報告書の作成を通して自覚を促す

 

  日報や週報、月報など社員に仕事の報告書の提出を求めている会社は多くあります。ところが、その内容を上手く活かせていないと思っている経営者の方は多いと思います。

 そういった会社の報告書の多くは、往々にして「今日は何々をしました。今週は何々をしました」といった、その日一日、今週一週間の結果報告だけで終わっています。例え、何かしらの不注意やミスが多少あっても、大抵そのことは書いてありません。手際の悪い仕事、効率の悪い仕事のやり方をしていても、その原因について振り返るような記述も見受けません。仕事に対する考えが足りなのでやりっ放しになっています。

 報告書の書き方が、このような状況では、仕事のノウハウやスキルを向上させることは難しいと思います。今のままでは、その部署の業務レベルは進歩しません。いつまでたっても同じようなことを繰り返すだけでしょう。

「日々の問題点を拾い、反省材料として活かす」という企業としての基本的な仕組みがないからです。

  日報であれ、週報であれ、そこに書かれた内容をジックリと読めば、 その人の実力が手に取るようにわかります。そこに書かれた 内容が、担当者の仕事に対する取り組み方をよく表しています。「何に注意をして仕事をしているか。先を見て動いているか」など、本人の頭の中が見えてきます。

 

人材マネジメントの観点から見た、報告書の意味は「部下指導のトレーニング・ツール」として活用することです。アルバイトやパートさんのような、ただの人手ではなく、会社の戦力になる社員にする。報告書の作成を通して、自身の仕事の良し悪しについて自覚を促し、仕事のできるビジネスマンに育てる。それこそが、報告書を書いてもうらう狙いです。

 とりわけ、自身の担当業務の基本が十分に身についていない人、担当期間は長いが、その仕事のレベルや内容がマダマダ半人前と思う人には有効なトレーニング方法だと思います。

 

 仕事のできる人の動き方を見ていると、自身の仕事の全体像やその流れ、手順、その際の注意事項といった基本的なことがシッカリと頭に入っています。そして、無意識のうちに「日々、スケジュール確認を欠かさずにやる。段取りを考えてから仕事をする」といった仕事のチェック・ポイントを実行しています。それは、彼らの頭の中に仕事のチェック・リストがあるからできることです。一方、仕事のレベルが半人前の人は、その点がマダマダ、アヤフヤです。周囲から見ると、時々肝心な点が漏れたり、抜けてしまいます。本人は、一所懸命に やっていると思っていても、同じようなミスや不注意を繰り返しています。結局、いつまでたっても“やってるつもり"のレベルでしかありません。それは、自身の仕事をする際の注意事項がシッカリと頭に入っていないからです。

    

 何処の会社でも、担当者のちょっとした不注意や良くありがちなミスを無くすことは、簡単なことのようで、現実にはそんなに容易いことではありません。上司が口頭で一方的に指示したり、注意しても、その効果には限界があります。自身の力だけで、一人前の仕事が出来るようになる人、成長できる人など極めて稀です。だからこそ、現状の「仕事のやり方の良し悪し」について振り返る。自身の手で反省材料を拾う習慣を身につける。そこから「自からミスや不手際を無くすようにする」という仕事のトレーニングが欠かせません。それには“自身の手で書くことで、仕事の内容・チェックポイントをシッカリと頭に入れる。自分の頭を働かせることによって注意力を高める” ことが大切です。ここに、報告書作成の大きな意味のひとつがあるべきです。

 例えば、学校で、生徒が勉強するのは、宿題が出たり、テストがあるからです。では「その内容は?」と言えば、その日に学校で「習ったことの復習」であり「明日、勉強することの予習」がその中身の基本だと思います。

 そうやって、繰り返し繰り返し基礎知識を学んで行く。それが「学習の基本的な考え方」に他なりません。

 よく考えてみると、仕事も勉強と同じことが言えます。復習とは仕事を終えた後に確認をし、不備な点をおさらいすることであり、予習は段取りを整えることや事前の確認だからです。

 社会人になれば学校のような宿題やテストが無いと思っている人が多いかも知れません。しかし、その実態は真逆です。毎日が宿題なり、テストの連続です。

 

日報や週報という報告書を提出する仕組みの意味は「日々の仕事から反省点を拾う。もっと正確に、今よりもスピーディーに、よりレベルの高い仕事が出来るようにする」といった人材育成の観点が、そこにあるべきです。仕事の学習効果を高めることを忘れてはならないと思います。

「報告書は面倒だ。煩わしい。手間ばかりかかって意味が無い」と思うのは、このような報告書本来の目的を見失っているからだと思います。

だから「ベテラン社員の仕事」が「熟練社員の仕事」にならないのです。

 

 ( 平成28821日 )      © 公認会計士 井出 事務所

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