気持ちを引き締めて

 

  店舗営業を行う会社では、毎日、開店前に「いらっしゃいませ。かしこまりました。少々お持ちくださいませ。申し訳ございません。有難うございました」と接客用語を全員で大きな声で復唱しすます。そして、店長から当日の注意事項があり、必ず最後に「今日も一日、気持ちを引き締めてやっていきましょう。よろしくお願いします」と言葉を掛けます。

 接客業にとって、お客様への気の無い返事や言葉は禁物です。ともすると、接客業というとバーやホステスさんのいる接待を伴うお店のイメージがあります。しかしながら、お店でビジネスを営む処は全て接客業ではないでしょうか。もし、当店は飲食店なので、そんなことは必要ありませんと思っている店長さんがいるならビジネスの本質を履き違えていると思います。

お客様に対して、緊張感を持って仕事をする。お客様に失礼のないようにする。一見、当たり前のことのようですが、実際それを店員さん全員に徹底することは、そう簡単なことではありません。

 

あまり気付かないことですが「有難うございました」の一言にもスキルがあります。実際、お店によってかなりのレベル差があると思って良いでしょう。例えば、旅館の女将さんが、お客様を見送りする際に口にする「有難うございました」とコンビニの店員さんがレジで言う「有難うございました」では大きな違いがあります。

女将さんの発する言葉には、一言一言、気持ちがこもっています。言葉の丁寧さ、物腰の柔らかさ、その際の雰囲気は、まさに、接客のプロの一言に他なりません。一方、コンビニの店員さんが口にする「有難うございました」の言葉には、そこまでの気持ちは感じないでしょう。多くの場合、マニュアル的に何気なく云う「有難うございました」の一言になっているからです。

 

無論、業種が違うので当たり前のことと思う人も多くいると思います。ところが、よく気をつけてみると、同じコンビ二の会社でも、感じの良いお店と普通のお店があることに気づきます。皆さん、いつも行く店、行きやすいお店と、何となく足が向かないお店があるでしょう。

店員さんがテキパキと動いていてハッキリとした言葉で接しているお店は良い感じがします。逆に、何となくスタッフさんの動きがスローなお店、待たせるお店もあります。気の無い返事や聞き取り難い言葉で対応されるとあまり感じの良いものではありません。感じの良い店員さんがいるお店と普通の店員さんのお店があるように思えてなりません。お客様はあまり意識していないかもしれませんが、何となく、その違いは感じていると思います。

ある意味、その差は、感じの良い「有難うございました」が言えるお店と何気なく「有難うございました」と云っているお店の違いなのかも知れません。

 

 このように、接客力とは無縁のコンビニにもレベルの違い。店頭での接客力の良し悪しがあります。その違いは、店員さんの立ち振る舞いや言葉の言いように現れてきます。店員さんの動き方、態度、口にする言葉すべてが接客術なのです。お客様に対する感謝の気持ち、緊張感を忘れない。それこそが接客力の原点です。ただ何となく、いつもの一日が始まる。そのような仕事ぶりでは困ります。ともすると緩みがちな仕事への意識、その緊張感の緩みをお客様は見逃してはくれません。

 

だからこそ、店舗営業を行なうビジネス、店長さんには、開店前に「さあ、これから仕事だ」という仕事モードに切り替える声掛けが求められます。一定レベルでの接客力をキープするには、このようなメンバーへのメンタルな側面、仕事に対する意識への働きかけを怠ってはなりません。毎日、お店のメンバー、店員さん全員の気持ちを引き締める「場」が必要だと思います。

 お客様への感謝の気持ちを持って仕事をする。緊張感を持って仕事をする。当たり前のことのようですが、実際にはとても難しいことです。今日という特別な一日がスタートするという言葉を日々伝える。それは店長職の人にとって、とても大切な仕事なのです。

 ここでは、店長さんの開店前の始礼の意味について書きましたが、業種を問わず、多くの会社、多くの職場のリーダーにも当てはまること(役割)ではないでしょうか。

 

 ( 令和 2年 12月 11日 )  © 公認会計士 井出事務所

 

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