「訊く」という伝え方もある

 前回は「聞く」と「聴く」という字の違いを通して、職場のコミュニケーションに関わる「聞くこと」の意味について考えてみました。実は、この他にも「訊く」と書く「きく」があります。その意味を辞書で調べると「尋ねる。問い質す(ただす)。聴き質す」と書いてあります。

ちょっと大げさなことのようにも感じますが、特別珍しいことではありません。ツイツイ見落としてしまいがちなことですが日常の仕事の場面でよくあることです。

 

例えば、週明けのミーティングの場で、大切な注意事項を伝えた時、皆がボンヤリしているような雰囲気があれば「田村君、大丈夫? 私の話ちゃんと聞いています?」と確かめることはありませんか。

あるいは、メンバーが腑に落ちない顔をしていたら「シッカリ頭に入れた?」と訊きませんか。シビアな上司なら、更に「(私が) 今言ったことを、もう一度、繰り返して言ってみてください」と言うかもしれません。

 つまり「訊く」の意味は、こちらの話が通じたのかどうか。「念ために聞くこと。確かめる」ことです。お互いの共通認識を得るために聞き返す。それが「訊く」の意味であり「狙い」だと思います。

 

“一度言ったきりでは話は通じない” ところが、伸び悩んでいる会社ほど、そのことに気づけない上長の方を沢山お見かけます。彼らは、指示したことであれ、注意したことであれ、一度話をすれば、部下が全てを理解していると思い込んでいます。伝えたことが一方通行になっていることに気付けません。上長の話がいつも空回りしています。

残念なことに、朝礼やミーティングの時に、上司の話を一言も聞き漏らすまいと耳に神経を集中して聞いている部下はあまり多くはいません。話を聞いてはいるが、その細かな内容まではよく覚えていない。肝心なところはウッカリして聞き逃した。つまり、実際には、話を聴いているようで聴いていない。

だから「連絡したことが通じていない。メンバーが指示を守らない。勝手に動く。職場のルールや決まりごとが徹底できない」という不行き届き(ミス・コミュニケーション)が起きるのです。

 

まとめる力のある管理者は、そういったことにならないよう、打ち合わせや会議の場で、必ず確認の質問を発しています。「訊く」ことを欠かしません。そのような上司であれば、聴く側もいつ聞かれても大丈夫なようにシッカリと耳を傾けるようになります。質問されたときに答えられないと拙いという緊張感がそこに生まれるからです。 

一体感のある職場はどこかピリッとした雰囲気、シャキッとした感じがするものです。それはメンバー全員が上の話をシッカリと頭に入れて仕事をしているからだと思います。上の指示や注意を確実に守って仕事をする。そういった当たり前のことが徹底できているからではないでしょうか。

逆に、締りの無い職場は、何処か、ゆるい感じのする空気があります。担当者に仕事を任せっぱなしにしている現場によくある傾向です。それでは、いくらリーダーが指示や注意をしても伝わりません。まさしく馬耳東風の感じです。

 

このように考えてみると、職場をまとめる伝え方のポイントは「確認する。確かめる」あるいは「念を押す」だと思います。「確かめる(訊く)」ことを通して、少しずつ指示や注意を徹底することが大切です。

同じ職場のメンバーであっても、もともと他人の集まりです。ひとりひとりの仕事への思いやスタンスは異なります。もともとバラバラなのです。

職場の皆が共通認識を持って動けるようにする。そのためには、上長は「訊く」という伝え方があることを知っておいても良いでしょう。

 

( 平成28229日 )         Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

▶ 関連項目:伝えることも仕事のうち

当たり前のことができる会社になる

(その3 注意や確認を忘れない)