営業幹部に求められる「利益管理」その3 高額品の売り込み

「採算性向上対策」として、営業幹部が取り組まなければならないもうひとつの方策は「利幅の取れる商品をしっかりと売り込むこと」です。

決して高額品を売りつけるという意味ではありません。その商品の「適正な価値」をお客様にシッカリと理解していただくことが大切です。 

良い製品には良いなりの理由があります。価格には替えられない価値があります。残念なことに、その良さを自信を持ってお勧めできる営業が少ないのも事実だと思います。

「何でも安ければ良い」という発想がある一方「安かろう悪かろうでは困る」と言う発想もあります。

「使い捨てで良い」というお客様もいれば「良いモノを長く大切に使いたい」と思うお客様もいます。

 同じジャンルの商品であっても、お金というフィルターがかかってしまうと別の商品になってしまいます。あらゆる業界で高額品と廉価品の二極化が進んでいます。要は、ひとつの商品に二通りのお客様がいて、二つの市場があるのです。両者は求めているものが違うと理解すべきです。

見方を替えれば、これから先は、ふた通りのアプローチができる営業にならないと数字を取るのは難しいと思います。営業をする際に、気を付けるべきは「低価格品を多く購入される方は高級品は一切買わない」と決めつけないことです。実際、営業の現場では、このような錯覚により、おいしい所を他社にすくわれているケースを見かけます。

 

医療用リストバンドを主力商品にしているR社でも、高額品(高性能品)しか使用しない病院と廉価品しか購入しないお客様の二極化が進んでいます。 そこで対策会議を開いた時に出た意見が「勝手にこちらが低価格品しか購入しないと言う先入観を持って営業していないか」というものです。高級品は高すぎるとして検討対象にすらして貰えないことが多いのも事実です。しかし、だからといって当初から低額品しか提案しないと、当社がそのような製品しか扱っていない会社と思われてしまいます。この様なアプローチをしている限りは、高性能品、高品質の製品シェアを高めることは厳しいでしょう。

だから、先方が購入するしないは別にして、必ず高額品と低額品を一緒に提案することで「高性能品の価値をわかっていただく」という戦略を取ることにし、現場に徹底することにしました。

 その一方、高級品の「品質、性能、使い勝手」を理解していただくための試用キャンペーンや説明会を定期的に社として実施していくことにしました。

医師や看護師さん達に、実際に2週間リストバンドをつけていただくことで、低額品と高額品の品質、性能、使い勝手の違いを体験していただき、その感想をアンケートにまとめました。

低額品は、バンドの素材がちょっと硬く、手首に巻いたときに違和感、異物感があります。洗面や手洗いを含め、常時、身体に触れているので、名前等の印字が直ぐに擦れて字が読みにくくなってしまいます。

また、長く使用しているとバンドに亀裂が入ったり、留め穴が緩むなど耐久性に問題があり交換しなければならないということもあります。入院期間が、一週間未満の短期の入院患者を多い病院ではあまり問題はありませんが、それを超える入院患者の多い病院では、結局多少高くても長持ちする高性能品の方が使い勝手が良いことに気付いていただけるようになりました。

同じ使い捨てバンドですが、根本的な使い途が違うからです。

このような経験を通して、試用キャンペーン期間でなくとも、一度お試しいただければ、若干ながらでも高額品への切り替えが可能であることに営業が気付きました。売ることよりも「如何にお試しいただくか」ということに徹する。そこに、ようやく頭が回るようになりました。

また、アンケート結果は、そのまま他の病院への販促ツールとして活用しました。加えて、その詳しい内容を当社製品が選ばれる理由としてHPでオープンにしました。社としても、営業の評価基準に「キャンペーン実施件数、回数」を加えて、このような営業の動きを全社的に後押ししました。

 

 

良いモノを理解していただくためには努力と手間がいります。その価値を認めていただく手法(アプローチ)が必要です。どのような製品にも、その製品ができたモノの成り立ち、お客様が求める品質があります。

「巻き心地の良さ、印字のクリアーさ、長持ちする耐久性」という高性能医療用リストバンドの特徴は、まさしく製品ニーズの成り立ちでもあります。その内容を、丁寧に説明して先方に納得していただくことが大切です。

例え、価格が高くてもコスト・パフォーマンスで見れば割安感がある製品も数多くあります。

 

いま時の営業は、このような「製品の価値を伝える」が仕事です。良いもの(製品)にしかない「品質、性能、使い勝手」の良さ、価値を受け止めていただく材料を見つける。先方の知りたい材料、求める情報を揃える。相手の感性をキャッチし、先方の琴線に触れるフレーズ、その言葉を拾うなど、伝え方の工夫を怠らないことが本当の仕事の中身です。

そこがわからないようでは、これから先の営業は仕事にならないでしょう。

足で稼ぐ時代はとうの昔に過ぎ去りました。廉価品はネットで探せば済むことです。営業の価値は、フェイス・トゥー・フェイスで、お客様の求める価値を伝えていくことだと思います。

 

*患者を取り違えて、他の患者さん向けの医療行為や投薬の過誤を防ぐためのリストバンド。患者さん個人を認識し、その人個人の医療情報が記録されている。新生児、乳用児、子供用、検査用と数々の用途がある。


( 平成26812日 )          ©公認会計士 井出事務所 

 

関連項目 ►  「商売熱心な会社」は情報発信を欠かさない

「お客様への想いをメッセージにして伝える」

お客様の目線と経営戦略

「当たり前のことに気付く」難しさ

戦略を数字で語れる営業幹部

営業幹部に求められる「利益管理」