経営計画や予算管理を通して幹部社員を育てる

社員数が20人を超える規模の会社になると、社長一人では日常業務の細かい所までの目が行き届くものではありません。そこから会社として、もう一つの成長、発展を目指すなら、社長の右腕となる幹部社員や経営マインドを持った管理者の存在が欠かせません。

経営の言われた通りに動くだけの管理者、指示されなければ動けない幹部社員しかいない会社では、さらなる業績アップや今後の成長は望めないでしょう。だからこそ、社の軸になれるような幹部社員の育成が必要なのです。

それには、彼らが経営の仕事、即ち会社を伸ばす仕事のやり方を学ぶ仕組みを創らなければなりません。彼ら自身が自分で考え動いて会社を伸ばす場を経営が用意すべきです

 

 経営がシッカリとしている会社は、経営経画は無論のこと、毎年営業等各部署の年度計画と予算を作成しています。その内容の是非、でき不出来はともかく、毎年やらなければならない仕事として、その仕事が動いていることが重要です。経営がイチイチ指示する事もなく、管理者全員が、当たり前のこととして、毎年、自部署の年度計画、予算を作成する。毎月の定例会議の資料や議事録、(営業)報告書を作ることと同じように、それらを当然やらなければならない仕事だと思ってやっている。即ち、それはそれらの仕事が「会社の仕組みとして動いている」ことを意味しています。

 

歯科技工士さんが使う入れ歯の素材やその製造器機のメーカーであるE社では、毎年年初に営業、製造、開発、総務経理の各部署の上長を集めて、社の年度目標と年度計画をまとめることになっています。

技術のスピードが速い業界なので、ビジネスの動きを客観的に見て、毎年この先一年間で取り組むべき具体的なテーマを出すことが会社として欠かせないからです。

社の年度計画を固める前に、彼らは自部署の年度目標と年間計画を発表しなければなりません。自部署の現状、仕事のやり方、進め方の良し悪しについて、管理者としての自分の考えをまとめることが、毎年の仕事になりました。そして、今年度の目標設定と共にそれを達成する年度計画書を社長に提出するのです。

年中行事というと、語弊がありますが、それがE社の中では当たり前の仕事になりました。それが、会社の仕組みになっているということだと思います。

ここまでなるのに、E社もスタートの3年間くらいは苦労しました。始めは、戦略の考え方や経営数値の意味など、わからないことばかりでした。年度計画と言うと難しいことのように思うかもしれません。

しかし「今、会社として何ができるのか。自部署としてできること、できないこと。ライバル会社に勝っていること。負けていること。この先通用すること、しないこと。今後、やっていかなければならないこと」現状の仕事の棚卸その改善策をまとめることと考えれば、特別難しいことではありません。

「習うより慣れろ」でやっているうちに、何となくできるようになるものです。後はこういう仕事のやり方に慣れてしまえば良いのです。だから「年度計画なんてわからない」と言って毛嫌いしない。止めないことが大切です。

毎年、続けることが何より肝心です。仕事がその人の能力を鍛えます。仕事がその人の成長を後押しします。この会社の管理者達も続けているうちに、自ずと戦略発想による仕事のやり方、進め方ができるようになりました。

 

E社のように毎年、幹部社員や管理者が自部署の年度計画を立て、それを軸にして仕事を進めるような会社の仕組みがあれば、彼らは会社の将来や現状の推移について関心を持たざるをえません。

すると、彼らは経営が一々指示しなくても、足元の環境の良し悪し、今後の見通しについて自ずと具体的な情報を集めるようになりました。そして、今まで以上に取引先の動きを含め周囲への目配りをするようになったのです。

営業は、重点顧客の管理を通じて、主力製品の将来性や他社製品の動きを読むようになりました。また、製造は営業からの情報を元に、品質管理に一段と緊張感を持つようになりました。開発も危機感を持ってスピードアップに拍車をかけるようになりました。

彼らは、自部署の年度計画の作成、実行を通して、経営者の発想を身につけたのです。社長からするとマダマダと思う甘い点を多く見かけます。

 とは言え、現場優先の発想から経営の目線で仕事を進められるようになったことは会社として大きな変化でした。彼らが、会社を伸ばすための戦略の基本的な考え方、業績管理の仕方を自然に覚えたからです。このように考えてみると、経営計画や部署ごとの年度計画、予算管理のような会社の仕組みは、幹部社員を育成するシステムでもあります。

 

( 平成26515日 )         ©公認会計士 井出事務所