決算説明会の資料を幹部社員研修の教材にする

  

数年前より、ある上場会社の上級管理職(部長職クラス)研修では、同業他社の「決算説明会の資料(パワーポイント・30シート強)」を教材にして、ケース・スタディーを実施しています。

   そのテーマは「経営戦略の内容をまとめ、その成果の良し悪しを決算書の数値で示すこと」です。

  まず、ケース・スタディーの資料として、これを用いる理由は、以下の4点が上げられます。

  

1.パワーポイントによる資料は、ストーリー性があり、前年度の振返り

  をわかりやすくまとめてある。

 

2.前年度の実績・一年間の経営成績を示す数値が、グラフ等によって

  ビジュアル化され、わかりやすい。

 

3.加えて、実績と計画値との差の内容について、原因分析がされている

  ことが多い。

 

4・今年度の数値計画(予算目標)とそれを達成するためのおおよその

  活動方針が示されている。

 

上場会社では、その会社の売上や営業利益、経常利益の増減といった一年間の経営成績である決算書の内容を公に説明しなければなりません。経営者自身が業績アップのために「何を考え、どう行動したのか。その成果の良し悪し」を明らかにする場が「決算説明会」であり、その際の資料が「決算説明会の資料」です。

  

経営数値、言い換えると決算書のデータは、決して偶然の結果ではありません。人の採用、新しい取引先との契約、設備投資など、現場が勝手に動いて良いことなど、そう多くはありません。会社のお金を動きには、必ず、上司や経営の決済が欠かせません。良くも悪くも会社の数字は、経営判断の結果としての客観的な事実に他なりません。要は、決算書は、経営者の意思決定、経営努力の良し悪しの成果を数字で表したものです。

   だからこそ、経営の意図である戦略を読み解くトレーニングの格好の材料だとも言えるのです。

  

実際に研修の場で、上記の四つの内容を頭の中で整理してまとめることは、簡単なことではありません。同じ業界のことなので、すんなりと上手くまとめられると思いますが、いざやってみると、思いの外、皆さん手こずります。

無論、この資料に書かれている会社の数字が増えているのか、減っているのか、それくらいのことは、上記の3・4の内容を良く読んでいけば、誰でも自ずと見てきます。

  しかしながら、何となくイメージ的に資料の内容は理解出来ても、自身の言葉で、その記述内容をまとめたり、具体的な数字で会社の動きを語ることは難しいものです。

  

まとめることを困難にする、そのひとつの理由が、経営の多角化による総花的な成長戦略です。大きな会社になると、いくつかのビジネス(事業)を営む多角化経営が進んでいます。ところが、全ての事業が順調にいっているとは限りません。業績が好調な事業分野の事業部もあれば、頭打ち感はあるがビジネスとしては堅調な事業部もあるでしょう。低迷状態が続いて、先行きが厳しい事業部もあるかもしれません。

  会社全体として数字が伸びているのか。さらに、ひとつひとつの事業が上手くいっているか。それとも各事業によって、かなりのデコボコがあるのか。これらの事業の数字の明細や構成比等、細かい処まで確かめて、会社の将来性を見極めていかなければなりません。

 

 そこで、受講生に求められるのが「経営の視点」です。企業経営には、必ずと言って良いほど、攻めの部分(事業分野)と守りの部分があります。いくつかのビジネスを営む中で現在の主力事業の安定性を確かめると共に、将来の軸となる事業分野()は、何処なのか。果たして、そのビジネスは伸びているのか。苦戦しているのか。最終的に「経営が望ましい方向に進んでいるのか。会社は好ましい状況にあるのか戦略の有無とその現状を「読み解けるかどうか」が研修のポイントなります。

  

そのためには、前期の実績が、どうしてこのような経営数値になったのか。その背景を自身で分析し、考えを掘り下げていくことが大切です。

そこに、どのような経営努力があったのか。数字の原因となる状況を推測することを忘れてはなりません。

 そこまで踏み込まなければ、この資料に書かれていることに「目を通した」とか、グループワークの意見交換が書いてある言葉を「読み上げる」ことで終わってしまいます。

  これら一連の企業行動について「経営の視点」から自身の考えをまとめ、自分の言葉で語れるようにする。ケース・スタディーを通して経営感覚を身につける。まさに、そこにこの研修の意味があります。

  

 ( 平成30928日 )       Ⓒ 公認会計士 井出事務所

 

 

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