幹部社員の育て方 ( 議事録の作成 )


コンサルティングで戦略策定や業務改革のプロジェクトがスタートすると、当事務所ではその会社のキーマンに打ち合わせの内容をまとめていただいています。要は、その会議の議事録の作成をお願いしています。

 何気ないことのようですが、実は議事録は書記役の人の能力が良くわかる仕組みです。書き取った議論の内容、文書に、その力量が出てくるからです。

議事録を作ることは、他人の話を正確に聴き取る力、発言した人が口にした言葉を頭に入れる力、その内容をシッカリと理解する力、その内容を的確にまとめる力、わかりやすい文章にして伝える力など、実は、かなり頭を使う仕事です。また創意が求められる仕事でもあります。

打ち合わせの場で、議事録を取ってくださいとお願いすると、よく「私は苦手だから」と逃げる人がいます。それは、ある意味自身を良くわかっている人の言葉です。その人は、話の流れを捉まえる、全体の状況を掴む、話の内容をまとめる、書き取るのが苦手と言っているのです。

しかし、見方を変えればそれらの力をトレーニングする格好の場とも言えます。他者の話を良く聴く。これまでの話の内容をかいつまんで手短にまとめる。お互いの理解として共通する部分、内容を要約するといった、ビジネス・コミュニュケーション能力を鍛えるのに欠かせない要素が議事録の作成にはあるからです。

 

そもそも議事録を作る狙いは会議に参加したメンバーの共通認識を得ることにあります。その場で、お互いにシッカリ頭に入れておかなければならないこと。理解しておかなければならないこと。双方が共にちゃんと確かめ合っておくべきことがあります。皆が、ルールとしてお互いに守らなければならないこともあるでしょう。これらをメンバーの共通の理解にすることです。それが議事録が果たす役割だと思います。

見方を変えれば「言った言わない。聞かなかった、聞いてないよ」の世界を無くすことに他なりません。「忘れた。知らなかった。そんな覚えは無い」とは言わせないという仕組みでもあります。

ところが、残念なことに、そもそも何を話し合ったのか、何の会議だったのか。話し合いのテーマが何だったのか。打ち合わせの狙いそのものが良くわからない議事録が多いのも事実です。かろうじて「本日の議題」と言うタイトルから、ようやく、その会議の主な内容を読み取れるような文書も少なくありません。

確かに、正しい議事録の取り方、書き方というものが無いのも事実です。会議のやり方については色々と本も出ていますが、議事録の取り方、書き方についての出版物はあまり見かけたことがありません。

悪しき例をいくつか挙げてみましょう。ひとつは、ホワイトボード(黒板)に書かれたことを書き写すことが議事録を取ることだと思っている人達です。しかし、それはメモ書きの類でしかありません。

それならば、わざわざ手間をかけて議事録を作る必要はないでしょう。写メを撮って送れば済むことです。あるいは、口述筆記のように、発言者の言葉を一言漏らさずに書き取ろうとする人もいるかもしれません。そんな裁判記録みたいな議事録は誰も見ようとしません。

 

議事録は、その会議のレポートもしくは報告書であるべきです。ですから、話しの流れや話し合いの要点が簡潔にまとめられている。議論のポイントが手短な言葉で語られている。一言で言うとわかりやすい。

それが良い議事録のひとつの条件だと思います。パッと見て、すぐそれがわかることが大切です。

確かに、司会をする人が、会議の流れをシッカリとコーディネイトしていれば、自ずと議事録もわかりやすい内容になります。誰がその場にいても、話の流れ、論点のポイント、取りまとめ、次回への宿題、最終的な結論のような内容が明らかだからです。全ての会議がそうならば書記役の人も楽に仕事ができるでしょう。

ところが、話の論点が彼方此方に飛ぶ、メインテーマから脱線する、話の軸がブレる、何を話し合っているのかわからないような会議が多いのも事実だと思います。このような状況だから、書記を担当する人の頭の中も自然とゴチャゴチャになってしまうのです。そもそも、話のやり取りがランダムで良く理解できない。話の流れや、全体像を摑みきれない。だから、どの部分を省略して、何を書き残して良いのか、わからない。それが書記さんの本音でしょう。

 

  そんな脈絡のない会議こそ、議事録を創る人の頭の遣いどころ、腕の見せどころです。どんなに結論の出ない会議、取り止めの無い話し合い、堂々巡りの議論であっても必ず皆がシッカリと頭に入れておかなければならないことが、一つや二つあります。次回に向けて、全員に理解しておいて欲しい話、絶対に忘れて欲しくない内容があるものです。話の流れから、そのポイントをシッカリと捉えて確実に記録に残す。そこが大切です。

その部分が抜けてしまうと、忙しい中メンバーが集まった意味が本当に無くなってしまうからです。

話し合いの全体像からそのエッセンスを的確に抽出する一番大切なことを洗い出す力。それこそが幹部社員に期待される力の一つです。

まさに、自社の問題解決、戦略策定を行う際に欠かせないスキルだからです。

 

( 平成26531日 )                  ©公認会計士 井出事務所


 ► 関連項目: 週報の活用(その1)週報の活用(その2)

        議事録の作成(その2 修正添削)

議事録の作成(その3 議事録に見る危機感の欠如)

                 議事録作成を通して養う「ビジネスリーダーの力」