上司力のポイント  その6  しつこさ

 

“職場の決まりごとが徹底できない。決めたことが、いつの間にかウヤムヤになってしまう”そのうちにナーナーになって元に戻ってしまう。“報告が無い。報告が遅い”“連絡漏れや連絡忘れ”といった職場内のコミュニケーションが悪い。どこの会社、どの職場にでも良く見かける状況です。

解決すべき問題、改善しなければならない状況が社内に山積している。

ところが、皆いずれもハードルの高い難題でなかなか前向きの方向に進まない。色々と手を尽くしてみたものの、期待した程の成果が見られない。

 このような問題は、大多数の管理者自身の悩みであり、多くの経営者の彼らに対する不満でもあります。 

 

そこで、これらの問題解決の当事者である管理者(上司)に「どうして改善できないのか」と話を訊いてみると、往々にして以下のような答えが返ってきます。まず、ほとんどの方が「私にできることは全部やりました」と答えます。そして「いつも口を酸っぱくして部下に言っている。何度も繰り返し注意している」と、彼らは必ず言います。

しかし、よくよくその内容を聞いてみると、結果に対する言い訳が多いも事実です。「やるべきことはチャンとやったのですけど・・」と自身の責任を果たしたように彼らは言います。ところが、次第に口ぶりが「当社の現状を考えると仕方がない」「部下のレベルが宜しくない」と序々に弁解の方向に行きます。最期には「私には、もうどうして良いのかわかりません」と愚痴を溢すばかりです。

 

   ひとつの事例として職場内の決まりごとやルールを徹底する ための解決策について考えてみましょう。

 

  “毎日、復唱させる”  “本人にメモを取らせる”

  “メモを取らせて、且つ本人に毎日復唱させる”

  “文書にして配る”  “書き出して壁に張り出す”

  “配った文書や壁に掲示した言葉を唱和する”

 

  と言った、さまざまな方法・手段・対策があります。こう書くと、何かくどい様に思うかもしれません。当社の社風に合わないと感じる方もいるでしょう。

 しかし、これらの方策のうち二つなり、三つを実際に試して、できるまで徹底的にやってみよう。 トコトン、チャレンジしてみようとする上長(管理者)の方は、残念なことに多くはいらっしゃいません。

   一方、他社の現実に目を向けると、毎朝自社の経営理念を全員で唱和する会社は珍しくありません。社(部署)の方針が徹底され、社員のベクトルが統一されている会社の多くがやっていることだと思います。

それを実行している会社の社長さんに「どうして、毎朝皆で経営理念を口にするのですか」と訊いてみると「当社には、一を聞いて十を知るような社員はひとりもいません。毎日、毎朝繰り返し、何のために自分が仕事をしているのか。どうしたら商売が上手くいくのか。常に自分の頭で考えて動けるようなってもらわないと困ります。

「そうしないと、会社が良い方向に進まないからです」と異句同音に話されます。

社によって、社長さんによって言葉は違いますが、皆さん、ビジネスの原点、仕事の本質を頭にいれる重要性について熱く語られます。    

 

仕事のできる管理者・上長といわれる人たちには「自身が納得するまでトコトンやる」「あらゆる手を尽くす」「上司として毅然とした態度で部下に接する」といった仕事への強い意欲を感じます。簡単に諦めない“しぶとさ”がある。「結果が出るまでやり抜く」といった仕事へのスタンスがあります。

それが日々の仕事のシビアさにつながっています。要するに、それがビジネスのプロの感覚なのです。

ところが、実際の職場の問題解決や業務改善の現場でよく見かけるパターンは、とりあえず思いついた解決策を何かやってみた。だけど上手くいかなかった。それで「解決できない」と決め付けてしまうことです。

「どうすれば良いのか」次の一手が頭に浮かばない。だから、そこで止めてしまう。それでは、その場しのぎの対策をしただけです。決して“考えに考え抜いた対策”を実行した訳ではないのです。

 また、上役や周りから「こんなこともやってみたら」と対策を提案されても「そんなことはやっても意味が無い」とトライもしないのに勝手に決めつける人たちも多くいます。

いずれにしても「出来ることは全てやった。打てる手は全て尽くした。万策尽きた」と言える状況ではとてもありません。詰めが甘い。考えが浅いといわれても仕方がないでしょう。解決策を考えるよりも、やらない理由や出来ない訳が先に頭に浮かぶようでは、とてもプロのビジネスマン(管理者)とは言えません。

 問題解決ができない上司の動きを見ていると、良い意味での“しつこさ”がありません。諦めるのが早すぎます。何とかして今の状況を良い方向に変えていこうとする執着心に欠けます。

“成功するまで考え抜く”といったスタンスが感じられない。だから、いつまでたっても、今の悪しき状況、問題点を打破することができないのです。要は「仕事のシビアさに欠ける」その一言に尽きるでしょう。

職場の問題解決は、管理者あるいは上司としての適正試験だと思ってチャレンジください。何も、日本で初めてのことに挑戦する訳ではありません。どこの会社にでもあることです。見方を変えれば、自身のキャパを広げる絶好の機会です。これくらいのことが解決出来ないようでは、他の人にポジションを譲ったほうが良いかもしれません。

 

( 平成279月3日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

 

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