「聞く」 と 「聴く」の違い

 

貴方の職場では、上司の話を下は耳をダンボにして聞いているでしょうか。それとも、話は聞いていても、その内容はあまり頭に入っていない感じでしょうか。いつも、口をすっぱくして言っているのに「仕事の注意事項が守れない。連絡した情報が正確に伝わらない」そう思っている上の方は多いと思います。本当に人の話を聞く気があるのか。「ちゃんと聞いている?」と疑いたくなる人もいるでしょう。

 

  安心して仕事を任せられる部下は上の話をよく聴いているものです。話の内容を一回で理解します。シッカリと頭に入れています。だから、間違いやミスの無い、確かな仕事が出来るのです。

同じ職場のメンバーであっても、朝礼でした話の理解度や納得度合いは人によってバラバラです。ではその違いは、何処から出てくるのでしょうか。

 

  今回は「聞く」という字、その言葉の意味から、その違いを探ってみたいと思います。辞書を引いてみると「きく」という言葉には「聞く」「聴く」「訊く」と書く三つの字があり、それぞれの意味が微妙に違います。 

 最初は、一番なじみのある「聞く」という字の意味について考えてみましょう。皆さん、少し前の会議で「そういえば、そんなこと話していたな」と思ったことはありませんか。あるいは、延々と続く上司の話で「聞いたことは覚えている」というような経験があると思います。

 

  聞いてはいるが「耳を傾けて聞いているか」といわれるとそういうことでもない。ボーっとしていた訳でないが話の中身は頭に残っていない。ただ何となく聞いていた。心此処にあらずで話を聞いていた。それは、話を聞いていたのではなく話し手の声を聞いていたのです。だから話の中身をよく覚えていないのです。「聞く」という字が表す意味は「耳にする。耳に入る」ということです。聞いてはいるが頭に入ってはいない。つまり、音としての話や声が「聞こえている。耳に入ってくる」レベルで聞くことだと思います。

一番肝心な相手の話やその意とする内容が耳の処で止まっています。

ビジネスの現場で、相手の話を聞いていても「覚えていない。理解していない」ようでは仕事になりません。相手の伝えたことが記憶に残っていないようでは困ったものです。

 

 このように考えてみると、耳にするという意味での「聞く」は、伝える側の「意」を受け取ろうという気持ちや意識がちょっと足りないのかもしれません。故事成語に「馬耳東風」という言葉がありますが、まさにその感じの「聞く」だと思います。  

「聞く」の他に「聴く」と書く字もあります。誰しも「大切な話があるから」と言われると、相手の話にちゃんと耳を傾けようとします。注意して聞き取ろうとするでしょう。あるいは、皆さん、自分が関心のあること。興味のあるテーマについては熱心に話を聞くものです。

 

 つまり「聴く」が表す意味合いは、耳に神経を集中して聞くという聴き方です。同じ「耳」という字を使っていても“聞き耳を立てる。耳をダンボにして聞く。耳を澄まして聞く”といった表現があります。しかし、前述の「聞く」の感覚とは、ちょっとニュアンスが違います。そこには「一言も聞き漏らすまいと」という注意する意識があります。

相手の話を「その内容をしっかりと受けとめる気持ちを持って聞くこと。頭に入れる意思を持って聞くこと」それを表す字が「聴く」なのです。

そこが、ただ、何となく無意識で聞く「聞く」との差だと思います。

 

 話はちょっと変わりますが、聴く力を持っている人の聴き方を観ていると面白いことに気付きます。無論、耳が立っているというか、集中して聴いている緊張感を感じますが、目線を手先に移すと、彼らは、ただ聞き取るだけでなく、聴きながらキチッリと話の内容をメモしています。

「聞き取ること」と「書き取ること」を同時にやっているのです。

「聴く力」というのは、単に耳だけの問題ではありません。書くことで話の内容や情報を頭の中に刻みつけることも聴くことの一部だと思います。

 聞き取るためには、耳以外の五感をフル活用することを見逃してはいけないと思います。

 

仕事の出来る人は、他人の話を良く聴いています。話の内容や話し手の言わんとすることをシッカリと理解しようとする「聴く力」を持っています。伝え手の意をパッと頭に入れる聴く耳を持っている人です。

 だから、一回で話が通じるのです。そこが同じことを何度も繰り返して言わないと通じない人との違いです。彼らは「注意して聞く。聞くことに集中する」そういうビジネス感覚を身につけているのです。

 

 

 

( 平成28224日 )         Ⓒ 公認会計士 井出 事務所