上司力のポイント その2(声を掛ける)

 

 セミナーや企業研修の講師として、私が25年間欠かさずに続けていることがあります。それは、会場に入ってくる受講生の方に「おはようございます。こんにちは」とこちらから先に挨拶をすることです。

 講師といっても、お客様の前で話をさせていただく立場です。だから、必ず私から声を掛けるようにしています。誰しも、面識のない人の話を聴くことは、少なからず緊張するものです。その気持ちを少しでも和らげるために、こちらから挨拶させていただいています。そして、それは欠かしてはならない仕事の段取りの一つだと私は思っています。人前で長時間、話をするときはスタートの15分が勝負です。そこの空気を重くしてはいけないからです。いわば、ちょっとした根回しなのです。

 例えば、皆さんが他部署にかかわる仕事をするときには「一言、声を掛けておく」「おことわりをしておく」という仕事のマナーがあると思います。それに近いことだと思います。

 他にも、声を掛けることには、色々な意味があります。「おはようございます。こんにちは」と挨拶をしても、返事をいただける方も、そうでない方もいらっしゃいます。ほんのちょっとした言葉のやり取りですが、そこから、他人の話を聴くことに慣れている方かどうかわかります。また、普段から自然に他人とコミュニュケーションを取れる人なのか。見知らぬ人とはちょっと距離間を置くタイプなのか、そんなこともわかります。

 

 どうして、このような話をしたのかというと、社の内外を含めビジネス・コミュニケーションの基本は「挨拶にある」と私自身が思っているからです。あらゆるビジネスは他人との関わり合いで成り立っています。

 そこには相手によって、様々な関係性と距離間があります。そして、それは日常的なコミュニュケーションの取り方、相手との接し方ひとつで変わってきます。

相手に対する気配りを忘れない。それを、客観的で具体的な動きにすると「挨拶をする。相手に声を掛ける」ことになります。極めて当たり前の基本的なビジネスのルールですが、そこを見落としている方が多いように思います。それは、マナーと言った自主的なものとは違います。仕事の段取りとして「必ずやらなければならない仕事の一部」ではないでしょうか。

 

規模の大小、業種の如何に関わらず、伸び悩む会社に共通する社内の実情をみてみると、職場内のコミュニケーションが悪いことが挙げられます。連絡忘れ、報告遅れといった、仕事上連携がチグハグで行き違いが多い。周りの事情がわからないまま、各人が勝手に判断して動く。言葉を変えれば、要は“職場にまとまりがない”“現場での各人の動きがバラバラ”ということです。

このような状況のもとで、部下と「どのように関わって行くのか」彼らを「どのようにして指導すべきか」お悩みの上司の方は多いと思います。

上司として「何をすれば、どう動けば良いのか」本当にわからない。そういう苛立ちや不安を多く抱えている管理者も沢山いらっしゃると思います。 

そこで、本稿では「部下との接し方」コミュニケーションの基本について改めて考えてみたいと思います。 

 

 上司力のベースになるものは「部下を動かすコミュニケーション能力」すなわちリーダーシップです。だからこそ、部下の上に立つ管理者、上司の方は「部下とのコミュニケーションのあり方」について十分な理解とスキルが求められます。

人は誰しも極めて情緒的な生き物です。気分次第で動き方が違います。

何でもクールに判断できる人、ビジネスと割り切って動ける人などいません。だからこそ、上に立つ立場の人は、普段から何気ない一言を部下に掛けることを心掛けるべきです。「調子はどう?何か良いことあった?疲れてない? 絶好調だね。無理しないで。もう少し頑張って」何でも構いません。部下への気持ち的な配慮は欠かせない上司の仕事のひとつです。

仁義という言葉を使うと誤解されかねませんが、それらの言葉は、一緒に仕事をする仕事仲間へのそういう挨拶なのです。運動をする前の準備体操みたいなものと思って割り切ってやってほしいことです。 

ところが、往々にして、上下の温度差が大きい職場、メンバーの動きがバラバラな部署ほど、その辺りのことが雑になっています。だから、職場の空気が気持ちよく流れていかないのです。この大切な仕事を上司が疎かにしているからです。

 

指示を徹底する、注意事項を守れる。ちょっとした連絡や注意、確認など、一声掛ければ済むことを確実にできるようにする。メンバーひとりひとりが、このような仕事として当たり前のコミュニケーションができる。

それが、まとまりのある職場、実行力のある現場の姿だと思います。

 そのために、多くの上司 (管理者)の方に心掛けて欲しいことは、気持ち良く仕事ができるような空気を流すことです。部下に、まめに声を掛ける必要はなくとも、ふと気付いた時には、ちょっと一声、声を掛ける。

上司力のあるリーダーならば、それくらいの気配りができる気持ちのゆとりを持っていて欲しいものです。

 

( 平成2757日 )          ©公認会計士 井出事務所

 

 ► 関連項目 : 職場のマナーと職場のコミュニケーション

          部下とのコミュニケーション

挨拶も仕事のうち上司からのメッセージ