営業幹部に求められる「利益管理」その2 値引対策

営業幹部に求められる「利益管理」には、二つの意味があります。一つは、どのようにして、取引先からの価格交渉を乗り切るのか「取引先からの値下要求」対策です。

もう一つは、どういうアプローチをすれば利幅の取れる商品を購入いただけるのか。利幅の取れる商品をしっかりと売り込む営業戦略です。自社の利益(商品)構成を考えた営業戦略と言っても良いでしょう。

「採算性向上対策」として、どちらも営業が取り組まなければならない重要なテーマです。

 

まず最初に「取引先に対する値下」対策について検討してみたいと思います。多くの中小企業では、取引先からの値下げ要求に対して「仕方がないから」と不用意にそれを受け入れてしまう会社が目に付きます。取引先に、ちょっと渋られたり、強く言われると、直ぐに腰が引けてしまう担当がいます。安易にこちらから値引きを提案して仕事を取ろうとする営業もいるかもしれません。現場の担当者は「他社の値下攻勢が厳しく当社も下げなければ対抗できない。売上を落としてしまう」という尤もらしい理由を口にします。

しかしながら、上司はその言葉を鵜呑みしてはいけません。

確かに、状況に応じて一定レベルの値下げは必要かもしれません。しかしながら、客先から値引き要求をされても仕方ないような状況を当社自体が招いていないか、現場の事実関係を十分に確かめることが重要です。

そこで、当事務所でお手伝いさせていただいた鋼材商社の事例を元にして「値引き要請を受ける会社」の特徴について、まとめてみました。値引き要請の現状分析と言っても良いでしょう。

1.担当者によって粗利率が異なる

 この会社では、8人の営業マンがおり、そのうちの2人が社の平均粗利率を下回っていました。つまり、この2人が社の平均を押し下げていたのです。他の担当者と比べて4%前後の差がありました。一見、粗利率や月額で見ると大きな差ではないと錯覚してしまいますが、この2人と他の営業の粗利率の差を試算してみると、年間で400万円近くの利益をこの会社は失っていました。 

 

2.同業他社の出値(価格)をよく把握していない。

 従来、鋼材は市況品ですから、そのときの状況によって値段が違います。

他社の動きを良く摑んでいないと、市況の先取りのよるものか、在庫処分による出値なのか、判断できず、不要な値引きを真に受けてしまいます。

ですから、少なくとも週に一度は価格情報を社内で共有する仕組みがないと、価格政策が徹底できません。ところが、この会社では、担当者が個々に価格情報を集めており、部署内で情報交換する仕組みがありませんでした。

一部の耳の速い担当者が貴重な情報を握り潰してしまうこともあり、そのために社全体で見たときに何度も大きな不利益を蒙っていました。

 

3.営業としての基本的な対応力が弱い

 この会社は、取引先から兼ねてより見積や納期等の問い合わせの回答が遅い。納期対応の融通性が良くない。クレーム対応が遅いなどの声が上がっており、社としての対応力の弱さが目立っていました。

 また、この会社は、原材料としての鋼材を販売するだけでなく、鋼材の切削や研磨の加工業務を請け負っていました。ところが、メーカーや外注先との連絡や確認等のコミュニケーションが悪く、顧客の要求内容が正確に伝わらないことがありました。その結果、切削や研磨の加工不良が年間数回発生していました。


この鋼材商社のように、担当者主導の営業体制になっていると、どうしても粗利率のバラツキや低下が発生してしまいます。加えて、営業としての対応に問題があるようでは、お客様の不満を積らせてしまいます。仕事に対する認識の甘さが値引き要求に化けて出てきていることに担当者自身が気付いていません。また、このような状況を、上司が察知できなかったり、見過ごしているようでは困ったものです。

そもそも、価格調整の話は、通常、小口の取引先から出てくるものではありません。ある程度、まとまった数字を頂戴している会社だからこそ持ちかけられる話です。どのような業界であっても、常に得意先は当社の実力をシビアに評価しています。厳しい見方をすれば足元を見られている」からと言えるでしょう。

 

ともすると、値引問題は担当者の「値段交渉術の巧拙」の問題と捉えられがちです。しかしながら、その本質は「社としての対応の仕方」にあるように思います。価格に関わる問題は、彼らの能力、責任問題と捉えても意味がありません。無用な値下げを防ぐには、社の方針を現場に徹底することが欠かせません。

最低限の値引き対策のひとつとして、上司が、直接、取引先の担当者と話す機会を設けること方法があります。一定レベルを超える要求に対しては「私の一存ではどうにもなりません。その件は、上司とちょっと相談させてください」と答えるように指示する。そうすれば、上長自身が先方の心積もりや本音を探ることもできます。そこで、幾ばくかの交渉力を発揮することが上司の存在価値でもあります。また、やっかいな交渉事の多い取引先には商談のポイントで同行営業することも一つの方策です。

昨今はただ従来のやり方、当社のやり方で頑張っているだけでは通用しません。客先の思惑を読んで動ける営業にならないと、値引き対策を含めた利益管理の実行は難しいでしょう。

 

価格競争の実態をよく見てみると、全ての会社が安売り商法をしている訳ではありません。価格戦略を、販促を仕掛けるタイミングや商品によって巧く使いわけている会社があります。「多少高くてもお宅から買う」といわれるようなサービス体制を整えて戦っている会社もあります。一方、価格競争に巻き込まれて、値下げという手段しかなくなっている処もあります。このように、他社の価格攻勢に、会社として対抗策を打ち出せる処と、そうでない会社の「力の差」が明らかになってきました。

これから先は、組織的な営業力が不足しているとライバルに太刀打ちできません。値下げ対策も「利益管理」の一環として「社としての具体策」を講じるべきことだと思います。

 

( 平成2684日 )                              ©公認会計士井出事務所    

 

関連項目 ►  営業幹部に求められる「利益管理」

戦略を数字で語れる営業幹部