を振っておけばうまく会話が進む。この人には、その類の話題をしていれば間が持つ、といったトークのパターン、コミュニュケーションの得意ネタを身につけるものです。野球やサッカーなどのスポーツネタが得意な人もいれば、釣りや旅行のような趣味のネタが上手い人もいるでしょう。無論、ライバル会社の情報・業界他社の動向や売れ筋情報など「業界通」と呼ばれる営業もいます。いずれにしても、営業は、そうやって先方の心を掴むコミュニュケーション術を学びます。ある意味、その雑談のテーマ、話の内容、話題こそ、営業マンの力量を表していると言えるでしょう。その人の営業センスといっても良いかもしれません。

 

 ところが、会社相手の営業では、話の内容もそれなりのレベルが求められます。同じ雑談といっても、ただの世間話や趣味レベルの話題だけでは話が全く通じません。とりわけ、向こうが大企業の管理者の方だったり、規模はそれほどではなくとも経営層の人が相手ならなおさらのことです。

 先方が参考になるビジネス情報や向こうの耳に止まるような話ができなければ、こちらの話を進めていくことは難しいでしょう。だから、なかなか話の本題に入ることが出来ないのです。

 忙しい人は、やってきた営業の自分勝手な話を聞く暇は無いし、そんな自己都合の話を聞く耳は持っていないのです。訪問先の相手は、何か役に立つ情報参考になる面白い話が聞けると思うから会ってくれるのです。そのことを忘れてはいけません。

 

このコラムの冒頭に書いた、大手スーパーのカリスマ経営者の退任劇もひとつの良い例でしょう。その事実は「これまでのス―パーの経営手法(安売り商法)の限界を象徴するものだ」という人もいます。

 この会社も、業態的に言えば、スーパーだけの経営では採算を取るのは極めて困難な状況です。それは、スーパーとコンビニの利益率の差を見れば明らかなことです。売上では、スーパーはコンビニよりも7000億円も上回っていますが、本業の儲けである営業利益率が1%にも達していません。

一方、それが10%を超えるコンビニでは、将来性という観点からはビジネス上での大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。

 このように、営業トークのひとつの鍵になるのは「経営感覚」のある話ができることです。経営の目線で、他社の「成功の要因は何処にあったのか」逆に「躓いた原因は何か」という事を、筋道立てて話せる力を身につけたいものです。それが成功事例であれ失敗したことであれ、相手が成る程と納得するような雰囲気を創ることが、向こうの信頼感を高めるからです。 

 

上記のような数字の話、戦略の話を含め、これからの営業が学ぶべきことは“経営感覚”だと思います。特に、生産財メーカーやシステム提案をするソフト会社のような受注業の新規営業には欠かせない営業センスです。

その有無の違いは、とりわけ向こうのキーマンとの折衝時に出ます。

成約の決定権に関わる人が知りたいことは“業務効率の改善、採算性の向上、コストダウン”といった会社を成長させるためのインパクトです。

一言で言うと「こういうことが出来るようになる。仕事のやり方こういう風に変わる」といったその効果に他なりません。そのポイントを絞り込んで、簡潔明瞭に伝えて欲しい。数値やデータを出来るだけ活用して、できるだけ具体的にわかりやすく教えて欲しいのです。

つまり、彼らが営業のアプローチに求めることは「経営判断と言う視点からの具体性であり、そのわかり易さ」です。そこが、トップの発想や考え方に通じることです。クロージングに向けて、大切なことは、決して細かな製品の機能やサービスの特徴ではありません。

商談の決め手になるのは、このような先方の経営者の感覚で提案することだと思います。そのためには、営業がもっとトップの思考法や発想法を学ぶべきです。相手の経営の立場になって考えることが欠かせません

 

( 平成28425日 )       © 公認会計士 井出 事務所

 

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