議事録の作成 2 修正添削 

私共の事務所では、何社かの社外監査役のお手伝いをさせていただいています。その内の一社は「モニタリング委員会」と称し、三ケ月に一度、その会社の業務の実態監査、会計監査等について、それぞれ異なる外部の第三者が集まり、各々専門家の立場から情報や意見を交換し、総合的な見地から経営状況の健全性について報告書を経営者に提出しています。

 当然、そのモニタリング委員会の議事録が作成され、その後持ち回りで内容確認が為されます。一義的には、自身の発言内容が正しく記録されているか、的確に表現されているかがチェックポイントになります。議論の流れの中で、その内容が曖昧であったり、お互いに共通の理解をしなければならない内容が漏れていたり、微妙にブレていると思ったときは、その点をメンバー全員が相互に指摘し、修正するような仕組みになっています。

 このモニタリング委員会の記録文書(議事録)の役割を考えてみると、議事録のキーになる考え方は「皆で、お互いに確かめる」ことだと思います。

まず、議事録を読み返すことで、自身の発言内容を確認し、責任を持つことです。会議のメンバーとして、誤解の無いように皆がお互いに確かめておくべきこと、共有しなければならない情報、シッカリと頭に入れておくべき情報を確認することにあります。

 このように外部のしかも分野の違う第三者が集まる会議では、お互いの理解、共通認識が欠かせません。また、今後の話し合いの軸がブレないようにするためにも、議事録の確認と必要に応じて修正添削が必要になってきます。

しかし、よく考えてみると、社内や部署内の会議においても議事録を作成し、その内容をお互いに確かめること。必要に応じてその内容を修正添削することは当たり前のことだと思います。

 

議事録の修正、添削という作業は、幹部社員の育成に活用することもできます。拙稿、週報の活用その2で書いたように、経営の考えと彼らの考えの擦り合せをする良い機会です。

期待する幹部社員に、経営会議や戦略会議の書記を任せれば、その記述内容から経営と彼の目線の違いがわかります。

議事録の作成とその内容のフィードバックは、社長が伝えたいことやその考え方の理解を深める格好のトレーニングの場なのです。

 

以下は、以前当事務所でお手伝いさせていただいた、ある印刷会社の「業務改革プロジェクト」の議事録の修正添削の事例です。

職場の問題解決/解決策の見つけ方) 赤字部分を加筆。

 

 現状確認(第二回会合のまとめ)

① 目先の仕事最優先

⇒ 各マシンの癖があり、忙しい中で担当替えをすると、かえって

  作業効率が低下する

② 担当者の技術力の格差

⇒ 段取り作業の手際の良し悪しがある。各自が自分のやり方、マイ

  ペースでやっている。

*「外段取りでやるべきこと」と「内段取りでやるべきこと」の

    線引きが不明確である。

  そのために作業効率に差が出ている。部署としてその基準を

    明らかにすべき。

    刷りムラを減らすための調節ポイントが何点かある。その優先

     順位が各マシンで、微妙に異なる。それが、マシンの調整技術の

 レベルの差になっている。

      * 紙質、要求解像度、印刷部数等の差異によって回転スピード、圧力

   等を調整する必要がある。そのデータの有無、データの項目、

   数値等の内容が各自マチマチ。

* 現状、どういうマシン調整に関わるデータがあるのか。その有無。

 内容を確認する。

   * 紙質、刷数、仕上げレベルと印圧、回転スピード等の相関関係と

     マシンの調整内容、及び、その調整に要する所要時間に関わる

     データも必要

* マシン調整だけでなく、機掃・フィーダー・デリバリのような

  作業にも、ちょっとした注意事項がある。

   * 刷り始めた後も、マシンの状況が微妙に変化するので、抜き取り

  チェックを行う。刷数、紙質によって、その頻度が異なる。

⇒ これまでの技術教育、実務訓練が不備。

   * 作業工程ごとに「今後、何を、どのように改善するのか」その具体

     的な仕事の内容、やり方、進め方について、その際の注意事項を

     ハッキリさせることが不可欠。

この事例からもわかるように、話し合いの内容が細かくなると、書記をやっている人は、その部分を省いてしまうことがよくあります。その細かな内容の持つ意味がわからないからです。具体的な話、情報の大切さに気付けない。この議事録で言うと、マシン調整の細かな作業内容に関する記述は「現状認識」という、メンバー全員が共有すべき、担当者個々の情報内容です。この会合の大きなテーマであり、書き漏らしてはいけないことでした。次回の話し合いのたたき台になる、とても重要な内容だったのです。

 

全く同じようなことが経営会議の議事録でも多々起きます。社長がメンバーに、頭に入れておいて欲しい発言の内容が伝わっていません。理解しておくべき肝心な情報(状況)が記録として残っていません。

だからこそ、議事録の内容の修正、添削という仕事が欠かせないのです。

経営と幹部社員の間には、その理解の仕方に必ず温度差があります。

双方の立場の違いから目の前の経営問題の捉え方が必ずしも同じではないと思います。現場の長は現場のこと、目先の仕事を最優先します。一方、経営は会社全体のこと、経営数値のこと、先のことがいつも念頭にあります。

この温度差をそのままにしておいては、会社は良い方向に進みません。

 

それ故、お互いの理解を深め、その共通認識を高めるツールが必要になってきます。両者のベクトルをシッカリと合わせる手段を創るべきです。

経営の考え方、発想を身につける。経営の目線で考えられるように幹部社員を指導する。その手段として経営会議の議事録の作成とその内容のフィードバック、修正・添削という仕事は、格好の場だと思います。

この一連の仕事を彼らのトレーニングの場にすべきです。

 

 ( 平成2669日 )

 

► 関連項目: 議事録の作成週報の活用(その1)(その2)

改革を進める共通認識