議事録の作成 3  議事録に見る危機感の欠如

 もうひとつ議事録の修正添削の事例を紹介したいと思います。それは「週報の活用その1、その2」で紹介したことです。その1では、職場の長としての意識のあり方が週報の記述内容に如実に表れることを指摘しました。

 何もそれは週報に限ったことではありません。全ての会議の議事録、業務文書についても全く同じことが当てはまります。議事録の文章を一目見れば、書記をした人の会議の場での意識のあり方(メンバーとしての仕事への取り組み方や責任感)が良くわかります。

だからこそ、現場の責任者に求められる問題意識とその改善に向けての目的意識を高める手段として「週報を活用すべき」との提案をさせていただきました。会議の議事録作成、書記を担当する人にも同じような問題意識や目的意識を持っていただくことを期待します。それが、書記の役割であり責任であると思います。

 

 以下は、数年間にある会社で起きた製造事故に関わる緊急対策会議での議事録の修正添削の事例です。(赤字部分)

 ちなみに議事録の原本を作成したのは、製造部長兼副工場長の人です。

添削修正したのは、その直近に採用された経営企画部長の人です。

 

≪議事録の原本≫

 【 社長からの注意事項 】 改善提案/実施報告書・週報の内容について

① グレーム対策の内容が他人事のようで、誠意が伝わってこない。

② 時間短縮(スピードアップ)に気を取られ、基本的なチェックが甘く

  なっているのではないか。

③ 取引先から信頼を失ってしまった。工場長の責任でクレームがなくなる

  ように努める。

④ 意識改革が必要。

 

* この議事録に対する、経営企画部長のコメント

  社長からの注意事項というタイトルに比べて、議事録の内容に全く緊張感、危機感が感じられません。

 その大きな原因は、社長が現場の管理者に指示した具体的な内容がほとんど欠落しているからです。

 社長の剣幕に驚いて、頭の中がマッ白くなっていたのか、肝心なことが全て骨抜きになっています。これでは、議事録を取って全員に回覧しても全く意味は無いでしょう。書記の人が議事録を作成する狙いを十分に理解していないと、このような他人事のような書き方になってしまいます。 

 

≪経営企画部長が修正添削した議事録≫

【 社長からの厳重注意事項 】改善提案/実施報告書・週報の内容について

① グレーム対策の内容が他人事のようで、誠意が伝わらない。

・これまでも同じような注意を再三繰り返してきたにも関わらず、また同じような ミスが発生した。工場長を含めた組織的な管理体制の問題と考えるべきである。

・発生原因の究明、その事実関係が不明確である。今回の実質的な損害額を?百万円

 を考えれば「担当者の不注意」の一言のレベルで済む問題ではない。

・原因自体の究明がハッキリしていないので、今後の改善対策の内容も具体性に

 欠ける。

 ⅰ.本人の不注意、注意不足といった、抽象的な原因分析ではなく、もっと具体的

   に事故の発生原因の事実関係を明らかにすること。

   Ex:注意を怠った内容、当日の朝礼での注意確認の有無等

 ⅱ.朝礼時の注意事項の確認、注意事項一覧表のようなチェックリストの作成等、

ハッキリとした改善策を打ち出すべきである。

・工場として、具体的な管理体制の強化が必要である。それも含め、より具体的な

 事故の再発防止策を検討すべきである。

 

② 時間短縮に気を取られ、基本的なチェックが甘くなっているのではないか。

・社長より、工場長、各現場責任者に「毎朝、朝礼で、上司は何を指示し、どんな注意 をしているのか。ちなみに、今日は何を話したのか」との質問があった。

 工場長を含め全員「事故当日の指示内容、注意事項」について具体的な内容を

 回答できなかった。

 

③ 客から信頼を失ってしまった。工場長の責任でクレームがなくなるように  努める。

・取引停止に加えて損害賠償の請求もありうる。工場長以下、今回の事態の重要性 

   とその責任を十分に理解すべきである。

・工場長、上司、担当者は「事故報告書」と「始末書」を提出すること。

 

上長を含め工場全員の意識改革、行動改革が不可欠。

・工場長が、現場に張り付いて指導するなり、もっと現場に足を運ぶこと。

・具体的には、やるべき仕事の内容、注事事項の理解を深める必要がある。(徹底する)

 そのためには、部下とコミュニケーションをとる頻度を増やす。

・仕事のやり方、進め方やその際の注意事項について、現場内で話し合う場を設ける

 ことが大切。

 

⑤ 上司が、朝礼で、部下の言葉(今日の仕事の注意事項)を引き出すような質問をし、  仕事上の注意事項がシッカリと頭に入っているか、日々確認することが大切。

 最初は、社長も議事録の意味をよく理解されていなかったようです。

しかし、修正添削された議事録を見て、成程と納得しました。「当社は、何度言っても徹底できない」その理由がわかった。

 指示内容が言い放しになっている。注意事項が現場に全く伝わっていないということに、ようやく気付きました。

その後、この会社の製造現場では、この議事録を改善活動のチェックリストにして「やった、やらない」の確認「できている、出来ていない」の判断をすることにしました。また、暫くたってから、各工程の機械操作に関わる細かな注意事項を取りまとめ、写真付きの作業マニュアルを作成しました。

 

 この会社のように会議の議事録がひとつの発端となって、もっと細かい所まで注意して仕事をするように徹底することもできます。

この事例の場合は、結果として、この議事録が今後の注意事項や指示内容の覚書みたいな役割を果たしました。

 ですから、たかが議事録と侮らずに「少しでも会社がよい良い方向に進むように」と強い気持を持って文書を書いて欲しいものです。

 

 ( 平成26615日 )

 

 

► 関連項目: 議事録の作成週報の活用(その1)(その2)

改革を進める共通認識