任せっぱなしでは幹部社員は育たない

経営の右腕になる現場リーダーがいない。社長の仕事をサポートできる幹部社員がいない。そのような会社は、社長自ら、そういう会社の体制、環境を作っていることを前回のコラムで指摘させていただきました。

その特徴として3つの行動パターンを挙げました。今回は、その二つ目のタイプ。社長さんが、下の管理者や現場に「何でも任せっぱなし」にしてしまうパターンです。任せるというよりも、その実「丸投げ。何しない。放っぽらかし」と言った方が良いかもしれません。 

比較的社歴が長く、業界内では中堅処で、数字にある程度の安定性のある中小企業の経営者に良く見られる傾向です。往々にして、同族会社の代目、

代目の方にありがちなタイプです。

先代多くの場合、創業経営者)が優秀な方で、営業や生産(工場)といった各部署の管理体制をシッカリ整えてからリタイアしている。ビジネスの基盤となる優良取引先も多い。だから、毎月の売上管理だけをシッカリやっていれば安定的な利益を確保できる。後継者の立場からすると経営者として当面やることが見当たらない。現状維持のやり方でやっていれば、経営上大きな問題は無いと勘違いしている社長さん達です。

「目指すもの(戦略)がある」「もっと良い会社にしよう」「先のことを読む」といったことが余り頭に無い経営者の方々とも言えます。

 彼らは、今のままで将来も安泰、大丈夫と錯覚しています。よく言えば「守りに徹した経営」かもしれません。しかし、現実のビジネスは、変化のスピードがますます速くなっています。そんな時代に、守るだけの経営では、会社の将来の安泰など極めて難しいことだと思います。

 会社が現状維持のままでは、各部署の仕事のやリ方も、これまで通り、3年前と何も変わりません。だから、現場の管理者や幹部社員の能力もいつまでたっても高まらないのです。

 そして、このタイプの社長さんの口癖が「皆で話し合って決めてください」というセリフです。

  

 ちょっとした社内業務にも、経営判断や意思決定が求められる「場」は思いの外、沢山あります。メーカーの例を挙げると、営業と工場のコミュニケーションが悪く、取引先からお叱りをいただくような状況があると思います。「現場責任者(管理者)からの脱皮」の事例で紹介した、出雲工業もそんな会社のひとつでした。この種の問題解決には、営業・工場共に、今までの仕事のやり方を変えなければなりません。

ところが、営業の都合で、工場サイドの仕事のやり方を変えてもらうことなど一方的にはできません。営業部長にそんな権限はないからです。

無論、営業部長と工場長の当事者同士の話し合いで決められることでもありません。お互いの言い分が対立して、やり方を変えるほうが「何故、自分たちが変えなければいけないのか」と反発するからです。

しかし、現場に任せっぱなしにしてしまう経営者は、こんな当たり前のことがわかりません。本人は「先代の頃から経営に関わっている。現場のことはよくわかっている」と思っていますが、実際は現場の仕事に深く関わった経験が少なく、一通りのことが一応頭に入っているレベルでしかありません。 要は、会社の仕事の全体像や組織の基本的な動かし方がシッカリと頭に入っていないのです。だから、現場の責任者の立場(権限)で、決められる事と決められないことがあることがわかりません。

つまり「皆で話し合って決めてください」と言う言葉の裏には、肝心な時に「求められる判断 (意思決定、決断)」や「具体的な指示ができない」という事実があります。現場に任せるタイプの経営は、会社の仕切り、仕事の仕切りができない経営不在の傾向があります。現場責任者や管理者からすると「任せて良いことと任せてはいけないことの違いがわからない」困った上長(社長)なのです。

 

上記の例以外にも、現実の仕事の場面では、上からの具体的な指示がないと動けないことが数多くあります。

 その一方で、よく「経営の視点で考えて動くことが大切」と言う言葉を口にする経営者がいます。

しかし、常識のあるお勤め人(組織人?企業人?)は、その言葉を真に受けることはしません。出過ぎたことをして後で叱られても不愉快な思いをするだけだからです。実際に、その仕事に関わる一切の権限を委譲された訳でもありません。彼らは、自身の役割や権限が明らかでないまま、勝手な動きをすると却って自分の立場を悪くすることを良くわかっています。

ですから、部長さんクラスの立場であっても、自分の権限を越えて動くようなことは絶対にしません。

その結果が、管理者クラスであっても「自分に、できることだけ、わかることだけ、最低限のことだけやっていれば良い」という発想でしか仕事をしなくなる状況です。

 

 今まで、できなかったことが出来るようになる。それを、成長と言います。つまり、チャレンジしようとしない人は成長しないのです。ある意味、会社人は上が責任を取ってくれるから安心して挑戦ができるのだと思います。

それがお勤め人の素直な発想です。もし、経営が「任せる」と言うのであるなら、その責任は経営が負うべきことを明らかにすべきではないでしょうか。 経営がその役割を明らかにしてハッキリとしたポジションを与えない限りは、その言葉通りに下は動きません。そうしないと、部下は決してチャレンジしようとしないでしょう。                                           - 次回に、続く -

 

( 平成271110日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:仕事を任せないと成長しない